●act03: 「Red Reason」
男はイスに縛られ部屋の中にいた。
「離せー!」
男は少年という風貌だった。
快活、純朴、活動的、負けん気が強い、そんな言葉が似合いそうな青年。
背はニッキーと同じくらい。
男性にしては小柄なほう。
ニッキーが率直に聞く。
「貴方、なぜ魔獣の肩を持つの?」
「そんなのオレの自由だ!!」
またケリーのペンダントが赤く光る。
「ええ??!!」
驚くケリー。
周り中がまた光りだす。
ケリーはイスに縛られた男の頭を思いっきり殴った。
「イテーッ!!」
すると光が消えた。
男はケリーに怒鳴る。
「何しやがる!!」
ケリーが男に尋ねる。
「光のチカラが使えるのか?」
ニッキーが聞いてくる。
「なにそれ?」
「あたしと同じチカラを持っている」
「まるでヤポンみたいね」
男が応じた。
「オレはヤポンだ!」
ニッキーが応える。
「そうは見えないわ」
男は金髪の直毛。
白い肌、蒼い瞳。
どうみてもホワインである。
「見た目できめるな!
親父がヤポンで、お袋はホワインだ」
「ああ、ハーフなのね」
たしかに顔つきはヤポンのようにも見える。
平らな顔、低い鼻。
ロッコが口をはさむ。
「雑種だな」
「そんなこと言うな!オレから新しい人種が生まれるかもしれないんだそ!」
ニッキーがかえす。
「前向きね」
ケリーが話す。
「ヤポンでも力を使えるのは希だ」
「だから、オレは特別だ!」
「縛られても術を使って抵抗するなんて、無鉄砲さはロッコ以上ね」
「おい、コイツと一緒にしないでくれ」
「コイツとはなんだ、オレにはちゃんと名前がある」
「わたしはニッキー、貴方は?」
「オレはケンジ、ダン ケンジだ」
「ダンがファーストネーム?」
「ダンは苗字だ」
「え??
みょうじ?」
ケリーがまた話す。
「ヤポンはラストネームを先にいう慣習がある、それを苗字と読んでいる」
「だから、オレはヤポンだ!」
「はいはい、よくわからないけど、わかったわ。名前といい、力といい、ヤポンの血を継いでいるのはわかったわ。話を戻すけど、Mr.ダン、貴方が魔獣の味方をするわけをしりたいの」
「、、、」
ケンジは答えず黙った。
ロッコが、
「白状しろよ。お前は魔獣に見捨てられたんだぜ」
「そんなんじゃない。魔獣を薄情者呼ばわりするな!魔獣はなにが大事かよくわかっている」
ロッコはケンジの言葉から見抜く。
「って、ことはやっぱりなんか近づかれちゃまずいことがあるんだな?」
「、、、」
ケンジは顔を背け黙る。
ニッキーは思う。
ケリーは魔獣が『何かを守っているようにみえる』と言っていた。
するとこの男 ケンジもそれを守るために魔獣の味方をしたのか。
なにを守っている?
「ロッコ、縄をほどいてあげて」
ロッコは訝しげにニッキーを見た。
「いいのかい?また暴れだすぞ」
「これじゃ、対等な話し合いなんかできないわ」
ロッコはしぶしぶケンジの縄をほどいた。
「ロッコ、ケリー、お願い。すこし部屋から出て」
「ニッキー、、、」
ロッコの言葉には異議の念がこもっていた。
ニッキーとこの男を二人きりにしてはニッキーの身の保障ができない。
「ロッコ、お願い」
ニッキーは男と和解し魔獣の目的を知り、解決方法を見つけたいのだろう。
こうなるとニッキーを解き伏す手段がロッコにはない。
ロッコはため息をつき、
「はあ、、、ハートお嬢様は無茶がお好きだ」
男 ケンジはロッコの言葉を聞き呟く。
「ハート、、、?」
ロッコ、ケリーは部屋を出た。
だが扉の前で待機する。
万一なにかあってもすぐ部屋に飛び込めるように。
ケリーがロッコに尋ねる。
「いいのか?」
「ニッキーのやり方さ。相手を話しやすくするためにね。賛成はしかねるが、お嬢様はこういう方法がお好みでね、、、」
部屋の中のニッキーとケンジ。
男 ケンジは縛られていた椅子に座り、ニッキーはすこし離れドア側の長椅子に寄りかかっていた。
手元にライフルを置いて。威嚇にはなるはず。
だが、また光のチカラを使われれば敵わないだろう。
しかし、ニッキーにはこの男が悪意を持つ者には見えなかった。
この男は魔獣のなにかを守ろうしている。
なにかはわからない。
この男 ケンジは魔獣を脅威ではなく、同じ生き物として接しているように見える。
まるでケリーのように、、、
ニッキーは思った。
・・・ヤポンって、みんなそうなのかしら?
ニッキーは説得を試みる。
「わたしたち、旅の途中でたまたまここの町の宿に泊まって、あなたたちのことを知ったの。町の人たちは魔獣の居場所が町に近いから危険視して魔獣を退治しようと考えている。でも、できれば争いなく解決できないかと思ってあなたたちのところへ行ったの」
「よけいなお節介だ」
「そうかもしれないけど、魔獣と争えば人も無事ではすまないわ。できれば、けが人や死人は出したくない。魔獣もそこに居るのはわけがあるとおもうの。貴方そのわけを知っているんでしょ」
「、、、」
ケンジからの返事はない。
「わけがわかれば協力できるかもしれない。教えてくれないかしら。わたしたちは町の人ではないわ。黙っていろというならそうする」
「お前、ハートの人間か?」
「ええ、そうよ」
「ハートのやつなんか信用できるか」
「嫌われたものね。貴方がハート財団のことをどう思っているかわからないけど、わたしを信用して、お願い。このままでは争いがおきるわ。そうなれば互いに犠牲がでる。それを避けたいの。できれば魔獣に立ち退いてもらいたいけど、それがすぐにできないのなら猶予をとることもできるとおもう。
魔獣は新しいテリトリーを選ぶときは争いが起きるような場所は選ばない。
ケリーもそう言っていたわ。そこにいる理由があるのでしょ?」
「ケリー?」
「さっきの女性よ。彼女ヤポンなの。魔獣のことも詳しい。彼女なら魔獣たちを助ける知恵もあるかもしれない。貴方と同じように不思議なチカラを使えるの。
光と風のチカラを操れる」
「え?じゃあ、ヤポンの巫女なのか?」
「ミコ?」
ニッキーは言葉の意味を理解できなった。
「ヤポンの直系の子孫だ」
「それは初耳だけど、彼女ダイナフォレストから来たらしいわ」
「ダイナフォレストだって?!」
「貴方、知っているの?」
「、、、」
ケンジからの応えはない。
ケンジは混血のヤポンである。
ダイナフォレストについてもなにか知識があるようだ。
そしてケンジのいう『ヤポンのミコ』。
ダイナフォレストはヤポンにとってなにか特別な意味・場所なのだろうか?
ニッキーはそう思った。
ニッキーは続ける。
「わたしたちは人と魔獣、どっちの味方というのならたしかに人の側になる。でも一方的に魔獣を退けようとはおもっていないわ。同じ大地に生きるものとして、魔獣は先住者なのだから。人は知恵をもってふるまうべきと考える。魔獣と共存するために。
お願い、魔獣がそこにいる理由を教えて」
しばらくしてケンジは応えた。
「その女と話がしたい」
ニッキーは部屋のドアを開け顔を出し、
「ロッコ、ケリー、部屋に入っていいわ。ありがと」
ロッコー、ケリーはドアのすぐ横で並んで壁に寄りかかり話をしていたようだ。
ニッキーはつい二人を凝視してしまった。
するとロッコは目ざとく、
「言っておくが、オレとケリーを部屋から追い出したのは君だからね。暇だから立ち話をしていただけさ」
ロッコの隣に女性がいるだけで心がざわついてしまう。
そんな自分の狭量さをロッコに見抜かれしまった悔しさでニッキーは声を荒げてしまう。
「わかっているわよ。さっさと入りなさい!」
「はい、はい」
ロッコのいつもの返事。
ニヤケ顔でニッキーを見てロッコは部屋に入る。
なんで、こんな男に惚れてしまったんだろう?
ニッキーは心の中で自問した。
ロッコ、ケリーが部屋に入るとケンジは椅子から立ち上がりケリーに話しかける。
「お前、ヤポンなのか?」
ケリーはうなずいた。
ケンジはケリーの胸元のペンダントを見た。
ケリーがヤポンの巫女であれば、それは特別なモノとなる。
「そのペンダント、まさか、、、。理の宝石か?」
ケリーもこのペンダントを知る者がいることに驚く。
「この石のことを知っているのか?」
「親父から聞いたことがある。ヤポンの末裔が持つ、大地の四つの理を収めた宝石があるって」
「、、、これは、風と光、紅きチカラの石だ」
「紅きチカラ、、、red reason、、、。お前、ダイナフォレストの巫女か?」
ケリーはさらに眼を見開く。
「なぜダイナフォレストを知っている?」
「親父の故郷だ。おれはダイナフォレストに行く途中だ」
ケンジはケリーのペンダントを見つめる。
「だから、オレの術の力が強く出たのか。
理の宝石、ホントにあるんだな」
ケンジはニッキーたちを威嚇するため己の光のチカラを使ったが、いままでより強い光を放つことができていた。
チカラが強く発揮されていたことに納得がいった。
ケリーの持つ理の宝石が己のチカラに呼応したためであると。
ヤポンの末裔だけが持つ大地の理のチカラ、光、風、水、大地。
ケリーは間違いなくヤポンの巫女である。
ケンジはあらためてケリーに名乗った。
「わかった、お前なら信用できる。ダン ケンジだ」
しかし、ケリーはケンジから目を逸らせ応える。
なにか躊躇うように、、、
「、、、ケリー ダイナソン、、、」




