第29話 放たれた想い受け止める想い
「食らいやがれっ!」
そう言って俺は近くの河原で拾ってきた石を投げつけた。
投げたのは普通の石だ。
年月や川の流れによって角が取れ丸みを帯びている。
色は白に灰色が混ざったような何の変哲もない
手に握れるぐらいの石。
河原に行けばいくらでもゴロゴロしてる石。
この石を何個か拾ってきている。
そして俺がやった事はストレンジャーのロボに向けて
投げつけただけだ。
そう本当に投げつけただけなのだ。
《ギフト》を発動しながら。
戦闘服で強化された身体能力で全力で投げる。
そこに《ギフト》を発動し空気抵抗を排除し限界まで加速。
《HP》を全力投入した石がどうなったかと言うと・・・。
チュドォォォォォォォォォォォォォ!
石はコントロールされ首の下部分に見事的中し爆音を響かせた。
その結果。
胸の上部分から綺麗に消えた。
「うおー、明人!凄い威力だな!」
「御影さん、これは・・・・ちょっと・・・凄いですね」
「はい、自分でもビックリしてます・・・・」
爆発の余韻とあまりの衝撃的な出来事に
現場が静まり返る中
無駄にゴージャスなロボは静かに倒れ海に沈んで行った。
◇◇◇
その後、沈んでるロボを引っ張り上げ
腰の操縦席で気絶していたストレンジャーを引きずりだし
ヒーロー専用病院に監視付きで移送。
ロボは関係機関が引き取って行った。
その時の引き渡し資料でロボの正式名称が"爆音ロボ『ストロンガァー』"と言う
事を知った、まぁどうでも良い事だが。
性能としては極端な遠距離戦用で高火力重防御との事だ。
備考欄に派手って書いてあった。
後片付けは現場班に任せ帰ってきて今に至るってわけだ。
◇◇◇
数日後、退院したストレンジャーには2ヶ月の資格停止処分が下った。
ストレンジャーは正式な手順で申請したはずだと
猛烈に抗議したが以下に理由により却下された。
1.目的対象は悪の組織の関係ではあるものの
あくまでも民間会社である為、直接攻撃は認められない。
2.政府公認ヒーローからの攻撃停止勧告があったにも関わらず
無視をしての攻撃行動。
3.対象箇所以外への攻撃及び一般市民への被害影響。
4.政府公認ヒーローからの排除行動を受けての
更なる攻撃行動。
これらの内容により資格停止となった。
当初は半年間の停止だったが
一応は正式手順で申請していたという事もあり2ヶ月に短縮された。
ストロンガァーの修理代はストレンジャーの自前となったのも追い打ちだろう。
もちろん3と4についてはこちらで仕組んだ事だが自業自得だろう。
ちなみに3の被害と言うのは防御フィールドで逸らした攻撃が
1区画を真っ新にした事を指す。
あれにも裏があり、実はあの区画は取り壊しと再開発が決まっており
別に被害でも何でも無く寧ろ撤去作業分が浮いたとも言える。
そこを利用したと言うわけだ。
これで少しは大人しくなってくれれば良いんだけどな。
ちょっとやり方が酷いかもしれないが
ストレンジャーに迷惑をかけられている
関係各所からは内密に御礼状が届いたのは少し面白かった。
さらに数日後に海産物の加工品が大量に届いた。
どうやら"あーばんくる"からのお礼の品らしい。
なかなかどうして美味しいのが嬉しいやら悔しいやらと
複雑な思いはあるが無事に成功した事を喜ぼう。
◇◇◇
さて、今回の俺が使った《ギフト》は加速させる力の新しい使い方だ。
学園時代に試行錯誤と研究と実験とモルモット体験の果てに行きついた結果だ。
一言で纏めるならば"少ない《HP》じゃ近接戦闘は無理じゃね?"て事だね。
うん。
悲しい。
そこで近接が駄目なら遠距離じゃね!
って事で突き詰めた戦闘方法が完成された。
その名も"物体を物理保護しながらすげぇ速度でぶつければ大威力"。
もうそのまんまだよね。
実際には飛ばせる物は質量の問題から小さい物に限られるし
射程距離もそんなに長くない。
威力のコントロールも難しいので使いどころが微妙という始末だ。
それでも今回のような時には役に立つ。
色々と身を張って頑張った甲斐があったよ。
ありがとう!愛ちゃん!
愛ちゃんが誰かって?
学園時代の俺のパートナーであり。
恩師であり同期であり信頼のおける友達であり。
この世で一番信用できない科学者である。
そのうち出てくるんじゃない?
さーて、今回の《査定P》はどうなったかなぁ~。
無事に難問題を切り抜けた明人。
明日もきっと今日と変わらない日々がまっている。
多分ね。




