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ヒーローの中身  作者: 猫ろろ
ヒーローへの道
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第15話 全力で打つべし


さて、気合入れて仕切り直しだ。



何はともあれ認識出来ない位、速度と瞬発に差があるのは理解できた。



それなら対策はある。



《ギフト》を発動させる。



"視神経及び脳内物質の移動を加速"



俺の《ギフト》である加速能力とは物質を加速させる。



有形無形問わず何かがあれば加速させる。



つまり"電気信号すら加速"させる事が可能だ。



瞬間的に目の前が急に薄暗くなり視界が急に狭まる。



そして一気に明るさが戻り視界が広がる。



そして周りの動きが止まる。



正確に言えば止まったように見えるぐらいゆっくりと動いて見える。



体感で約3倍まで時間感覚が延ばされる。



体全体は無理でも一部分だけなら可能だ。



これでも容量の2割程度は消費してしまうが



相手の動きにさえ反応できれば問題ない。




  ◇◇◇




「行きますっ」



間延びしたような自分の声を聞きながら雪江さんに正面からダッシュをする。



雪江さんが左足を後ろに少し引き軽く斜に構え防御の姿勢だ。



相手から残り3歩の所から右手で大きなモーションでバットを担ぎ、力を溜める。



続いて残り2歩で相手にもわかる位の力を込めて振りかぶる。



最後の1歩で肩、腕、バットを加速させる。



分かりやすい動きからのフェイント狙いだ。



急な加速に驚く口元が見える。



もうその体制から防御する時間はないはず。



もらったっ!




しかし雪江さんは軽く腰を落とすとバットに対して右腕を突き出す。



加速している感覚ですら残像が出るような速度で。



ドスっという鈍い音と共に動きが止まる。



手に嫌な感触が残るが雪江さんは無事だ。






・・・・右手で軽く受け止めながら薄い笑いを口元に浮かべている。



「確かに少し驚きましたが単純な動きは駄目ですよ」



両手で握りしめ力を込めるが片手で掴んだまま何も無いかのように話しかけてくる。



こちらも更に力を入れるが全く動かない。



「雪江さんって力持ちなんですね、俺すっごい力んでますけど」



「あら、お伝えしてませんでしたね


 私の能力は身体能力の強化です


 元々は多分、貴方よりも弱いですね


 但し、今は20倍程度強化していますが」



おいおい、さらりと言うが半端ねーぞ。



握力が20kgでも今は400kgかよ。





まぁ、でも今のこの状況が欲しかったんだけどなっと。



更に力を込めバットを押し込む、動かないけどね。



「そこからどうするんですが?


 いくら力を入れても私には通じませんよ」



「それはどうでしょうねッ」



一瞬、力を抜き再度一気に力をかける。



瞬間的に反射してしまい雪江さんの腕が少し下がる。



つまりだ、僅かでもバットが"動く"って事だ。



ここぞとばかりにバットを加速させる。



僅かな動きでもそれを加速させれば大きな力になるってことだ。



「おっと、これはまずいですね」



流石に雪江さんも今の能力値だと厳しいようで強化レベルを上げたようだ。



先程よりもグッと濃密なプレッシャーが押し寄せる。



少しづつ押し戻される。






そりゃ単純な力なら勝ち目はないさ。



俺の力は普通だし動いてるものを加速させることしか出来ないし燃費も悪い。



こんな密着状態じゃ打つ手も限られる。




「でもな、やり方しだいだろっ!」




均衡が崩れ雪江さんがバットを押し戻そうとした瞬間にバットを手放す。



「えっ?」



虚を突かれた雪江さんのバランスが前のめりに崩れる。



ほんの少しとはいえ"前に動いた"わけだ。



自分の右手を加速しバックハンドブローのように繰り出すと同時に



そこに"雪江さんの頭を右手に向かって加速"させる。





そう、俺の能力は"対象が動いて"さえいれば良いんだ。



それが手に持っていようと"いなかろうと"。



それが何であれ"敵であれ"だ。






自分の意図してない動きに雪江さんが戸惑うが



強制的に身体能力で加速に抗う。



残り少ない《HP》を全投入し雪江さんの加速を維持しつつ右手の加速を続ける。



「うおぉぉぉぉぉぉぉおおおぉぉ」




俺の右手が緩やかな円を描きつつ、雪江さんのバイザー付近に吸い込まれていく。























スカッ。






はい?



全力で空ぶりました。



そりゃそうですよね~、明らかにあんな少ない《HP》の加速じゃ



雪江さんの身体能力を上回れるはずないですよね~。



都合よく当たらないですよね。



《HP》切れで体が一気に怠くなり立つことも出来ずに座り込む。



「駄目です、もう無理です《HP》使い切ってしまってしばらく立てません」



これで試験終了か、俺の夢が、ヒーローが・・・・。



肩で息をしながら頭の中は不合格の文字でいっぱいだ。



もう駄目だもう駄目だもう駄目だもう駄目だ。





そんな俺を見下ろしながら雪江さんが試験終了を宣言する。




「これで個人試験を終了します」












「合格おめでとうございます」











「へっ?」





気の抜けた間抜けな返事をする明人。



あれ?合格?


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