第30話 放浪と独り
ここ最近は連日細かい出動が続いていて慌ただしく
手が足りて無かったのは事実だ。
その日も新見さんは定例会議への参加で不在で
大吾さんは市からの要請で子供向けイベントにマスコットとして参加している。
俺は待機状態のまま溜まっている報告書等の細かい書類を片づけていた。
そこに来たのは1本の通報。
専用回線経由で来たので正式依頼だ。
内容は悪の組織と思わしき人物が街中で暴れている。
市民に被害が出つつあるので至急対処して貰いたい。
依頼としては良くあるタイプだ。
該当人物のデータが添付情報で送られてきているが詳細データ無し。
画像には見たことがない人物が映っている。
特徴としては藍色のツナギの様なワンピースタイプ。
少しゆとりがあるものの体にフィットしていて動き安そうな戦闘服を着ている。
顔はマスクをしているので不明だ。
身長は大きく概算だが190近くあるとの事。
これはアレだな。
何処かの組織の戦闘員というよりは流しだな。
流しと言うのは拠点を構えずに全国を放浪している奴の事だ。
色々な組織のヘルプをしたり個人活動をしたりする。
そして概ねバトルジャンキーだ。
そりゃ全国を彷徨う利点なんてそれがメインだよな。
もちろんそれ以外も居るけど戦闘好きが多いのも確かだ。
外見を見る限りでは今回も可能性は高い。
すでに被害が出ている為、緊急性が高いと判断するが
上司である新見さんは連絡がつかない。
大吾さんは戦闘服を着ているはずなので
緊急回線を繋ぎ指示を仰ぐ。
「大吾さん、緊急事態です
流れと思われる者が街中で暴れているとの事です
新見さんは定例で不在です
連絡は入れておきましたが繋がりません」
「そうか、こちらは事情を話して駆けつけるが
場所的に時間がかかる
明人が支援チームを引き連れて先行で向かってくれ
支援要請は俺から出しておく」
目の前の端末に支援要請が届き自動的に承認手続きに入る。
それを横目に見つつ出撃準備を進める。
戦闘服に着替え武器を選ぶ。
接近戦用に制圧用電気警棒の通称《棍棒君》を。
警棒と竹刀の中間のような形で色は濃い灰色だ。
電気を流す事で相手にショックを与える事が出来る。
電圧の調整で威力を変更でき
適度な重さとバランスで使い勝手が良い。
中間距離用に制圧用電気銃の通称《インパルス君》を。
拳銃タイプで実弾と電気弾を撃てる。
実弾は超硬質ゴム弾で貫通力よりも衝撃力を重視している。
電気弾は《棍棒君》と同じような感じだ。
防御用に電磁シールドの《お守り様》を。
これは腕部に装着する盾の様な物で電磁シールドを任意に展開する事が出来る。
結構な防御力を誇るが連続展開時間がそこまで長くないのがネックだ。
好きな時に展開できるので携帯に便利で軽い。
いや、本当にこれが正式名称なんだよ?
民間会社の数社でトライアルした結果に正式採用されたんだよ。
こんな名前も今時というのか。
なんかこう何かに媚うってる感がするのは俺だけなんだろうか。
武装以外にも個人用防御フィールドを用意し市街地という事を踏まえ
機動性重視で戦闘車は1人乗り用のバイクを選ぶ。
準備が完了するとタイミングよく支援要請が承認される。
動きは止めずにチーム員の情報を頭に叩き込む。
防御班が2名、援護班が2名、指揮官が1名の5人態勢だ。
車庫に飛び込みバイクのエンジンに火を入れる。
ドゥルッドゥルッドゥルッドゥルッ
小気味良いエンジン音が響き渡り。
搭載されているAIから自己診断結果が全て問題なしの結果が出て
出撃準備が整う。
エンジンを軽く煽った後にギアを踏込、ミッションを入れる。
ブレーキをリリースしエンジンを開ける。
エンジン音が高鳴り前に進みだす。
出入り口を確認し安全を確認後に道路に出てからはフルスロットルだ。
今回の戦闘車の説明をしておこう。
これも以前に乗った戦闘車と同様に市販品をカスタマイズした物となっている。
フレームはバックボーン式で
ギアは自動遠心クラッチのロータリー式だ。
ベース排気量は110cc。
驚異的な耐久力と高燃費を誇る日本のビジネスバイクだ。
わかる人もいると思う。
カ○だね。
そう同じ名前が野菜にもあるアレだよ!
え?ヒーローがそれを乗るのかって?
いやいや。
公務員だって乗ってるでしょ。
イメージ大切じゃん。
え?オフ車とかじゃないのって?
いやいや。
市街地メインなのにそこまで走破性必要ないから。
え?オリジナルバイクじゃないのかって?
いやいや。
りっぱな販売量を誇るバイクですよ。
ザッ国産ですよ。
うるさーい!
俺だってかっちょいいヒーロー専用車に乗りたいんじゃぁ!
落ち着け俺。
いやね。
これだってね中身は凄いんだよ。
まずフレームは最新素材を使用しているので非常識に軽い。
それなのに強度はかなり高くて60km位で壁に突っ込んでも歪まない。
サスペンションとタイヤも高性能で乗り心地と走破性はかなり高い。
もちろんエンジンも超高性能で元とは比較にならない程のハイパワーだ。
車体は高性能AIで管理されている上に
周囲の情報から危険回避もしてくれ
どんな走行をしても転ぶことは殆どない。
あくまでも殆どだけどね。
それに作戦行動のサポートもしてくれる。
そこまで中身を変えるなら専用車を作ってほしい所だが
色々と思惑だか何だかがあるみたいだ。
そこは突っ込まない方がこの国で生きていく為の秘訣だろう。
◇◇◇
何はともあれバイクはビンビンで
風が気持ちいいぜとか考えつつ。
作戦行動を頭の中でプランニングしていく。
現地までは5分程で到着する。
「よ~し、一発かますぜ」
明人の独り作戦が今幕をあける。
大丈夫か明人。
お前の《HP》は少ないぞ!




