三代目 ロファ・サーフェ登場
このお話は短編ですが次のお話と絡みがあります
○月×日。ロファ・サーフェはここ、サントレア教会に遊びに来ていた。
教会の庭には12人の子供達とその親代わりのエミリア。そしてゼロが、地面に敷いた敷物の上に座ってロファの手品が始まるのを今か今かと待っていた。
そして、頃合いを見計らってロファが観客に一礼する。
「こんにちは皆さん。私の名前は三代目ロファ・サーフェです。本名はヒ・ミ・ツ♪
そしてこっちが私の『お父さん』。今日はよろしくお願いします!」
そう言ってロファが指を指したのはロファが被っている愛用の猫帽子。そしてロファは『お父さん』を掴んで逆さに持った。
「それじゃあまずは得意の水芸を見せて、お父さん♪」
そう言ってロファはどこからともなく大きめのコップになみなみと入った水を取りだし、『お父さん』の左耳に注いだ。
すると左耳に入れた水が右耳から噴水のように外へ向かって噴き出した。
「はい、拍手!」
拍手がパチパチとあがる。とりあえずつかみはオッケーのようだ。
「さすがね『お父さん』。お疲れさま、ワインをどうぞ♪」
すると今度は片手にコップではなくワインのボトルが封が開いた状態で現れる。
「一体どこから出してるのかしら? 全然わからない・・・」
そんなロファを凝視してるのは好奇心旺盛なコーネリア。今にもロファに飛びついて調べたい気持ちをこらえる代わりに目線は決してロファから離れない。
「うん。悔しいけど全然わからない。すごいやロファ」
今日の手品を殊の外楽しみにしていたアレッサンドロもまた、ロファの手品にもう夢中であった。
そんな二人に微笑みながらロファは『お父さん』にワインを注いでいく。
すると突然、『お父さん』から赤々と燃え上がる炎が吹き出した。
「あらあら『お父さん』、口から火を噴いちゃったわ! ちょっと度が強すぎたかしら・・・」
しかしロファは慌てずいつもの調子でそう言った。
「まぁ大変! 急いで火を消さなくては!!」
「エミリアお姉ちゃん、俺、水汲んでくるよ!」
そう言ってすぐさまトニーが駆け出そうとした。
すると、
「心配しなくても大丈夫! こんな時には、はい『消化剤』♪」
そう言ってロファは一輪の白バラを取り出すと炎の中に放り込んだ。
すると不思議な事にたちまち炎が消えてしまった。
「ほら消えたでしょ? もう大丈夫。レオン君も心配してくれてありがとう♪」
ゼロが持つ日傘の下で座っていたレオンハルトがほっと息を付く。
彼はとかくこの『お父さん』が大のお気に入りであった。だから『お父さん』が燃え上がった時、彼は本当にハラハラしたのだ。
そんな彼を落ち着かせたロファは『お父さん』の中に手を入れた。
そしてそこから一輪の赤いバラを取りだしてみせる。
「わー! 赤いバラが出てきた!! キレイだね、ユウキちゃん」
「だぁ、だぁ!」
まだ赤ん坊のユウキを腕に抱えながら子守役のリーファンは実に楽しそうに笑った。
「これは『お父さん』からエミリアへお詫びのしるしだって・・・。受け取ってくれる、エミリアさん?」
「えっ!? ・・・わかりました。どうもありがとうございます『お父さん』・・・」
エミリアはロファからバラを受け取ると、『お父さん』に丁寧にお礼を言った。
「いいなぁエミリアお姉ちゃん。私もほしいな・・・」
ケイトがそうぽつりと呟く。
「こ、今度俺がプレゼントしてやるよケイト!」
顔を真っ赤に染めながら言ったジルの一言はしかしケイトの耳には届かなかった。
ケイトは今、頭の中でゼロから大量のバラの花束を受け取る真っ最中だったから。
そんな二人の様子を目の当たりにしてしまったロファは何となく気まずさを覚えながらも話題を変えた。
「と、ところでそのバラの名前は『ローズ・オブ・ファイアー』って言ってね、意味は・・・」
「ローズ・オブ・ファイアー・・・『情熱のバラ』って意味よねロファ?」
ナターシャが静かな声でロファに尋ねる。ロファはナターシャにニッコリ微笑む。
「さすがねナターシャ! ・・・さてと、そろそろ私の方もタネが無くなって来ちゃった。だから最後は一緒に踊ろう『お父さん』♪」
そう言ってロファは再び『お父さん』を被りなおし、両手を広げる。すると握りしめた両手からたちまち水が噴き出した。
子供達がそのまま両手から吹き出る噴水を見ていると、ロファはそのままの状態で踊り始めた。
大きく優雅なロファの舞に誰もが見とれていた。その時である。
「・・・ねぇ、セシルお姉ちゃん?」
「どうしたのルシオラ?」
服の裾を掴んで引っ張るルシオラにセシルが振り向く。
「あのね、なんだかさっきから目の前がキラキラするの・・・。お姉ちゃんは?」
「そう言えば・・・」
確かにロファが一回転する度に周りがキラキラ輝いて見えた。そして・・・
「あ、虹が見える!」
「ほんとだ!!」
誰ともなしに挙がる声。その場にいた全員がロファの周りに七色に輝く小さな虹を幾つも見ていた。
「どうやら水しぶきが光って七色に輝いているようですね・・・」
ゼロの冷静な分析にロファがはっきりと答える。
「そう! これが私の十八番。その名も『虹の舞』よ!!」
「虹の舞・・・」
「きれい・・・」
「すごいや・・・」
子供達は初めて見る珍しい舞にすっかり見とれるのであった・・・。
「・・・というわけで、本日の公演はここまでとさせて頂きます。たくさんのご声援、ありがとうございました♪」
ロファが始めと同じように深々と一礼すると、今度は全員から大きな拍手が飛んできた。
「ありがとうございましたロファ。今日は本当に楽しかったです」
「いいえどういたしまして♪ それより折角だから私もみんなと遊んできてもいいですか?」
「ええ、もちろん! 今日はお礼に夕食をご馳走しますからそれまでみんなと遊んでいて下さい」
「ホント!? へへ、それじゃあ・・・」
ロファはおもむろに『お父さん』を掴むとバッと真上に放り投げた。
みんなの目線が僅かにそちらに移り、それからロファに目線を戻すと・・・
「ええっ!? ・・・いつの間に・・・」
落ちてきた『お父さん』をキャッチしたロファは既に先程までの少女の姿ではなくなっていた。
半袖に長ズボンをはき、緩やかに波打つ長くて美しい黒髪はしかし頭の後ろで一つに束ねられていて、今のロファはどこから見ても普通の『男の子』であった。
「おーいコーキ! 君、バク宙が得意なんだって? それじゃあ一つ、私と勝負をしてみないか? こう見えても軽業だって得意なんだぜ!」
「よーしいいぜ! 何回連続でできるか勝負だロファ!!」
そして二人はすぐさま勝負を始めた。他の子供達もそれぞれひいきにする方を応援して場は一気に盛り上がった。
子供達に混じって遊ぶロファは先程までの大人びた顔つきとは違って、まさしく年相応の子供の顔をしていた。
敷物を片づけながら、遠くで楽しそうに遊ぶ子供達を見ていたエミリアは、とても幸せそうな顔をしていた。
「・・・そろそろ準備を始めましょうか、ゼロさん。お風呂はともかく夕食と、それからお布団も一つ、いつもより多めに用意しなければなりませんからね・・・」
こうしてこの日、ロファは久しぶりに日が暮れるまで思いっきりみんなと遊び、お風呂に入り、夕食をご馳走になって、みんなと同じ部屋で床についた。
そしてロファは、遠い家族の夢を見ながら幸せな眠りについたのだった。
次回「ザッツ・エンターテイメント!」




