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『青い瘡蓋』

主人公、坐間冥加のセリフの終わりに句点がついているのは人造人間ゆえの発話の不自然さを表現している意図的なものです。訂正の必要はございません。

パンッ!


 遠くから聞こえる銃声だった。


 弾丸はこちらに向かってくる。


 距離はすぐに縮まる。


 耳が音を拾う頃には、海牛の頭は弾け飛んでいた。


 ──卜部影、正体は狙撃手スナイパーなのだ。


『あのさ……メイくん、もしかして……刺された……?』


 テレパシーで訊かれた。

 声は震えていた。


『誘導にはそれがちょうどよかったので。』


 淡々と答える。

 

そして、刺さったナイフを抜く。

 

じゅぷっ


 血が溢れ出す。

 しかし、止血処理は自動で行われる。

 

 一定量の出血を超えると身体を巡る青いナノマシンが傷口を瞬時に埋めるようなシステムなのだ。


 それに異物は邪魔だ。


 生々しい音を立てて、傷口が塞がった。

 瘡蓋かさぶたは青かった。


 ──まったく、便利な身体。


『……メイくん、無茶するのはイケナイよ』


『俺は痛くないので、大丈夫です。』


『君が痛いとか……じゃなくて、僕が痛い……』


 俺は一時のためらいもなく共鳴リンクを切った。


 PRISMの共鳴リンクは文字通り様々な感覚を共有する。

 だからこそ互いへの配慮が欠かせない。


 これ以上は無駄と判断し思考を止めた。


「うっ…………。」


 “同族殺し”が切れ、遅れてやってくる痛みに脇腹を押さえた。


 もう塞がっている傷跡から死のアラート、痛みを感じた。


 俺は廃工場でうずくまる。


 すると卜部が遅れて廃工場にやってきた。


 扉を蹴り開けて、光を背に歩いてくる。


「……ったく。メイくんって能力だけはあるけど、技がないんだね。そいつは狩人ハンターとしてはいただけないね。狩りの基本はリスクとリターンの均衡を保つことだよ」


 やれやれと呟かんばかりに講釈を垂れた。


 皮肉というよりは指導だった。


 ──まあ、単純に呆れられているだけかもしれないが。

 

 これ以上は──逡巡だな。


「仕事は仕事だ。……これから覚えていけばいいだろう? 俺の最適化されたプログラムとお前の屁理屈、どっちが正しいかは明らかだ。狩りとは速度だ。」


「ビッグマウスだねえ」


 ヘラヘラ笑って言った。


 さっきまで痛がってた人間には見えなかった。

 

 切り替えが異常に早い。


「僕からの報酬は口座に振り込んどくよ、もしくは郵送させてくれ。レターパックで送るよ」


「……レターパックで現金は送れないですよ。」


「じゃあ電子決済で送っとくから」


 そう言って、手を叩いた。


「僕からの報酬はお金がメインじゃないだろう?“6機の情報”何が聞きたい?」


「まず名前を聞いて次に目撃情報を聞きたい。」


「メイくんは強欲だね。まあ一つは教えてあげるけども」


 全部教えちゃあ商売上がったりさと言って両手を上げた。


「…………えっとね、たしか名前は北斗七星から取られているらしい。たしか……」


 卜部は顎に手を当てて思い出していた。


 俺は逡巡の次に待ち時間が無駄だと思っているから、代わりにインストールされた知識を先出しする。


「“ドゥーべ”、“メラク”、“フェクダ”、“メグレズ”、“アリオト”、“ミザール“、“アルカイド”……。」


「おお、博識だ、それそれ。ただ“アルカイド”は不在だそうだ。何せ六機だからね、余りが出るんだろう」


「──製作者は数が数えられなかったのか。」


「……そうかもね。これで今日のヒントは終わりさ。メイくん無口だから僕ばっかり喋って疲れるんだよ。受け身な男はモテないぜ? さあここで解散。銭湯でも行きな」


 そう言って僕を廃工場から追い出した。


 ──身勝手な男だ。


 こいつはフリーランスをやっていて正解だろう。


 俺は仕方なく夜道を血塗れで歩くことにした。


 人目のつかない道を選んでいたのに、すれ違った。


「あら、薄情者の坐間くん。こんばんは」


 ──言葉の通り魔だった。

 私服姿の梶上かじかみ礼佳れいかが凛と立っていた。


「まあコミュ障の坐間くんには難しいトピックだったしね。仕方ない仕方ない」


 そう言って肩を叩く。

 頬についた大きなガーゼはまだ取れていない。


「昼間は……何も言ってやれなくて……ごめん。」


 頭を下げた、外付けの知識のまま角度は45°だ。 


「……そういうところがコミュ障だっていってるの。そんなマナー本通りの対応が通じるのは記者会見だけよ」


 彼女は肩をすくめて嘆息した。

 

 ピースマークのヘアピンが月明かりで鈍く光った。


 彼女は俺に青い血がたんまりとついていた手のひらを見せる。


そして彼女は藤の香りを纏って近づき、囁いた。


「……坐間くん、わたしの家来ない? 来てくれたらシャワーを浴びさせる権利をあげるわ。こんなに血塗れで……言ってたバイトね。あれ嘘だと思ってたけど」



 バイト……ああ、昨日のあれか。


 完全に忘れていたがそういうことにして、彼女の家へ向かった。


 ──しかし、年頃の女子がこうも簡単に男を家にあげるものなんだろうか。


 俺のデータにはない行動だった。

お読みいただき、ありがとうございました!

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