第12話 実戦に向けて
ついに実技試験だ。
試験と言えども初めての実践。
ドキドキする。
冊子を確認すると実戦形式での試験となります。
試験内容に問わず"手加減は一切しないでください(注1)"と書かれている。
ちなみに(注1)の箇所には以下のような記載がある。
(注1)
実戦形式となるため《ギフト》を最大限まで発揮し望んでください。
施設や対象の安全は考慮していますので力を抑える必要はありません。
また受験者に各自で身を守ってください。
いかなる理由おいても怪我や損害についての保証は一切行いません。
「こんな重大なことを注意書きで済ましちゃうのかよっ!
それよりも施設や対象物は保証しても受験者は守ってくれないのかよっ!」
なんか色々とおかしくない?
とりあえず現状確認と受付だけ先にしておこう。
◇◇◇
受付に行くと・・・、またあの人だ。
う~ん、美しい。
先ほどの受付での対応があったからじゃないけど
ちょっと苦手意識あるかも。
表情は硬いし事務的な対応だけど
話しかけつらい雰囲気ではないんだよな。
皆も普通に受付してるし、軽い奴が話しかけてると事務的だけど対応はしてる。
言葉使いもツンケンしてるわけじゃないし。
何と言うか。
俺には近寄りがたい雰囲気を醸し出しているというか。
妙なプレッシャーを感じるというか。
いかんなぁ、美人に気後れしちゃってるかな。
「午後の受付と情報登録をお願いします」
「ではこの書類に必要事項を記入してサインをしてください」
もらった用紙には何だかゲームのような項目分けがされている。
とりあえず書こう。
◇◇◇
名前:御影明人
能力:物質を加速する
希望ポジション(前衛、後衛):前衛
使用武器:金属バット
着用防具(上):ジャージ
着用防具(下):ジャージ
着用防具(腕):ジャージ
着用防具(手):革の指ぬきグローブ
着用防具(頭):なし
その他道具:なし
ジャージって防具になるのかな?
武器って言っても一般人が用意できるので
これぐらいが限界だよね。
木刀じゃ強度が足りないしさ。
革の指ぬきはあれだバットが滑るのを防ごうと思ってだよ。
決してカッコいいとかそんなんじゃないんだ。
ただニギニギすると革がキュッとなるのは良い感じだよね。
◇◇◇
試験前に俺のスタイルを教えておこうかな。
俺は燃費が悪い。
能力によるのもあるけど強さの割に《HP》が低いんだ。
そこを考慮したスタイルになっている。
まず《ギフト》の詳細な能力なんだけど
大きく分類すると2種類になる。
"物質を加速させる、つまり速度を上乗せする"力と
"加速時に起こる物理現象を無効化や弱化させる"力だ。
速度自体をコントロールするのは1つ目の力。
それに伴う質量、慣性、空気等の影響を無くす事や軽減が2つ目になる。
勘違いしてはいけないが加速に伴う影響であって
物質自体の重さや慣性なんかを無にしてるわけではないって事だ。
人間に例えてみよう。
まず歩き出す、そこに加速を行うと体自体は一つの物質として速度があがる。
上げ幅は無制限に上げることができるので一瞬で音速を超えることも可能だ。
でも内臓は歩く速度から一気に加速する事になるのでシェイクされる。
まぁ、良くて内臓破裂で悪ければ即死だろうね。
これを防ぐには加速対象を内臓や脳まで広げれば大丈夫。
そうすると血管だ神経だ骨だと対象が増えていく。
そして俺の能力は1つ目よりも2つ目の方が消費が激しい。
保護する対象が大きければ重ければ多ければ比例して消費が上がっていく。
これは燃費の問題により実現不能だ。
ならば徐々に加速するとどうなるか?
ネックになるのは《HP》の低さだ。
そこまで長時間能力を維持出来ないから目的の速度まで加速し切れない。
又は速度を維持出来ずに直ぐに効果が切れる。
これも《HP》容量の問題により実用的じゃない。
そこで俺が編み出した戦い方は
金属バットを武器として体の一部分を加速対象として攻撃と回避を行う。
攻撃時はバットを加速、振りかぶる際に腕と肩も加速すれば更に威力UPだ。
回避時は避ける反対側を加速で押せば瞬間的に速度は出る。
もちろん上限はあるが。
ちなみに防御は考えていない、だってジャージだし。
《ギフト》発症から数年掛けて作り出した俺のスタイルだ。
部分加速でバランスを崩さないようにするのが一番大変だったな。
◇◇◇
俺のスタイルが通じるかどうか。
「ははっ、楽しみだぜ」
金属バットを握る手が軽く握りこまれる。




