第28話 正義の道
結果から言うと作戦は成功した。
周辺に少しの被害はあったが工場は無事だ。
避難が完了していたので人的な損害は無し。
ミッションコンプリートってね。
そんな訳で今は報告書を書いている。
◇◇◇
あれから2時間後の正午丁度にロボが動き出した。
少しづつ姿が大きくなり腰辺りまで見えた所で
人で言う鎖骨部分の装甲がスライドし
外部スピーカーだと思われる物が露出する。
「我々は爆音戦士ストレンジャー
悪の組織に与する者たちよ
今から君たちを正義の力をもって粛清する」
なんだかやたらと派手で耳に残りそうな音楽と共に
いきなり一方的に意見を叩きつけてくる。
早速行動しようとするストレンジャーが動き出す直前に
こちらが用意していた拡声器から大吾さんが先手を打つ。
「あー、こちらはカラー戦隊だ
今回のストレンジャーが対象としている工場は
正式に認可されている民間業者となっている
襲撃予告はしたところ申し訳ないが攻撃対象としてはならない
手を引いて貰えないだろうか」
「またお前たちか
何故、役所ヒーローは俺たちの邪魔をするんだ!
そんなに悪を守りたいのか?!
ヒーローとしての誇りはどうしたぁぁぁ!」
「悪を守るという事が何を指しているかがわからないが
今回は民間会社を守るために来ている
こちらには正式な依頼書も受領済だ
この状態で手を出すと規則に反する事になるが理解できているか?」
以前にも似たような会話を聞いた事があるような気がするが
きっと気のせいだ。
その後も話は平行線でまったく進まない。
そして今回はこの話し合いと言う名の言質取りが作戦の肝だ。
あれから30分近く話し合いと言う名の
時間稼ぎと言質取りを続け
ついにストレンジャーが限界に来た。
「もういい、お前ら役人ヒーローの戯言は聞き飽きた!
止めれるものなら実力で止めてみればいいっ」
そう言い切るとロボの両手が持ち上がり
手首を中心として上下左右にアンテナのようなものがせり出してくる。
「ふははは、この最終兵器"インパクトパニッシャー"を
食らって悪は滅びるがいい」
なんつー、ネーミングだよ。
そんな事を思いつつも
アンテナからはビリビリと電気が帯電し光りだし
空気もピリピリとし肌に感じる威圧感は半端ない。
これかなり威力あるんじゃね?
背中にうっすらと汗をかく。
「五色さん、御影さん!
予想通りあの技です
まだ充填に時間がかかる今がチャンスです」
よし。
急ぎつつも慌てずに冷静に防御フィールドの出力を上げる。
更に大吾さんの方で指向性フィールド装置を操作する。
そうこれが秘策の一つだ。
これは防御フィールドの補助装置の一つで
質量を持たない攻撃の受け流し先を指定する事によって
フィールドの負荷を減らすと共に周囲への影響を減らす事を目的としている。
例を挙げれば火炎攻撃を防御フィールドで防いだ場合
防御範囲は守れるものの範囲以外に火炎が寄せられてしまう。
傘で雨を防いでも周りには飛び散る、寧ろ周りに集中してしまうと言えるだろう。
それを目的をもって誘導してあげれば
色々と有効的に使えたり周囲への被害を最小限にしたりできる。
密集した市街地や森林等で使われたりすることが多い。
それを今回はある目的の為に利用する。
「明人来るぞ!」
充填が完了したのかロボの手からは目が痛くなるような光に包まれ
紫電がバチバチと音を立てる。
「ふははははははは
食らうがいい!
インパクトパニッシャァァァァァァァァァァ!!」
轟音と共に視界が光に包まれてホワイトアウトする。
防御フィールド内に居るものの音と衝撃で内臓に響き
立っているのがやっとだ。
戦闘服を着ていてもキツイ。
時間にして5秒程だろうかホワイトアウトが解除される。
視界が戻ると確認しなければいけないのは3点。
まず工場は無事か?
うん、大丈夫だ。
工場を覆っている防御フィールドも持ちこたえたようだ。
工場周辺はどうだ?
よし、これも大丈夫。
一部を除いて軽微だ。
指向性フィールドで受け流した先は凄い事になってるけど・・・。
なんか地面からゴッソリもっていかれてて
一区画が真っ新になってる。
うんうん、計画通りだけどこれは凄いね。
これ受け流してなかったら防御フィールド諸共消し飛んでたね。
ざっと確認し合図を送る。
「大吾さん、次フェーズに進んでください」
「わかった」
ここで再度、拡声器
「民間区域に攻撃をしかけるとは常識を疑う
ストレンジャーは市民を守る正義ではないのか?
みろ、この惨状を
付近の住民の避難をしていたから良いが
一区画が無くなってしまったではないか?
どれくらいの被害を出すつもりだったのだ?」
「ええい、五月蠅い!
お前らが小細工をするからそうなったんじゃないか」
いやいや、あの威力だとしたら工場だけで済むわけないだろうに。
またしばらくのやり取りの後に
次フェーズに移行する。
「でわ、ここまでの被害を出しているのにも関わらず
引く気はないと?」
「正義に退却の二文字はない!」
「でわ、強制除外を実施する」
そう言い切り武器を構える大吾さん。
ロボ用なのか以前とは比較にならない力が注がれているのか
場が張りつめる。
事前の計画では衝撃波を最大まで高め圧縮した弾のはずだ。
大吾さんが腰を落とし構える。
その瞬間。
轟音が響き渡り衝撃が体を叩く。
不可視のはずの衝撃波が強烈過ぎるのが
うっすらと空気の歪みがみえるほどになっている。
そして着弾。
ドッゴッォォォォォォォォォォォ。
爆音と共にロボの上体が仰け反る。
どうやら胸元に当たったようだ。
衝撃は海面にも及び水柱が立ち視界が遮られる。
舞い上がった海水が雨のように降り注ぐ中。
ロボの姿がうっすらと見えてくる。
そこには。
両手を上げて再装填している姿があった。
「フハハハハ、貴様ら役人ヒーローの攻撃なんぞ
我らには効かないのだよっ!
愚か者たちよ
そして再度食らうがいい!次は最大威力だ!」
再度、攻撃の姿勢を見せるストレンジャー。
流石にさっきより威力が上がったら防御フィールドも持たない。
「御影さん今です!」
「明人今だ!」
そうここまでは計画通り。
最終フェーズを実施する為に俺は武器を握りしめ
《HP》をフル動員し《ギフト》を発動する。
「食らいやがれっ!」
そう言って俺は近くの河原で拾ってきた石を投げつけた。




