3.かくも不思議な縁(えにし)達 part.4
ここからオリジナルの後半部分に入ります
あれから一週間がたった、次の日曜日。一行は再び公園の入り口に集まっていた。
だがリーゼットを含めたヴィルヴィット歌劇団の3人は舞台がある為、フィリアも司教としての仕事から来る事はできず、ついでに言えばロバートも頼まれている仕事の締め切りが近いという事でこの場には来ていなかった。
彼らは皆一様に残念がっていたがまたいずれ別の機会にと言っていた。
「しょうがないね。それじゃあみんな、おいらの後についてきて!」
そう言って先頭を歩き始めたのは他ならぬパトック・サーフェであった。その隣にはオルニカが並び二人で何とも楽しそうに会話をしていた。
「しかし驚いたな。あのパトックさんとオルニカが20年来の友人だなんてさぁ・・・」
「正確にはもう少し古いらしいけどね。母さんに聞いた話だと母さんがまだ子供の頃、よく『灯の家』にも遊びに来てたらしいわ。それに色々と力になってくれてたって。会えない事をとても残念がってたわ・・・」
ジーンのそんなつぶやきに対し、ロファはユニスから聞いた話をそう説明する。
その説明に一行はただウンウン頷く。
「でもさ、もしそれが本当ならオルニカ先生って少なくとも20歳よりは上って事よね」
「じゃあ本当にオルニカ先生って私達より年上なんだぁ・・・。フォルはオルニカ先生が何歳だか知ってる?」
テトにそう質問されたフォルは何やら考え事をしているらしく反応がない。
「フォル?」
マルカが心配そうにフォルの顔を覗き込むと、そこでフォルは初めて反応する。
「・・・キャア!! な、何、マルカ?」
「大丈夫フォル?」
「考え事?」
心配するマルカとテトにフォルは努めて明るく微笑む。
「う、うん。心配かけてゴメンね?」
そんな三人の事をジョイとフェレルはやはり気にしていたが黙って様子を見ていた。
「無理もねぇよな・・・」
「ああ。結局今日まで何一つ説明されなかったんだからな。パトックさんも酷な事をするよ」
パトックとオルニカが20年ぶりの再会を果たしたあの時、パトックは確かにフォルの事を知っていた。知っているからこそ余計に信じられないものを見たような顔をしたのだ。
しかしパトックもオルニカもそれについては何も語らず改めて再会の約束をしただけでその日は別れたのであった。
そして今日がその約束の日なのであった。
「ところで、私達は今どこへ向かっているの?」
唐突だが当たり前すぎる疑問を口にするセリカにパトックが笑って答える。
「おいらの知り合いがやっている店だよ。いかがわしくないから安心してよ」
「あそこに行くのも随分と久しぶりでちゅ。懐かしいでちゅね・・・」
そう言ってパトックとオルニカは再び昔話に花を咲かせ始めた。
「まぁパトックさんの事だから行き先に関しては心配する必要はないと思うよ。それにもしそんないかがわしい所に行くのであればロファや女の子達を連れてきたりはしないだろうしね」
と言うジーンの説明に一行は一応納得するが結局行き先がはっきりとわかる事はなかった。
「さぁ着いたよ!」
一行の目的地はペーパームーンが大陸に誇る歓楽街『アジール』の中にある一軒の冒険宿であった。
その名を『サブアラウン』という。
「な、なぁ。『サブアラウン』ってさ・・・」
「やっぱり・・・」
「あの『サブアラウン』なのかな・・・?」
何故かジョイ、フェレル、ジーンの三人はその宿を前にした途端、何かに戸惑いを隠せずにいた。
「どうしたんですか3人とも?」
「この宿がどうかしたの?」
そんな挙動不審な3人を見てマルカとテトが不安になって尋ねてくる。
しかし3人はあからさまに怪しい態度でそれを否定する。
「い、いや別に何も・・・。なぁジョイ?」
「う、うん。もちろん。そうだなフェレル?」
「も、もちろんさ!」
「・・・全然説得力がないわ3人とも」
セリカは実に淡々とそう告げる。
すると見かねたロファが苦笑しつつも3人の為に助け船を出した。
「ゴメンなさいマルカ、テト。3人ともちょっと緊張しているだけなのよ。だから心配しないで♪」
するとその言葉を聞いたパトックが実に楽しそうに3人に対し振り向いて言う。
「ああ、そっかぁ!何だよ3人とも。随分カワイイ所があるじゃないか」
すると3人は顔を真っ赤にして怒鳴った。
「う、うるさいな!」「さぁ早く入ろうぜ!!」「そうだそうだ!」
そんな3人の強がる様子に女性陣は・・・。
(『確かにカワイイかも・・・』)
結局3人に促されるような形でパトックはオルニカと共に宿へと入っていった。
一行もその後に続く。
「こんにちは~♪」
「お久しぶりでちゅ~♪」
「お、来たな! 待ってたぜパトック、オルニカ!!」
そう威勢良く声をかけてきたのはどうやらこの宿のマスターらしい小柄な男性であった。
「お久しぶりリュウ! 相変わらず元気だね!!」
「ロファ・・・じゃなかった。パトックもな!! オルニカも相変わらずちっこいままだなぁ!」
「リュウにだけは言われたくないでちゅよ!」
「それもそうか!」
そう言って大声で笑うマスターったが、一度フォルの姿を見つけてしまうとやはり今にも泣き出しそうな、とても懐かしい人との再会を果たしたような、そんな顔になるのであった。
「本当だ・・・。本当に『フォル』なんだよな・・・」
「・・・はい。あなたもパトックさんと同じ・・・?」
フォルにしてみれば初めて会う筈の人との出会い。
そんな余所余所しいフォルとの対面に、あらかじめ事情を聞いていたとはいえマスターは一抹の寂しさを拭うことができなかった。
「・・・ああ。おいらの名前はリュウって言ってパトックの昔の仲間なんだ。よろしく」
そう言ってリュウはフォルと静かに握手を交わす。
その手から伝わる温もりにまたしてもリュウは涙を堪えなくてはならなかった。
「この人がリュウ。伝説の『覇拳闘士』か・・・」
ジーンのそんなつぶやきが耳に入ったリュウはようやく一行が立ちっぱなしである事に気が付いた。
「あ、ああ、わるいわるい。今、うちの女房と娘が買い出しに出てるから帰ってくるまで適当に座って待っててくれないか。いま飲み物を出すからさ・・・」
そう言われて初めて一行は思い思いのテーブルに落ち着いた。
フォルは一応オルニカと共にパトック達のテーブルにつく事にした。
テトとマルカは別のテーブルでペドロやロファと共に席に着き、ジーン・フェレル・ジョイ・セリカはもう一つ別のテーブルに腰を下ろすのであった。
パトック達のテーブルではパトック・リュウ・オルニカの3人が昔話を交えて大いに盛り上がっていたが、フォルだけは内容がよくわからない為ただひたすらに聞き役に徹していた。
するとそこへ大きな荷物を両手に抱えた若い母娘が店へと入ってきた。
「ただいま~。重~い。父さんもって~!」
「ただいまリュウ。もうみんな来てるの?」
「他の奴らはまだ来てないけどパトック達は来てるぜシンディ」
「えっ!? ウソ!!」
そう言うとシンディと呼ばれた母親らしい女性はすぐさま手近なテーブルに荷物を下ろして声のした方のテーブルに振り向く。
そしてそこに見知った顔を見るなり大きな声で叫んだ。
「オルニカぁ~!! きゃあ、久しぶり~♪」
「お久しぶりでちゅシンディ。相変わらず元気そうで嬉しいでちゅ!」
「やだ、そんな事ないよぉ! オルニカこそ全然変わらないし・・・」
そこでシンディは、オルニカの隣に座る少女に目を向けると・・・
「・・・初めまして、だよね。あたし、シンディ。よろしくね!」と言って微笑んだ。
「フォ、フォルです・・・よろしく」
その微笑みにつられる形でフォルもまた、多少ぎこちなくはあったが微笑んだ。
「ほらミカも、荷物はとりあえずそこらに置いてこっちに来なさい!」
「はぁい!」
そう言って母親の元へとやって来たのはフォル達と同じくらいの年頃の少女であった。
「オルニカ、それにフォルも。紹介するわね。あたしの娘でミカって言うの。仲良くしてね」
「初めましてオルニカさん、フォルちゃん。あたし、ミカ。高校一年よ。よろしく!!」
「初めましてでちゅミカ。あたしはオルニカでちゅ。高校で古文を教えてるでちゅ。そしてこっちがあたしの姪のフォルでちゅ」
「フォルです。よろしく」
「うん! よろしくねフォル!!」
元気よく明るい笑顔を浮かべるこの少女にフォルは素直に好感を抱いた。そして心から友達なりたいとそう思うのだった。
「二人とも、他のみんなにも挨拶してこいよ。ここにいる連中はみんな、大事な仲間なんだからさ」
「そうね。じゃあオルニカ、また後でゆっくり話をしましょ!」
「フォルちゃんもね!!」
「うん!!」
「もちろんでちゅ!」
そしてシンディとミカは他のテーブルにも挨拶をして回る為に二人の元を離れた。
フォルとオルニカは何とはなしに二人の行く先を目で追いかける。
ミカはどうやらマルカやテトともすぐに打ち解けたらしく三人で楽しそうに話し込んでいた。
その一方でシンディは妙に仰々しいジーン達にもっと肩の力を抜いて楽になるように話しかけていた。
「大丈夫なのかなぁジーン達。今からあんなにしゃちほこ張ってちゃこれから大変だぞぉ?」
「いい連中じゃないかロ・・・もといパトック。ロファもいい仲間達に恵まれて良かったな!」
「ありがとうリュウおじ様!」
「それにしてもあの娘がリュウとシンディの子でちゅか・・・。明るく元気で二人の若い頃にそっくりでちゅ」
「いやぁあれが男だったらそれでも良かったんだけど一応女だからさぁ。父親としてはもう少しおしとやかになってほしいと思うわけで・・・」
「どうせあたしはお転婆娘ですよ~だ!!」
するとそこへ一同に挨拶を済ませたミカがやって来た。
ミカは慌てる父親にアカンベーを一つすると荷物を持ってさっさと厨房へと向かった。
「お母さん、先に荷物持って行くよ~」
「ああゴメン、ミカ。今あたしも行くから」
そんな娘の後に続く形でシンディも厨房へと入っていった。
「ミカはいい子だぞリュウ。あんまり贅沢を言うもんじゃないよ」
「そりゃあわかってるけどさパトック。別にユエリーの所みたいにお嬢様になれとは言わないからせめてロファぐらいにはなって欲しいかなってさぁ・・・」
「私がどうかしましたリュウ?」
その声にリュウとパトックはドキッとして思わず背筋を伸ばして振り返る。
「今の声は・・・、もしかして・・・?」
そして何故か同じタイミングでフェレルまでもが背筋を伸ばしてその場で気を付けの態勢を取った。
「お久しぶりですねオルニカ。パトックにリュウもお久しぶりです・・・」
「ユエリー! お久しぶりでちゅ!!」
オルニカは嬉しそうに、大きな声で入り口に立つ女性へと声をかけた。
ユエリーと呼ばれたその美しい女性は、優雅な物腰そのままに丁寧な挨拶をかわした。
「初めまして皆さん。私はユエリーと言います。よろしくお願いしますね」
その美しい銀の髪は背中を覆うようにして緩やかに広がり、肌の色はまるで新雪のように白い。聖母のように優しく微笑むその女性は年よりも若く、しかも美しく見えた。
「それから私の娘も紹介します。ルーティエ、いらっしゃい」
「はい、お母様」
そう言って入ってきたのは年の頃なら17か18の、母親と同じ藍色の瞳を持ち、さらには美しく長い黒髪を後ろで一つに束ねた、これぞまさしく『御令嬢』といった感じのする美しい少女であった。
「この娘の名前はルーティエと言います。どうか仲良くしてあげて下さいね」
「初めまして。ルーティエです。皆さんよろしくお願いします・・・」
この時、この美しい母娘の登場にジーン達ナンパ組は当然の事ながら、さすがのペドロも思わず見惚れてしまった為にすぐさまマルカに思いっきりつねられた事は軽い余談である。
そんな最中にあって唯一人、フェレルだけは未だに緊張感が抜けずにいた。気まずそうに、まるで見つかる事を避けるかのようにその身を小さく縮こまらせている。
ユエリーとルーティエはオルニカとフォルに挨拶を済ませると他のテーブルにも同じように挨拶をして回るべく二人の元を離れた。
と、そこでユエリーは思いがけず見知った顔を見つけた為、彼に対して気さくに声を掛けた。
「あらフェレル。御無沙汰してますね。お元気そうで何より・・・」
あっさりと見つかったフェレルは観念したように挨拶を返した。
「はいユエリー。ご無沙汰してます」
「フフ・・・。そんなに堅くならないで。またいつでも遊びに来て下さいね」
「はい、ありがとうございます」
「この間出された小説、とても面白かったですわフェレル兄様。これからも素敵なお話を書いて下さいね」
「ありがとう、ルーティエ・・・」
『フェレル兄様ぁ~!?』
フェレルと同じテーブルに座るジーンとジョイはその余りに聞き慣れないセリフに思わず声を上げる。
「おいフェレル、いったいお前どういう事なんだよ? こんな可愛い娘に『お兄様』なんて呼ばれるなんて・・・」
「なんてうらやま・・・もとい驚くべき事だ! 説明しろフェレル!!」
「落ち着きなさいジーン」
ジョイとジーンによる追求と周りの視線に居たたまれずフェレルが事情を説明する。
「ユエリーさんはフィリアの養母なんだよ。つまりルーティエはフィリアの義理の妹なんだ。だから・・・」
『フィリア(さん)の養母~!?』
とても二人の子持ち(一人は養子とは言え)には見えないユエリーに一同が驚きの声を上げる中、ユエリーだけは『なんだか恥ずかしいですね』と頬を赤らめていた。
「だからってなんでお前が『お兄様』になるんだよぉ~!」
「くそ、フェレルのくせに図々しい・・・」
「うるせぇ! いちいち反応してんじゃねぇよオメェら!!」
さすがにフェレルもキレて乱暴な口調で言い返す。
「初めまして。セリカ・レイナートです。夫達が見苦しくてすいません・・・」
男三人三つ巴という醜い争いをあっさり無視してセリカが二人へ丁重に挨拶をする。
すると、セリカの顔を見たルーティエが驚いたように叫ぶ。
「あ、あなたは!」
「お知り合いなのルーティエ?」
ルーティエの反応に驚いたのは何もユエリーばかりではなく、ジーンやフェレルまでもがケンカを止めてこの先の展開を待っていた。
「ええ! ほら、前にお母様にもお話しした事があるでしょ? 街中で私とアーヤが質の悪い人達に絡まれていた時に助けてくれた・・・」
「ああ、あの時あなたが話していた強くて勇敢な女の子・・・。それがセリカさんなのね?」
「そうです! あの時はお名前も聞けなかったものですからきちんとしたお礼もできず申し訳ありませんでした。改めてお礼を言いますね。
ありがとうセリカさん!!」
「別に大した事はしてないわ。それに・・・あなた達なら私が助けなくても何とか出来たんじゃない?」
その言葉にしかしルーティエは黙って微笑むのみであった。
すると、そんな二人のやり取りの間に入るかのようにジーンが口を挟んできた。
「ありがとうルーティエ!もしも今日、この場で君に会えなかったなら私はこんなに嬉しい事実を知らないままだったよ!! セリカが自分の意志で人助けをするなんて・・・。どうして黙っていたんだセリカ?」
「・・・あなたがそんな風に大げさに反応するからよ。それに本当に大した事はしてないもの。言う必要もないわ・・・」
上機嫌で一人盛り上がるジーンとあくまでもクールなセリカ。そんな二人にフェレル、ジョイ、ルーティエは呆気にとられていたが一人ユエリーだけは二人の間に何か隠された事情がある事を薄々感じるのであった。
「でも私からもお礼を言いますねセリカ。ルーティエもそうですが一緒にいたアーヤにもしもの事があったら私はベルゼに許して貰えなかったでしょうからね。誰一人ケガもなくすんだのはあなたのおかげですよ。本当にありがとう・・・」
そう言って深々と頭を下げるユエリーにジーンたち男性陣は素直に尊敬の念を抱くのであった。
「セリカさん、もし良かったらこれからも仲良くして下さいね♪」
「いつでも遊びにいらして下さい。もちろんそちらの旦那様とそのお友達の方もね」
そう言って二人が次のテーブルに挨拶に行くと、マルカとペドロの二人が席を立って待っていた。
「あら? あなた達は・・・」
ユエリーは二人の姿を見てすぐに相手が誰か思い当たったが、マルカの方が先にユエリーへと声を掛けた。
「お久しぶりですユエリー様。ルーティエさんもごきげんよう」
「まぁマルカさん! お久しぶりです!!」
ルーティエは思いがけないその出会いに驚いて嬉しそうに叫んだ。
三人は仮にも上流階級の人間なのでパーティの席などで何度か面識があったのだ。
「お久しぶりですねマルカ。クライシーズ伯爵はお元気ですか?」
「はい。父も母もつつがなく暮らしてます! ユエリー様こそお変わり無いようで安心しました」
「ありがとう。・・・ところでそちらの方は、確か・・・」
その言葉にペドロは、改めて恭しくお辞儀をしてから、慣れた口調で挨拶をする。
「はい。パーティでは何度かお顔を拝見させて頂いた事がございます。申し遅れましたが私、クライシーズ家の使用人でペドロ・・・ぐぉ!!」
「この人は私の婚約者でペドロ・ノーマと言います。そして我がクライシーズ家の次期当主ですわ!」
そう答えたマルカの肘は鋭くえぐるようにペドロの鳩尾へとクリーンヒットしていた。
ペドロはさすがと言うべきか表情こそ崩してはいなかったが、その顔は嫌な汗をダラダラと流していた。
「そ、そう。お話は聞いていたのですけど・・・。そう言えばお祝いが遅くなりましたね。おめでとうペドロ、マルカ」
「おめでとうございます♪」
「ありがとうございます♪」
ユエリーとルーティエさんの祝福をマルカは頬を赤らめつつ素直に喜んでいたが、未だペドロは口を開けぬまま、何とか微笑んでみせるのが精一杯だった。
そしてユエリーの視線がマルカの横に移る。そこには緊張で体を堅くしたテトの姿があった。
そんなテトの姿を見たユエリーは柔らかく微笑むと緊張をほぐすかのように優しい声で話しかけた。
「初めまして。私の名前はユエリーと言います。この子は娘のルーティエ。お名前を聞いてもいいですか?」
「わ、私、マルカとフォルの友達でテトって言います!よろしくお願いします!!」
その言葉を聞くとユエリーはより一層優しく微笑むのであった。
「そう、フォルのお友達・・・。こちらこそ、よろしくお願いしますねテト」
「私もですわテトさん」
「は、はい!!」
あくまで丁寧に対応してくれるユエリー母娘にテトは強い好感を胸に抱くのであった。
「ロファもお久しぶりですね。少し背が伸びたかしら?成長期ですものね・・・」
「こんにちはユエリーおばさま。おばさまも相変わらずおキレイで私、羨ましいわ!」
「こんにちはロファ。先日ステージ・デビューしたそうですね。おめでとう!」
「ありがとうルーティエ! 次にステージに立つ時には二人を必ず招待するわ!!」
「楽しみにしてますよ」
ちょうどその時、長身長髪の剣士とローブをまとった温厚そうな顔立ちの男が店の扉を開けて入ってきた。
「何だ。もうみんな来てるのか」
そう言った男は長い黒髪と大柄でありながら決して無駄のない体つきをしていた。
その蒼氷色の瞳は澄みきった空のようにすんでいた。
「ごめん、みんな。途中で薬を届けてたら遅くなっちゃった!」
剣士に比べると少し低いがやはり同じく長身の男は剣士とは対照的に普通の男性に見えた。
帽子の下から見える髪の色は紺色だったがその瞳は暖かな茶色をしていた。
「おっ、やっと来たな!」
「ディクスレイ、ランバート! お久しぶりでちゅ!!」
二人の姿に真っ先に反応したのはやはりパトックとオルニカであった。
「久しぶりだなオルニカ。元気そうじゃないか」
「ディクスレイも相変わらず活躍しているようでちゅね。噂は聞いてるでちゅよ」
「パトックもお久しぶり。しばらくはここにいるんだろう?また賑やかになるね」
「ああそのつもりさランバート。良かったらまた見に来てくれよな」
そして二人はフォルを見つける。最初は躊躇いがちであったが二人とも腹を決めたように自己紹介をする。
「俺の名前はディクスレイ。・・・よろしくな」
「僕はランバート。職人通りの一角で薬屋を営んでいる薬師なんだ。もし薬を買う事があれば僕の所においで。どんな薬でも調合してあげるから」
「私、フォルです! よろしくお願いします!!」
そう言ってフォルはペコリと頭を下げた。
「二人とも簡単に挨拶してこいよ! それが終わったらみんなで再会を祝って乾杯するつもりだからさ!!」
「わかったよリュウ」
「もう腹が減ったのか? 食い意地の悪さは昔から変わらんなリュウは」
「ちげぇよ! とにかくさっさと挨拶してこいよディクスレイ!!」
「わかったわかった」
そして二人が各テーブルを挨拶して回り(「こ、この人が、あのディクスレイ・・・」「あの『ブラック・ハウンド』の元・隊長・・・」「しかもあのランバートさんまで・・・」と言ってジーン、フェレル、ジョイの三人が珍しく緊張で体を堅くするという珍しい一面もあったりしたが・・・)、それぞれがテーブルに着くと、奥からシンディとミカがそれぞれのテーブルへと料理を運んでいった。
こうしてすべてのテーブルに料理と飲み物が揃った所で改めてリュウが挨拶のために席を立った。
「え~と・・・、とりあえずはオルニカとの20年ぶりの再会と、新たな出会いを記念して・・・乾杯!!」
『かんぱ~い!!』
シンディ、ユエリー、ディクスレイ、ランバートは一番大きなテーブルでパトック達と席を同じくし、ミカはテトとマルカのいるテーブルに座って三人仲良く話し込み、ルーティエはというと早速セリカと友達になる為にジーン達のテーブルへと腰を下ろした。
もっともルーティエが一方的に話しかけてそれにセリカが答えるという形ではあったが・・・。
そうして宴もたけなわになった頃、急に真面目な顔になってパトックがオルニカに尋ねた。
「・・・そろそろ話してくれないか、オルニカ? 君が再びここへ来た理由を・・・。フォルが目覚めたという事はもしかして・・・」
いつになく真面目な表情のパトックにオルニカは『やはりパトックにはお見通しでちゅか・・・』とため息を一つつき、覚悟を決めたように重々しく口を開いた。
「・・・メディアスが復活するという兆候が現れたんでちゅ・・・」
その一言にパトック達はもちろん、事情を知らない第二世代のロファ達までもが一人残らず緊張した。
「メディアス・・・」
「女神ヴィシャスや獣神ヨールが神とあがめる『旧支配者』・・・」
「あの伝説の暗黒竜が・・・」
言葉を失う一同を静かに見渡すオルニカ。
「少し、昔話でもしまちょうか・・・。すべては22年前の『暗黒戦争』から始まったんでちゅ・・・」
オルニカは事情を知らない若い世代達の為に重々しい口調はそのままに、一連の流れを説明し始めた・・・。
恐らく次で完結予定です




