第十六話 相手のことをどうみてる?
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「アルデオ、どうしました?」
斧を落とすなんて、彼らしくない。
それに、魔牛はもう目の前に迫ってきている。
「アルデオ! やばいって!!」
「……なぁ、倒すのが正しいのか?」
「何急にレシみたいなこと言ってんの!?」
「レシの言葉を思い出したから言ってんだよ」
「何が正しいのかはわかりませんが、このままではマズイですよ」
「そうだよ! 村がまた襲われちゃうよ!」
このままではまた村が……。
どうすれば、私に何ができるか……。
——そうだ! 私は属性魔法は上手く扱えないけれど、これなら。
アルデオの前に出ると、杖を構えた。
「ちょ、メデリ!! 危ないよ!」
「大丈夫ですよルディア。私、魔法使いですから」
「……強化するから!」
「お願いします」
彼女が舞うと、全身を巡る魔力の流れが早くなる。
——あの日、先生を護れなかったこの魔法で。
今度はレシとファファを、そして村を護る。
「エンベロープ!」
私の放った基本魔法は、魔牛たちを包み込んだ。
*
「アルデオ、レシを連れてきてください」
「ちょっとメデリ! 危ないから置いてきたんでしょ!?」
「もちろんその通りです。ですが、これでは……」
アルデオがレシに触発されてるのだとしたら、解決できるのはあの子しかいない。
「早く……してください。この量を抑えていられるのもあと数分が限界です」
「ならあたしが……!」
「ルディアでは、あの子を抱えて走れないでしょう?」
「確かにそうだけど……」
彼女の言いたいこともわかる。
今のアルデオは、戦闘に身が入っていない。
「何やってんだよアルデオ!!」
「え、レシ!? 呼びに行こうとは思ってたけど、なんで来ちゃったの!!」
「クリスが、俺たちの力が必要だって」
「わたしもいるよ!」
「ファファ!? あなたまでどうして……」
よく見れば、クリスとキュルも来ている。
二人をここまで連れてきてくれたのだろう。
「アルデオ、何してんだよ!」
「……レシが教えてくれただろ? みんな仲良くできるかもしれないって」
「言ったよ。でも、今は状況が違うだろ? クリスはあのとき、俺たちを襲わなかった。でもあいつらは向かって来てるじゃん!」
「何か理由があるかもしれない」
「じゃあアルデオは、そのためならルディアねーちゃんとメデリ先生はどうでもいいんだ」
「そんなこと言ってないだろ!?」
再び魔獣に対する意見がぶつかる二人。
揉めるのはわかるけれど、このままでは本当に魔力が——
……うん? どうして? こんなに消費しているのに、まだ魔力が溢れてくる。
「ルディア、あなた何かしましたか?」
「え!? あ、ごめん!! 二人の喧嘩見てた……」
ならどうして? この魔力はどこから感じる?
まさか——
「ファファ!!」
少女の身体を、粒子状の魔力が包んでいた。
♠︎
「ねぇ、相棒……」
「どうした?」
「私、やっぱりあの女嫌い!!」
レウィスがドミナを指さした。
彼女は今、テーブルの上に突っ伏して寝ている。
「口も悪い、態度も悪いし、酒癖も悪いんだよ!? やめようよ!!」
勇者パーティに選ばれたと嘘をつき、お金援助してもらい、そのお金で竪琴を買ったキミも大概だと思うけれど……。
「レウィス、人は見かけによらぬものだろう?」
「そう、かもしれないけどさ……」
「ドミナも理由があってこうなのかもしれないし」
「フォル様!! さすがでございます!! さすが勇者様!!」
急に立ち上がり、大声を上げるセルウィー。
突発的なその動きに、レウィスの身体がびくりと跳ねた。
「急に大声出さないでよ!! びっくりしたじゃん!!」
「貴様のことなどどうでもいい。フォル様、聞いてくださいますか?」
「もちろん聞くよ。ただ、レウィスも大切な仲間なんだ。だからそういう態度は控えてほしい。キミも嫌だろう? ドミナにそういう態度を取られたら」
「……かしこまりました」
「あ、相棒……!!」
レウィスがうるうるとした目で僕を見てくる。
「レウィスもあの女、なんて言い方しないようにね。ドミナにはドミナって名前があるんだ」
「でも、ろくでなしとか言うんだもん……」
……言い得て妙だと思うけれど、今は言わないでおこう。
「その件は僕から伝えるから。いいかい、レウィス。自分が誰かを嫌いだと思うとき、高確率で相手も同じように思っている」
「そうなの?」
「そうじゃない場合もあるけれど、僕はそう思っているよ。だから、心の扉を閉めてしまっている人には、こちらが先に扉を開けて待っている必要がある」
「それはどうして?」
「僕は敵じゃない。あなたのことが知りたいから、僕のことを知ってくれますか? って確認するためだよ」
レウィスは目をぱちくりとさせている。
……伝わってなさそうだ。
「まとめると、こちらが嫌悪を向けると相手からも嫌悪が返ってくることが多い。だから、自分が嫌な言葉を使われたくないのなら、こちらだって使うべきではないんだよ」
「……わかったよ」
「うん、ありがとうレウィス」
「では、話を聞いてもらえますか?」
再び、セルウィーが口を開いた。
少し空いてしまって申し訳ございません。




