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アフロディアックスウェスト - 第03話「紅きチカラ」   作者: アフロディアックス


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●act02: 「森に棲みついた魔獣」


先程の会話もあり、一行は無言のまま街道を進んでいた。

ケリーは正面をむいたまま無言である。

そんなケリーにニッキーは並走していた。


ちょっと踏み込み過ぎたかとニッキーは思った。

ダイナフォレストの話は気になるところだが、しばらくは避けたほうがよいだろう。

しかし、話をしずらくなってしまった。

なにかきっかけをつくることができないか、、、


ニッキーがそんなことを考えていたらケリーが呟く。


「弟を迎えにいく」


ニッキーはすこし驚く。

ケリーから話出すのはたぶんこれが初めて。

ケリーはこちらに視線だけを向けていた。

表情を読み取ることはできなかったが、敵意とかは感じられない。

せっかくケリーから話しかけてくれたのだ。

ケリーなりの気遣いなのだろうと好意的に受け取ったほうがよいだろう。


「弟?」


「グランデンに弟がいる。それを迎えにいく」


先日聞いたグランデンに行く目的をいま答えてくれたようだ。

ニッキーは楽しげに応じる。


「ふうん、弟さんって、齢いくつ?」


「14だ」


「やんちゃの盛りね」


「そんなことない、もう落ち着いている」


「そうぉ?わたしにも弟がいるけどその頃はイタズラばかりしていたわよ」


「14でイタズラばかりって子供すぎないか?」


「そうかしら?男の人ってみんなそんなもんじゃないかしら」

ニッキーはロッコを見て、

「この人も似たようなものよ」


ロッコが抗議する。

「そんな子供と一緒にしないでくれ、、、」


ニッキーは、普段からかわれている仕返しとばかりに、

「あら、ならもうすこし、わたしに『大人の気遣い』というものを見せてほしいわね、大人のMr. ロッコ シーフ」


「へい、へい、、、」

口ではニッキーに敵わない。

ロッコは黙り込む。


「わたしの弟はワシンで働いているわ。かわいい男の子よ」


ケリーが聞く。

「齢はいくつなんだ?」


「19よ」


「19歳に『男の子』はないんじゃないか?」


「そうね、いつも『子供扱いしている』って怒られちゃうわね。でもわたしにとってはいまでも年下の男の子よ。気持ちの優しい、思いやりがあって、仲間おもい。まあ、ちょっとおちょこちょいなところもあるけど」


すると、普段、無愛想なケリーが笑顔になる。

「あたしの弟も似たようなもんだ、、、」



弟談議で話が弾む。

ニッキーはケリーとの会話を楽しんだ。










やがて日が沈む前に宿場町に着き、宿をとる。

宿のカウンターで手続きをしていると、外の喧騒が聞こえてきた。



窓越しに見ると道の真ん中で男たちが集まっていた。

十数人の馬に乗った男たち。

銃を持っている。

「あれじゃ近づけん」

「どうする」

「厄介なことになった、、、」

物々しい雰囲気。



ニッキーは宿主に尋ねる。

「なにかあったのですか?」


宿主は顔をしかめて、

「近くの森に魔獣が棲みつきまして。

そこは子供や女たちも木の実を獲りに行く場所です。町人には近づかないよう言っていますが、町から近すぎるため、やむなく魔獣の退治をしようとしていました。ですが、数がわからず、、、、

私たちが近づくと必ず同じ一頭が現れ近づくことを許しません。ですが、鳴き声が複数聞こえるので、実際の数がわからないのです。

それで先日、ここに来た旅の男がその魔獣を見てくると行って、そのまま帰って来ませんでした。魔獣のところに行くと、その男が居て魔獣に近づくなというのです。なにがなんだか、、、」


ロッコが、

「ミイラ取りがミイラになったってか?」


ニッキーがロッコに聞く。

「なによそれ?」

ロッコは時々意味のわからない言葉をいう。


宿主が続ける。

「また、その男が怪しい術を使いまして、ますます魔獣に近づけなくなってしまいました。そこに近づかなければよいのでしょうが、森の恵みが得られる場所です。私たちの生活にも影響が出ます。

魔獣が立ち退いてくれればいいのですが、町からも近く、万一子供が入り込んでしまわないかと心配しております」


「そうですか、、、」


宿主の様子からかなり困っているようであった。





ニッキーたちは宿で食事を済ませ、部屋にあがり、魔獣について話しあった。


ニッキーが、

「魔獣と人が結託するなんて珍しいわね。人と魔獣が共存している地域もあるわ。でもそのほとんどがお互いのテリトリーに入らないようにしているだけ。交流があるとしても獲物の物々交換くらいね。それにテリトリーから離れる魔獣というのも珍しいわね」


ケリーが応える。

「そうでもない」


「そうお?」


「彼らも新しい居場所を求めることもある。でも、そういうときは人も他の魔獣も居ないところに居着く。争いが起きるような場所は選ばない」


ロッコが口をはさむ。

「ケリーは魔獣贔屓だねぇ」


「自分の都合で勝手にテリトリーを決めていくのは人だけだ!」


ニッキーが諫める。

「もう、ふたりともやめなさい」


「はい、はい、ごめんよ」


「ケリーの言うとおりなら、その魔獣にも何かわけがあるのかしら?」


ケリーが応える。

「それはわからない」


「いずれにしても、このままじゃ人にもその魔獣にもいいことではないとおもうわ。元々人が先にいたのなら、その魔獣に立ち退いてもらうしかないけども、できれば穏便にやっていきたいわよね。

ケリー、協力してくれる?」


ケリーはうなずいた。


ニッキーは町の人と魔獣の争いを避けようとしている。

またロッコが口をはさみ、

「ハートお嬢様は面倒がお好きだ」


ロッコのいつもの軽口。

ニッキーはロッコを睨む。

「ロッコ」


そしていつものロッコの返事。

「はいはい」


ニッキーが続ける。

「いまのところ、見つかっているのは、オークベアが一頭。でも、鳴き声は複数聞こえたというから、実際の数がわかってない。だから町の人たちも手を出せないでいるのね。もし、数が多いなら、仕返しも怖いだろうし、、、

あと、魔獣側の男というのも気になるわ。でもその男と話ができるのがいちばんいいかもね」




ニッキーはその日のうちに町の施政者に会い、森に棲み着いた魔獣について話し合いをした。

ハート財団の一族であるというニッキーの肩書はこのようなときに役立つ。

権力者たちはニッキーの突然の面会にも応じ、多くの場合、ニッキーの意見・提案は受け入れられる。


ニッキーは自分たちが様子を見に行くので、そのあいだ魔獣たちに手を出さないようお願いした。













翌日、ニッキーたちは魔獣が棲みついた森に入ろうとしていた。

ニッキーはライフルを持ち、ケリーは右手にナイフ。

デレクは左手に斧、ロッコは背に刀を携える。



ロッコが、

「ご婦人方は後ろにどうぞ」


ニッキーがかえす。

「刀は抜いちゃダメよ」


「はいはい、承知していますよ」


ロッコ、馬人のデレクが前を進み、ケリー、ニッキーがあとに()いた。




森に入りしばらく進むと、一頭の黒い馬が佇んでいた。

こちら側を見ている。

そして声が聞こえた。

「近づくな!」


ロッコが驚く。

「お、馬がしゃべったぞ」


ケリーが応えた。

「あの馬を依り代にいているだけだ。

どこかであたしたちを見ている」


「ケリーみたいに不思議なチカラを持つヤツか?

厄介だな、、、」


ニッキーが声をあげる。

「話がしたいの」


また声が聞こえた。

「帰れ!」



やがて馬の背後から大きい影が現れた。

熊の顔を持つ魔獣。

オークベア。

背丈が人の倍以上あり、その厚い皮膚は銃弾も通らないといわれている。

馬人のデレクよりはるかに大きい巨体。


ロッコが呟く。

「思っていたよりだいぶデカいな。

こりゃ取っ組み合いなんかできないぞ」


ニッキーが叫ぶ。

「お願い、話を聞いて!」


また声がする。

「帰れ!!」


オークベアが雄たけびをあげた。

するとその背後からも魔獣の鳴き声が複数聞こえてくる。

確かにこれでは数がわからない。

数頭なのか、十数頭なのか。


ニッキーたちを退かせようとオークベアが近づいてくる。

殴り合いでは勝てないだろう。

たとえ銃で殺せたとしても数がわからなければ『仕返し』がどうなるか。

数が多ければ周りの村や町にまで『仕返し』に来るだろう。

むやみに魔獣を傷つけることができない。


ケリーが呪文を唱え魔獣の周りだけ突風を起こす。

強烈な風の勢いで怯む魔獣。


人なら吹き飛ばされるほどの強風。

ニッキーはこれを見るのは二度目だが、ケリーの能力は計り知れない。

なぜこのようなチカラを使えるのだろうとニッキーは思う。



すると突然ケリーのペンダントが赤く輝きだした。


「え?!」

驚くケリー。

周り中が光り、目くらましにあう。

強い光が放たれ視界を遮られる。

眼が焼かれると思うほどの強烈な光。


ロッコが叫ぶ。

「ケリー、やりすぎだ!」


「あたしじゃない!!」


その光の中、ロッコ、デレクは何者かに殴られ怯む。

ケリーも腕と身体を掴まれ押され木を背に抑え込まれる。

男の声がした。

「帰れと言ったろう!」


ケリーは自分を抑え込んだ者を見た。

自分よりもすこし背が低い男だった。

片手でナイフを持つ腕を押さえられ、もう片方の手で胸を掴まれていた。


自分の乳房が男の手で握られその指が喰いこんでいる。

「キャッ!」

男に胸を触られていることにケリーは小さい悲鳴をあげた。


するとその男は、

「あれ、お前、女か?」

男は乳房を掴んだ手の指を動かし確かめるように揉んできた。


ケリーは恥ずかしさと怒りで顔が真っ赤になり、激情が脳天を突き抜ける。

男はケリーが女とわかり油断したのだろう、ケリーを抑える力が緩まり、その隙にケリーは男の腕を振り払い、あらん限りの力を拳に込め男を殴り飛ばす。


吹っ飛ぶ男。

光も止み視界が戻った。



ニッキーがケリーに駆けより、

「ケリー、大丈夫?!」


ロッコは殴られた顎を撫でながら呟く。

「渾身の右ストレートだね」


魔獣も風と光がやみ、こちらを見てまた近づいてくる。


ニッキーがいう。

「いったん引きましょう」


ロッコはケリーに殴られ気を失った男を抱え逃げる。

ニッキーたちが引くと魔獣は追いかけてこず、そこに立ち止まっていた。


ニッキーが、

「追いかけてこないわね」


ケリーが応える。

「何かを守っているようにみえる」


ロッコは抱える男を見て、

「守られているのはコイツではないみたいだな」









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