第19話 それでも道は続く
「以上の事があり、《テリンク》の緊急時防御機能が作動しました
命に別状はありませんでしたが全身に怪我を負ったため緊急搬送されたのです
記憶が飛んでいるのは一時的なショック状態によるものでしょう」
そう新見さんは説明した。
確かに段々と思い出してきた、最後のビームが直撃したんだよな・・・。
その前までは確かに上手く行ってたんだけど
やっぱり金属バットじゃ攻撃にも限界があるのはわかったよ。
「雪江さん、それで俺の合否はどうなったんでしょうか?」
「・・・・・まだ言いますか」
「何かありましたか?雪江さん」
「ふぅ、では試験結果を発表します」
うしっ!ここも押し通したぜ。
なんて喜んでる場合じゃなさそうだけどな。
「まず最終的な結果を先にお伝えします
不合格です」
「ええぇっ?不合格」
「はい、不合格です」
「なんで?主人公はこういうの受かるものなんじゃないの?!」
「何を言っているかは分かりませんが結果は不合格です」
・・・・・・・まじかよぉ。
「次に詳細な試験結果をお伝えします」
◇◇◇
資料も色々とあり説明を結構長い事されたが
新見さんの説明を簡単にまとめると以下のようになる。
・《ギフト》能力評価
能力については応用も可能で幅広い使用方法を期待できる。
但し《HP》容量に難あり。
・作戦遂行能力評価
状況把握、分析能力、現場管理能力等は平均よりも高い。
特に危険感知能力は特筆するものがある。
・戦闘能力評価
個人戦闘能力は平均だが《ギフト》を用いた戦い方には将来性を感じる。
団体戦闘能力については連携も上手くとり立ち回りは及第点と言える。
攻撃と防御は難あり。
・総合評価
状況を把握し分析後に臨機応変に行動できる事は高く評価できる。
行動も素早く判断も早い為、内面的な素質は有望。
戦闘能力も個人単位では及第点となるが
大規模戦や強固な相手に対しては懸念される。
《ギフト》能力は悪くはない評価だが《HP》の少なさがボトルネックとなっている。
所見以外にも各項目毎にA~Fで評価されていて
一番良いのでB、低いのでE、平均でD判定って所だ。
つまりね。
一言で表すとね。
"戦闘能力が足りてなくてヒーローは無理だ"
って事だね!
ちきしょぉぉぉぉぉぉつっっっっっ!!!
◇◇◇
結果を聞いて酷く落ち込む。
今まで目標に向けて走ってきたのに道がいきなり見えなくなったのだ。
目の前が真っ暗になり頭の中は白に染まり何も考えれない。
そんな状態がしばらく続いた後に新見さんは切り出す。
「それでどうしますか?」
「どう?・・・・というのは?」
「今後の進路の事です
来年以降も試験を受け続けるかのか?
ライセンス取得を諦めるか?
又は学園に通うか?
どれかを選ぶことになると思います」
「そう・・・なりますよね・・・・」
「ええ、まだ決めるには時間があるので
落ち着いて考えると良いでしょう
その後の手続き等をまとめた資料を置いていきますので
読んでおくと良いでしょう」
そう言って表紙に可愛らしいキャラクターが描いてある冊子と書類を数枚渡してくる。
そのコミカルな表紙すら今はちょっと心に棘が刺さる。
何も喋れずただ無言で渡されたものを見つめる。
「それでは失礼しますね、お体には注意してください」
新見さんが立ち上がり部屋を出ていく。
スライドドアが微かな音と共に開く。
そのまま出ていくと思われたが立ち止まる。
何かと思い視線を向ける。
「御影さん、私は貴方の《ギフト》にはもっと
工夫次第で有効な使い方があると思います
落ち込んでいる暇はないのではないですか?
まぁ、これは私の個人的な意見ですので
ただの世間話程度に思ってください」
そう振り向きもせず一方的に話をして出ていく。
「ありがとうございます」
小声で閉まった扉に向けて感謝を送る。
理解は出来たものの納得は出来ないが
不合格なのは仕方がない。
落ち着け、落ち着くんだ。
深呼吸をしながら心を落ち着かせていく。
そうだ。まだ道が途切れたわけじゃない!
◇◇◇
「あれから1ヶ月か・・・」
海を眺めながらこの1ヶ月で考えた事を思い出す。
「やっぱし今のままじゃ駄目か
学園に行くしかないなぁ」
新見さんに貰った資料は《特殊能力育英機構》の入校手続用紙だった。
政府機関にも関わらず学園と呼ばれているのには訳がある。
内容は専門学校と大学と研究所を混ぜたような感じだ。
入るのに金は要るし年間費としても必要だ。
そこらへんは大学に近い。
やることは唯ひたすらに能力の向上を目指す実戦的なものだ
ここら辺は専門学校に近いかな。
そして各種の研究も同時に行われる。
未開発の《ギフト》を開発していくのは色々と利点があるらしい。
学園に入れば俺の能力は確実に伸びるだろう。
そうすればライセンス取得も実現性がある。
じゃぁなぜ最初からそれを選ばなかったか?
もちろん自信があったというのもあるが
費用が馬鹿みたいに高いのよ・・・・。
しかもライセンスを取るか諦めるかまではずっと居れるっていうのは
ズルズルとしそうで怖い。
そんな事もあり試験にチャレンジしてみたんだけどなぁ・・・・。
まさか駄目になるとは思ってみなかったし
あそこまで実戦形式だと想定してなかったし・・・。
はぁ・・・。
駄目だ駄目だ。
また落ち込んでしまいそうになる思考を切り替える。
新見さんが用意してくれた資料は
入校手続用紙以外にもう一つあった。
"特定者推薦用紙"。
そのまんまコイツを推薦するって用紙だ。
受験者の中でコレと思った者を学園に推薦する事が出来る。
メリットは入学金と年間費の免除という破格の対応だ。
その代り《ギフト》研究には最優先での協力をする。
それだけなら全然問題なし、寧ろありがたいぐらいだ。
もちろんそれだけじゃない。
一番ネックな条件がある。
それは。
"最長で2年までしか居れない事"
これがクリア出来なかった場合はどうなるか?
推薦者が免除されていた金を支払わなくてはいけない。
推薦で入っておいて長居する奴に価値は無く
推薦した者はくだらない者を推してくるなって意味だ。
これはかなり厳しい条件だ。
そして何より悩ますのは書類には既に新見さんが
"必要事項を記入済"って事だ。
つまり俺が望めば学園には行ける。
但し、2年でライセンス取得が出来なければ新見さんに迷惑がかかる。
「ったく、あの人も何でこんなに入れ込んでくれるかね・・・・」
嬉しさも凄いが怖さも凄い。
どうしたもんか。
「まぁ、でも道が閉ざされたわけじゃない!
ヒーローになれる望みがあるならやってやるよっ!」
朝焼けの海に決意を新たにする。
うぉぉぉやってやんぜ。
そして、俺は学園に入ったのだ。
まぁ、なんだかんだとあったが
明人は1年でライセンスを取得し学園を卒業し
新人ヒーローとしてデビューする事となった。
第1章 ヒーローへの道 完
これにて1章完です。
ついにヒーローとなった明人の登場です。




