●act01: 「風と光」
荒野に一本の街道。
馬二頭と馬人一頭が各々人を乗せて歩いていた。
白い芦毛の雄馬ルドルフに乗るニッキー。
栗毛の牝馬エリザベスに乗るロッコ。
黒い馬人デレクに乗るケリー。
晴れわたった青空を見ながらニッキーは呟く。
「この調子なら、ガルフには数日早く着きそうね」
ロッコが応える。
「じゃ、どこかでゆっくりするかい?」
「いえ、そのまま行きましょ。早いにこしたことはないわ。」
「仕事熱心なお嬢様だ」
ニッキーがケリーに聞く。
「ケリー、すこし聞いていいかしら」
「なんだ、、、」
「貴女のその不思議な力のこと。いままで助けてくれたのはありがたく思っているわ。でも、すこし貴女のことも知りたいの。話せることでいいから、聞かせてくれないかしら?貴女、ヤポン?」
すこし間がありケリーが答えた。
「、、、そうだ」
「はじまりの三原種。その末裔は大地の理を預かると聞くわ。貴女もそのうちのひとりなのかしら?風や火を操るチカラ」
『はじまりの三原種』
それは人のはじまりの伝説。
人は元々三つの種族からはじまったとされている。
インデ、クロン、ヤポン。
黒い髪、暗褐色の瞳、茶色い肌のインデ。
黒い縮れ毛、ブラウンの瞳、黒い肌のクロン。
黒い直毛、黒い瞳、黄色い肌のヤポン。
この三つの種族からはじまり、交わり、多くの人種が生まれたとされている。
ニッキーのような金髪、碧い目、白い肌の人種はホワインと呼ばれ、三原種の交わりの中から生まれた人種と考えられていた。
ロッコはホワインよりのインデのような容姿をしている。
ケリーの容貌はヤポンにあてはまる。
また『はじまりの三原種』は大地の理・チカラを使えるとしている。
具体的にどのようなチカラであるかはわからないが、ケリーの風や火を操る能力は『大地の理・チカラ』とニッキーは考えた。
ケリーが答える。
「、、、あたしが使えるのは風と光だ」
「ヒカリ?」
「光を集めれば熱を持つ。そこに燃えるものがあれば炎があがる。それだけだ。あがった炎を止めることはあたしはできない。光と熱で火が出たとおもう者もいる」
ロッコが呟く。
「けっこう物騒だな」
ニッキーが尋ねる。
「ヤポンの末裔はみんなそんなチカラが使えるのかしら」
「みんなが使えるわけではない」
「では、なぜ貴女は使えるの?」
「、、、。」
ケリーからの返事はなかった。
さらにニッキーは問いかける。
「貴女、ダイナフォレストから来たの?」
するとケリーは凄まじい形相でニッキーを睨んだ。
その瞳には警戒と憎悪がこもっている。
その態度が答えとなっている。
ケリーはダイナフォレストから来た。
しかし、それを聞かれること、話すことに強い抵抗・反発があるようだ。
「、、、。」
ケリーはニッキーを睨み続ける。
シルビアはダイナフォレストのヤポンの村に災いがあったと言っていた。
ケリーにとってそれは触れられたくないことなのだろう。
自分にもそのようなものはある。
思い出したくないこと、悲しい思い出。
「話したくなければ話さなくていいわ。
気を悪くしたのなら謝る。
ごめんなさい」
しばらくののち、ケリーは答えた。
「、、、そうだ、あたしはダイナフォレストから来た、、、」




