第一話 勇者、多数決でパーティを追放される。
短編版をお読みくださった方へ。
第一話、第二話までは短編と同じ内容になっております。
あらかじめご了承ください。
♠︎
「ねぇ、フォル……。悪いけど、もうあんたとは一緒に行けない」
魔王討伐に向けて旅を始めてから三ヶ月。
まもなく出発という時に、踊り子のルディアが突然そう言い出した。
「急にどうした? 何か気に触るようなことをしてしまったか?」
「気に触るとか、そういうことじゃなくてさ……」
じゃあどういうことだ?
何か不満があったのだろうか……。
勇者パーティのバッファーであるルディア。
常に場を盛り上げてくれる子で、何度その明るさに救われたかわからない。
そんな彼女に抜けられては、パーティの士気そのものに関わる。
「ルディア、考え直してはくれないか?」
「いや、悪いけどそれは無理だ」
勇者フォルの言葉を遮ったのは、戦士のアルデオだった。
「無理? アルデオはルディアが抜けてもいいって言うのか!?」
「そういう意味じゃなくてよ」
「今無理と言ったじゃないか!」
つい、語気が強くなる。
アルデオは仲間想いで面倒見のいい男だ。
同じ前衛でありながら、後衛の二人にも常に気を配る。
彼がいるから、僕は戦闘中に魔族のことだけを考え、戦うことができた。
「フォル、落ち着いてください。ルディアが抜けるわけではありませんよ」
空気が悪くなり始めたところで、僧侶のメデリが口を開いた。
「でも、もう一緒に行けないとルディアが」
「はい。もう一緒には行けませんから」
何を言っているのかわからない。
メデリは知識が豊富で思慮深く、パーティのまとめ役だ。
特に僕とアルデオは、何度彼女に治癒魔法をかけてもらったかわからない。
そんな知性溢れる彼女が、意味のわからない発言をすることが理解できなかった。
「なら止めないといけないだろう!?」
ルディアが首を横に振る。
「違うんだよ、意味がさ」
「意味が違う……?」
今度はアルデオが首を縦に振った。
「あぁ、俺たちには俺たちの夢があるんだ」
「私たち三人の意思は固まりました。ですので、多数決をもってあなたを追放します」
最後にメデリがそう言い放った。
*
「ちょ、ちょっと待ってくれるかい!?」
頭が追いつかない。
ルディアが抜けるのではなく、僕が追放される側?
僕たちって、勇者パーティのはずなんだが——。
「混乱させて悪い。でも、俺たちはもう行けないんだ」
「もう行けないってどういうことだい、アルデオ!!」
思わず、彼の肩を強く掴む。
ぶつかる視線からは、僕への嫌悪感ではなく罪悪感が滲んでいた。
「ごめん……。フォルが魔王討伐をして、親父さんの仇を討ちたいのもわかってる。でも俺たちには、行く理由がないんだ」
「行く理由がない……?」
「そうだ。行く理由がない」
アルデオは何を言ってるんだ?
僕たちは勇者パーティだ。
行く理由なんて、考える必要さえない。
魔王を倒し、世界の平和とみんなを護る。
その使命を全うする以外に何が必要だと言うんだ……!
「フォルってさ、夢ある?」
「夢?」
「うん。夢」
ルディアが急に話を振ってきた。
表情を見る限り、ふざけているわけではないだろう。
こんな時に、何故そんな質問をしてきたのかはわからないが……。
「僕の夢は、世界の平和を、みんなを護ることだ」
「……それってさ、夢なのかな」
「どういうことだ?」
「それって、フォル自身がやりたいことなの?」
「やりたいとかやりたくないとか、そういう話じゃないだろう? 魔王討伐は僕たちの使命だ!」
質問の意味がわからない。
僕の家は代々勇者の家系だし、これが役目なんだ。
僕たちがやらなければ、誰が魔王討伐を成し遂げる?
「ですが、私たちはそれを辞めたいのです」
「……辞めたい?」
「はい。私たちは勇者パーティに選ばれただけ。崇高な目標など持ち合わせていません」
「でも選ばれたからには——」
「それは、自らの夢を諦める理由になりますか?」
メデリが珍しく、僕の発言に被せてきた。
「夢って……。メデリの夢は魔王を討伐することだろう?」
「いいえ、違います」
「違う!? ならどうして勇者パーティにいるんだ!」
「先ほども言いましたが、選ばれただけです」
「でも選ばれたんだろう!?」
何故、選ばれた使命を全うしない!?
なんて責任感がないんだ!!
「選ばれたからって、やりたいとは限らないんだよ」
「ルディア! キミはなんてことを……!!」
「だって、あたしもやりたくないし」
やりたくない……!?
何を言っているんだこの二人は……!!
「だから言ったろ? もう行けないって」
「アルデオ! 今まで一緒に戦ってきたじゃないか!!」
「そうだな、それは事実だよ。でも昨日の夜、俺たちは気づいちまったからさ……」
「気づいた!? 何に!!」
アルデオは一つ大きなため息をつくと、はっきりと告げた。
「魔王討伐に行きたいのが、お前だけだってことに」
そんなバカな*\(^o^)/*
勇者パーティなのにね!!




