第16話 予想外の合格
「合格おめでとうございます」
「へっ?」
雪江さんの言葉にそんな抜けた返事しか出きなかった。
「はい、これで個人試験は合格で終了となります」
なんでだ?
当たったような手応えもなかったし。
「でも、当たらないで思いっきり空ぶっちゃいましたよ」
「私にちゃんと当たりましたよ
正確に言えば"わずかに掠った"だけですが
物理的に当たってはいますので合格とするしかないですね」
えっ?嘘?当たった?
全然感触無かったんだけど。
「そもそもがですよ、私の防御力を甘く見ているようですが
あの勢いでまともに当たっていたら
貴方の手が砕けますよ
どうするつもりだったんですか?」
「いや、それは・・・あの・・・・」
「何も考えてませんね?」
「・・・・はい
自分は燃費が悪いので《HP》があるうちに1発勝負しかないと思いまして・・・」
座り込みながらボソボソと説明するが
よくよく考えたら合格したんだし、怒られてるわけじゃないんだし
別にいいんじゃねっ!
「まぁ、でも無事に合格できたんだから良いんじゃないでしょうかっ」
疲れてるながらも抜群のスマイルを作り出す。
「・・・・調子に乗るのであれば性格面でマイナス評価を出すことも可能ですか?」
「すみませんごめんなさいちょうしにのりました」
「理解できたならば結構です
それにしても触れていない物でも《ギフト》は有効なのですね
少し焦りましたよ」
「ええ、異常に消費が激しいのであまり使えないんですが
それも相手が逆らったりすると維持するのに更に力を使うので
殆ど使えないですよね」
突然何かを思いついたような顔をする雪江さん。
変身といてないから口元と雰囲気からそう思っただけだけどね。
「一ついいですか?」
「はい、なんでしょう」
「能力についてなので答えられなければ別にいいですが
加速ってベクトルが違っても有効なんですか?
逆向きに加速させて急ブレーキさせるとか?」
それに気づくか。
流石、クールビューティーさん。
「・・・・はい、可能です
動いてさえいれば"加速させる方向は問わない"んです」
「そうですか、それは貴重な《ギフト》ですね」
「これで《HP》が増えるか、燃費が良くなれば良いんですがね」
「そうですか・・・・・・
さて、個人試験は合格ですし
そろそろ時間ですね
解除」
雪江さんが変身を解除しスーツ姿に戻る。
見てるだけで疲れた体が癒されるぜ。
《HP》も少しは回復したのか体に力が戻ってきた。
「では出口から出れば次の指示が出ると思うので
自分で判断し行動してください」
「ありがとうございました」
感謝の意を述べて何とか立ち上がる。
「出口を出る前にこれを飲んでください」
雪江さんからドリンク剤を渡される。
喉も乾いていたしラッキーだな。
一息で飲み干す。
「おっ、おおお、なんだこれ」
「それは《HP》を回復するドリンクです
正規ヒーローに支給されるものですよ」
体の隅々まで《HP》が回復しているのがわかる。
おお、凄いぞこのぱわぁ。
「では引き続き試験頑張ってください」
「はい、ありがとうございます」
一礼後に出口に向かって歩き出す。
《HP》が心配だったけど何かとなったし。
次はどんな試験だ、ワクワクするぜ。
「あっ、ちょっと」
出口の前で雪江さんに呼び止められる。
「これは一つのアドバイスだと思ってください
貴方にはもっと燃費の良い戦い方があるように思えます
そして《HP》は《ギフト》を使用していれば少しづつですが増えていきます
諦めないでください」
「はい、アドバイスありがとうございますっ!
この後も頑張りますっ!」
◇◇◇
出口の向こうに消えていった明人を思いながら
雪江は軽くため息を吐く。
「掠ったと言えど髪にですけどね
髪とは言え、体の一部には違いませんし」
事務的な対応をしクールと思われる雪江だが
自分もヒーローの一員として熱意ある若者は助けてあげたくなる時もある。
「ですが、あの戦い方ではこの先は厳しいでしょうね・・・・」
なんとか個人試験を突破した明人。
次の試験はどうなるか。




