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ヒーローの中身  作者: 猫ろろ
新人ヒーロー奮闘編
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35/36

第34話 満たされぬ想い満たされる想い

新見さんが仕掛けると言った次の瞬間にはもう姿を認識できなかった。



いきなり炎拳が空中に吹き飛んだ。



キリキリと舞い上がる炎拳。

そしてまたもや衝撃が起こり。

地面にクレーターを作る勢いで叩きつけられる。


「今です!」


声だけを頼りに《ギフト》を発動させる。

捕縛用粘着弾を最大加速で放つ。

ビルの上からの狙撃で高低差があるものの

誘導してやればこれぐらいで外す事はない。


粘着弾は激しい衝撃を伴って着弾。

地面に炎拳の体を半分位めり込ませて固定する。

粘着弾は体を狙っているので首から上は自由だ。

相当な衝撃だろうにまだ意識があり

首だけを動かしながら喚いている。


間髪いれずに大吾さんが

左右の銃からそれぞれ麻痺弾と睡眠弾を掃射。

それらが着弾と同時に支援チームがフィールドを展開。

今回はフィールドを外側にはでなく内側に向けている。



「無事、完了ですね」


気が付くと炎拳の近くに新見さんが立っている。

もちろんフィールドの外側にだが。

心なしか疲れているようにも見えるが

あれだけの動きをすればそうなるよな。


炎拳をみると身動きもせずにグッタリしてる。

呼吸はしているようなので大丈夫だろう。





実行した作戦の内容は簡単だ。


戦闘で無力化出来ないと踏んだので

個人フィールドで閉じ込めて束縛する。

これだけだ。


最初の段階では《ギフト》の遠距離攻撃で

動きを止める予定だったが調整しても成功率は8割に達しなかった。

実際には炎拳の戦闘力が事前情報より高かった事により

成功率はかなり低下してたはずだ。

俺じゃ足止めすら出来なかったし。



大吾さんが来てくれたことで

粘着弾と睡眠弾と麻痺弾の要素を追加したが

足止めにはまだ足りなかった。

それでも成功率を大幅にあげたが

まだ6割程度だったはず。

やはり新見さんの参加で足止めが可能となったのが

今回の肝だろう。



全体の流れを説明すると

まず新見さんが炎拳を抑えて指定ポイントに誘導する。

そこに粘着弾でしばりつけた上に

フィールドを多重展開して内側に向けて捕縛する。

更に追加とばかりに麻痺弾と睡眠弾を充満させるという徹底ぶり。


元の作戦ではフィールド捕縛だけだったけど

ちょっと炎拳の戦闘力をそれだけで押さえつけられたかは

今となっては自信がない。

いやハッキリ言えば無理だった。


とりあえず成功した事を喜ぼう。





  ◇◇◇




炎拳の意識がない事を確認後に身柄を厳重に拘束した上で

現場を支援チームに任せ撤退する。


施設に戻りメディカルルームに炎拳を預ける。

もちろん専用機器で拘束もそのままだ。


その後は各種報告や後処理に追われた。

今回の被害は炎拳の戦闘能力からすると意外と少ない。

直接的な被害にあったのは戦闘エリアの道路や標識等で

市民等の一般人への被害は皆無と言ってよい。

これは炎拳が目的をもって暴れていたのだと予想される。

後で確認する事の一つとなった。



淡々と三人で作業を進めているとメディカルルームから炎拳が目覚めたと連絡が入る。

僅か3時間で目が覚めるとかどんだけなんだよ・・・。




会話を行えるぐらいには回復したようだが

ベットに拘束されたままの面会となる。

大人しくしているようだが油断は出来ない。


基本的に交渉役は大吾さんで新見さんは全体把握に努めるが

思う所があるらしく新見さんが話をする事になった。

俺はいつもの定ポジションである二人の後ろだ。

オマケなんて言うんじゃないぞ!



「炎拳さんとお呼びすればでいいのでしょうか?」


「あぁ?あ~、そうだ炎拳で良い



 ん?姉ちゃんは・・・・さっきの青いスーツの奴か?」



「ええ、そうですね

 良くわかりましたね」


「まあな、姉ちゃんの力の流れが

 さっきと同じだからな」


「そうですか、そんな事がわかるのですか」



俺らは現在、戦闘服を脱いでいる。

私服とはいかないが喫茶の制服に身を包んでいる。

戦闘服はヒーローの情報がバレないように外部には声も変質させてから出力している。

基本的には同じなのだが両方を聞くと同じ声だとは絶対に思えないと言う

なんとも言えない絶妙なボイスチェンジャーっぷりだ。

そこに気が付くとは流石というか何と言うか。





「まあな、俺は目が見えないからな」


「目がですか?」


「あぁ、過去にちょいとあってな

 視力という観点ではほぼ数値は出ないな

 何とかシルエットが見える程度しかない」


「それでよく戦えますね」


「俺はな力の流れが視えるんだよ

 分かり易く言えばお前らでいう《HP》ってやつがね

 他にも空気の流れ、電気、電波まで視れるな

 正確に言えば視てるんじゃなくて感じてるってほうが

 近いんだろうがな」


「そうでしたか、その能力にも興味があるところですが・・・

 炎拳さん貴方の所属と目的を教えてください」


「ハハ、ストレートだな

 俺がそんな事を素直に話すと思うかい?」



質問を冗談で返す炎拳。

それを視線を逸らさずに静かに見据える新見さん。



「ハハ、負けた俺に拒否権はないわな




 所属も何も俺はフリーだ

 悪にも正義にも所属してねぇ


 目的も簡単さ


 強い奴と戦いたい

 そして強くなりたいだ」


「強くなりたい、ですか?」


「そうだ!俺は強くなりたい!

 今よりも強く!

 少しでも強く!

 その為には強敵との戦いが必要だ

 だからおれは各地を放浪として戦っている



 それに俺の目は戦う事は出来ても

 その他の事は出来ない

 力の流れが視えても文字は読めない

 人の区別も微妙だ

 ある程度強い奴は区別も出来るが

 力の無い奴や弱い奴は個別認識は難しい

 

 そんな俺が生きていくには

 強くなるって目標が必要だったんだ」



炎拳は過去のイジメで視力がほぼ喪失していた。

ただ《ギフト》の発動により力の流れが視えるようになっていた。

それが力を追い求める一つの理由になり。

他の追従を許さない程の強さの理由でもあった。



事情聴取がある程度終わると

新見さんが炎拳に質問を投げた。


「では、これで事情聴取は終了したいと思いますが

 炎拳さんから何か言いたい事はありますか?」


「特にないな・・・・いや・・・・



 俺をアンタの部下にしてくんねーか?」










炎拳のいきなりの一言。

どうする明人!

出番なんて全然こないぞ!


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