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千夜狩猫の投げっぱなしジャーマン!  作者: 千夜狩猫
2.フォルトゥーナ・パラレルストーリー
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3.かくも不思議な縁(えにし)達 part.2

何分割になるかは未定です

 そして一行はロファからもらったチケットを持って会場へとたどり着いた。

 ここまで来るまでにフィリアはリエッタと、マルカとテトはルーナと仲良くなり、ペドロはジョイと手品について熱く語り合い、リーゼットとロバートは何故かオルニカと意気投合していた。

「なぁ。何であの二人が一見すると一番年下に見えるオルニカと仲良くなってんだ?」

「一見すればの話で実際は最年長みたいだからな。年が近いから話も合うんじゃないのか?」

「そうかもね」

 フェレルがそうジーンやセリカに話しかけている内に、一行はテントの入り口にまで辿り着いた。

「あ、ペドロは私と一緒に来てね! 実は・・・」

 そう言ってロファはペドロの耳を掴んで体ごと引き下ろすとごにょごにょと耳元で囁いた。

「え、え~っ!? 本気ですか?」

「本気みたいよ。私だって今朝言われたばかりだもの。とにかくそういう事だから・・・」

「わかりました・・・。ごめん、マルカ。ちょっと師匠に呼ばれてるらしいんで行って来ます」

「? いいけど、どうしたの?」

「それは、まぁ、後で・・・。それじゃあ行って来ます」

 そう言って二人は控え室に向かって歩いていった。

「パトックさん、何かやるつもりだな」

「どうやらそうみたいだね」

「あの人らしいな・・・」

「ちぇ! また呼ばれなかった!!」

「くさるなよジョイ。何をやるつもりか知らないけれど見られるだけでも俺達はラッキーさ」

 リーゼット、フェレル、ロバート、ジョイ、ジーンの五人はパトックをよく知っているらしく、口々にそう言っては笑っていた。

「そう言えば皆さんはどういう繋がりなんですか?」

 ふと疑問に思ったフォルがそう言うと、一同は『あっ』といった顔をする。

「ああ、そうか。忘れてたね。私達はみんなパトックさんが持っているアパート『ルナハイツ』の店子なんだよ。とは言ってもジーンはセリカと結婚して部屋を出たから『元・店子』になるけどね」

 五人を代表してリーゼットがみんなにそう説明した。

「だからパトックさんが巡業から帰ってきたら必ず一度はみんなで舞台を見に来ることにしているのさ。パトックさんはロファだけじゃなくて俺達にとってもいい『親父さん』だからね」

 フェレルもそう追加説明をする。

 確かに五人とも、照れくさそうにはしているがそれでも嫌な顔をしている者は一人もいなかった。

 そんな彼らの様子を女性陣は何とも微笑ましく思うのだった。


 かくして一同が席に着きステージの幕が上がると『銀猫遊芸団』の団長は開幕の挨拶を始めた。

「本日はようこそ我らが『銀猫遊芸団』へ。本日は久しぶりに本拠地でもあるここ、『ペーパームーン』での初日公演という事で急遽内容を変更し、いつもの演劇とショーという二部構成ではなく特別企画『新旧世代対決!『星を墜とした道化師パトック・サーフェ』対『仮面の手品師アルレッキーノ』!!』を皆様に御覧頂きたく存じます・・・」

 その口上を聞いた観客は大いに盛り上がり、その歓声で観客席は大きく揺れた。

「えっ!? ペドロも出るの?」

 あまりの歓声に耳を塞ぎつつもマルカは大声で叫んだ。

「確かにペドロの奴も『マジックキングダム』では指折りの看板スター『アルレッキーノ』だからなぁ。この、『総合芸能学園都市』の異名を持つペーパームーンでも有数の手品師達の対決だ。みんな、口には出さなくともずっと待ち望んでいた事だろう」

 ジーンもその歓声の大きさに耳を塞ぎつつそう答えていた。

「ペドロさんって実は凄い方だったんですね!」

「正体がペドロだって事は内緒だよフィリア!『謎のヴェールに包まれた天才手品師』って言うのが売りなんだからね!!」

 さすがにフィリアとフェレルもこの歓声の中では叫びながらの会話にならざるをえない。

 そんな大きな歓声を身振りで何とか静めると、団長は話を続けた。

「更に今回はそれぞれに優秀なアシスタントを一名付けますが、パトックのアシスタントには『虹の舞姫』ことユニス・アストーリアが! そしてアルレッキーノには、まさにこれが初のステージとなります道化師パトックの後継者、『三代目ロファ・サーフェ』がアシスタントとして登場します!! 」

 そんな団長の一言に会場は再び大きくどよめく事となった。

 パトックがまだ『二代目ロファ・サーフェ』を名乗っていた頃、実子に『三代目』を襲名させたことはあまりに有名な話であり、多くの手品ファンは『三代目』がステージに上がる日を指折り数えて待っていたのだ。

 例えそれがアシスタントとしてのデビューだとしても、この夢の舞台でついにその姿を現すのである。

 会場にいた観客は、今日この公演を目の当たりにできる幸運をただひたすらに女神ヴィシャスに感謝するのであった。

「それではまずは第一幕、パトック・サーフェとユニス・アストーリアによる『不思議な二人羽織』から御覧頂きましょう!!」

「いよいよね!」

「うん!」

「がんばって、ペドロ・・・!」 

 こうして世紀の対決は切って落とされたのであった・・・。


 一方その頃、控え室では・・・

「それでどうしますロファ? こんなぶっつけ本番でいきなりやれと言われてもたいした事はできませんよ?」

「うん、わかってる。でもたとえ準備ができたとしても私達じゃあまだお父さん・お母さんには敵わないと思うし、当然お客さんもそう思っていると思う。狙い目はそこね!」

 口では無理だと言いながらもしっかり勝つための算段を考えているロファにペドロは内心で驚いていたが、すぐに自らも気持ちを切り替えるのであった。

「なら内容はコメディにした方がいいでしょうね。手品を使った掛け合い漫才なら手品の腕前は関係なく盛り上げようがあるしとっさのミスもフォローしやすい・・・」

「逆にうまくミスを演出できればより観客を盛り上げる事ができるわ。今回私はアシだけど上手くやってよね!」

「ロファこそ上手く演出してくださいね!表向きのメインは私ですけどみんな『三代目』の実力を見定めようとしてますからね!!」

 その一言にロファは深く頷いた。

「・・・『ロファ』の名前は伊達じゃないって事、見せてあげるわ!!」


 そして再び物語はステージへと移る。

 会場は今、大きな笑いの中にあった。

 始めに出てきたのは羽織を着込んだユニス一人だけであった。彼女は持ってきた座布団に正座をすると軽く観客に話し始めた。

 そうやってお客を自分に集中させた所でユニスは羽織の中から一つのミカンを取りだした。

 彼女はそれを片手に持つと一瞬にしてミカンを二つにして見せた。

 が、それは最初から二つに割ったミカンをあわせていただけだという事をユニスはすぐに種明かししてしまった。

 彼女の軽快なトークと明るい微笑みは観る者の心を大いに和ませた。

 だが観客はまだ知らない。舞台はすでに、ユニスが姿を現したその時からすでに始まっているという事を・・・。

「さて折角持ってきたミカンですしちょっと頂いちゃいますね♪」

 そう言って彼女はミカンの皮を上手にむくと一房掴み、それを口元に運んでいく。すると・・・

「あ~ん・・・っ!?」

彼女がミカンを口に入れようとしたその瞬間、何故かその手は上手に彼女の口を避けていった。

「あらっ? 変ねぇ・・・」

 ユニスは再度チャレンジするがまたしてもミカンはユニスの口を避けていった。

「ちょっとぉ!!」

 ユニスはムキになってミカンを口に入れようと頭を動かすが手は上手にそれを避け、更にはもう一方の手までもがユニスがミカンを食べるのを邪魔し始めた。

 観客は既に思いだしていた。この舞台は『二人羽織』であった事を・・・。

「ちょっとぉ、いい加減にしてパトック!!」

 そうなのだ。今回ユニスはあくまでもアシスタントであってメインではない。だからアシスタントがメインをさしおいて一人で舞台に出る筈がなかったのだ!

 ユニスの怒った声を恐れるようにしてついにパトックが顔だけをその背中から現した。

 彼らは最初から二人羽織の状態で舞台に上がっていたのだ!

そしてパトックはあたかもユニスが一人でいるかのように上手に彼女の両手を演技していたのであった。

「あ~あ、バレちゃった♪」

 そんな神業を披露したにも関わらず、パトックは子供のように屈託のない笑顔を見せたあと再びユニスの後ろに引っ込んだ。

すると今度はユニスの背後がもぞもぞと動き始めた。

「ふぅ、疲れた疲れた・・・」

 そう言ってユニスの後ろから完全に出てきたパトックの姿を見て誰もが驚いた。

 なんと、パトックの両腕が根本から無いではないか!!

「パ、パトック。あなた、その腕・・・」

 左手を口元に当てて青ざめつつも右手でユニスはパトックの両腕を指し示す。

 そんなユニスの様子にパトックは改めて自分の体を見下ろして・・・しばし沈黙。

「あ~、おいらの両腕がな~い!!」

 その声に反応したかのようにユニスの両手である筈のものが再びユニスに対していたずらを始める。

「きゃあ!やめてやめて!!」

 髪を捕まれて頬を引っ張られるユニス。

「あ~、もしかしてそれ、おいらの両腕!?」

 その一言に観客が大いにどよめく。

「わ~ん、おいらの両腕返してよぉ~!!」

 そう言って泣きながら再びユニスの背後にパトックが入る。そしてまたもぞもぞと動いてから頭を出す。

「よし! 今度こそくっついたぞ!! もう大丈夫だ!」

そう言って自分の意志で動くことを確認するロファ。両手はしきりにグーチョキパーを繰り返している。

「あ~、びっくりした」

「それはこっちのセリフよ! もう、心臓が止まるかと思ったわ!!」

ユニスも涙ぐみながらそう叫ぶ。よほど驚いたらしい。

「それじゃあ今度こそ・・・」

そして再度ユニスの背中に潜り込んだパトックがまたその姿を現した。

「ほら、今度こそ両手はくっついたまま。完璧だろ。ねぇ?」

 パトックは観客席に向かってそう尋ねたが観客達の反応はない。

「・・・何だよ。今日のお客は反応が無くて寂しいなぁ・・・」

 そう言って一人ふてくされるパトック。

 しかし観客は彼を無視していたわけではなかった。ただ反応できなかっただけなのだ。

 そんな彼らの心情を代弁するかのようにユニスがパトックに告げた。

「ねぇパトック・・・」

「なにユニス?」

「あなたの足、・・・いつから膝が無くなったの?」

「足?」

 そう言われて体を見下ろしたパトックは何故かいつもより舞台が近くに見える事に改めて違和感を覚えた。

それは気のせいではなかった。実際にパトックの足が半分の長さに変化していたのだった!

「!!」

 声にならない声をあげてから叫ぶパトック。

「何てこったぁ!! おいらの『1m20㎝』の足がぁ~!!」

「こんな時まで見栄を張らないっ!!」

 すかさずユニスに突っ込まれるパトック。

 結局その後も様々な不思議現象が起こったのでパトックはユニスに羽織を脱ぐように言った。

 すると脱いだ羽織は突如空中へと浮かび上がり、別れの挨拶をするかのように自ら袖を横に振って、そのまま天井へと消えていったのであった。

 こうして第一幕の『不思議な二人羽織』は大絶賛のもと終わりを迎えたのであった。

前半は次で終わりそうです

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