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『次の依頼』

主人公、坐間冥加のセリフの終わりに句点がついているのは人造人間ゆえの発話の不自然さを表現している意図的なものです。訂正の必要はございません。


「わたし、今自転車運転できないから、坐間くん乗って」


「じゃあ梶上は……」


 俺の言葉が終わるのを待たずして食い気味に言われる。


「後ろに乗るの。当たり前でしょ? まさか走らせる気?  それくらい揉み消してね」


「……掛け合ってみる。」


 俺はそう言って、梶上を後ろに乗せた。

 梶上はゆっくりと手を回して、掴る。

 藤の匂いが背後からほのかに香る。

 

 ホモ・サピエンスのオスとしていうなら背中が幸せな柔らかさに包まれていた。

 

 ペダルに足を乗せる。

 そして、ぐんと漕き回す。


 ペダルはいつもよりも重かった。


 ──なんて口にしたら殺されそうだ。

 何せ背後を取られている。それを忘れてはならない。


「坐間くん、事故ったら殺すから」


「事故ったら俺たちともどもお釈迦だよ。」



 何事もなく、ファミレスに到着した。


「坐間くん、何頼む?」


 優雅なbgmの中、梶上が訊く。

 色々考えた結果、パスタとピザ、ドリンクバーを注文した。


 俺がドリンクバーに向かうと、見知った男がいた。

 軽薄なチャラ男、卜部うらべかげ


 だが今日は無視して、ドリンクを注ぐ。


 学生はこういう場合、ドリンクを混ぜるらしい。


 混ぜ方は分からないので、同系色でまとめる。


 コーラ、ウーロン茶…………。


「メイくん……味覚が未発達とはいえそれはないよ。混ぜ合わせが終わってるよ」


 後ろから声をかけられた。


「や、メイくん。今日はデートらしいね」


 卜部はちらと梶上の方に目をやった。

 どこかニヤニヤしている。


「まあいいか。そういえば、お手柄だねえ。僕の手なんか借りずに勝てたじゃないか」


「……でも、梶上を傷つけた。」


「メイくんもそんなことで悩むんだね。あー、僕だったら傷つけても心が傷まないということかな。それだったら悪いことをしたね」


「……そういうこと言ってんじゃない。」


「言ってたけどなあ……正直になりなよ、メイくん。まあ本当に君がそんなことを思っていても僕は何もしないけどね。拝金主義だから」


「何しに来たんだよ。」


「やっぱり合理性の塊みたいだね、メイくんは。ちょっとしたアイスブレイクじゃないか。……それで本題はね、情報提供さ」


「“六機”、いや今は“四機”か。奴らのうち二機が見つかった。それがなんと私立才奇学園の生徒に紛れているそうなんだ。だから、頼んだよ」


「あ、あと次デートする時はもうちょっといい店連れて行ってあげなよ。いくら学生でも格安ファミレスチェーンをデート先に選ぶのはないよ」


「善処する。」


「はっ、相変わらずの業務挨拶なことで。」


 そういって卜部はどこかに消えた。

 探せばきっといるのだろうが、しなかった。


 あいつは部外者だからだ。


 俺が戻ると、梶上はドリアを食べていた。

 他にもパスタやピザも届いていた。


 梶上はそれはそれは美味そうにそれを頬張る。


 ……俺には味覚がわからない。

 だから、なるべく合わせるのだ。


 ピザを切り分け……食べる。


 口の中に熱いものが入る。

 ろくに伸びないモッツァレラが歯に付く。


 くそ。なかなか食べるのが難しい。


 俺が苦心していると、梶上はそれを笑う。


「ざ、坐間くん……そんな顔しながら食べないでよ……」


 息も絶え絶えといった感じだった。


「坐間くん食べるの下手くそだから、わたしが食べさせてあげる」


 俺がどうにかしてピザを咀嚼するとそう言われた。


 ──男子高校生はこういう時、何をするのだろうか。

 意地を張って断るのか、素直に受け入れるのか……。


「悩んでないで、ほら……」


 梶上はくるくるとパスタをフォークに巻き取るとゆっくりと俺の口の方へ運ぶ。


「仕方ないな……。」


 ぱくりと、それを食べた。


 咀嚼する。


 ゴムチューブのような細い麺を噛む。


 やっぱり味はわからない。


「坐間くん、美味しい?」


 訊かれたので食べ終えてから息を吸う。


「ああ、美味しい。」


 少しは人間のふりが上手くなった。

 


 …………と、思いたい。

お読みいただき、ありがとうございました!

第一章完です!

もしよければ感想やレビューよろしくお願いします!

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