いつの間にかのIKEくん
さて、カバンの中で座り込み、特殊なシートで汗を拭くフェアリーのことなんて気にしないでいこう。
気を取り直して、普通の学生生活を送るたけし君に戻ろう。
気にしない気にしない…。
フェアリーなんて気にしない…。
…と、たけしは心の中で呪文を唱えた。
たけしは、遅刻せずに無事に学校に到着し、いつものように授業の準備を始めた。
高校3年生の春、クラス替えはしたがいつもと何ら変わりのない高校生活であった。
すると、カバンの中から、
「たけしさん、たけしさん。今日は、IKEくんいますか?」
と、いつものかおるちゃんのコショコショ声が聞こえてきた。
IKEくんとは、同じクラスのイケメンのたけしくんのことだ。前にも出てきたと思うけど、悲しいことにイケメンではないこの僕と同じ「たけし」という名前なのだ。かおるちゃんは、ここ2年で、いつの間にやらIKEくんというあだ名を付けていた。
つまり、
イケメンたけしくん
から徐々に呼び名が変化し、
→イケメンくん
→イケくん
→IKEくん
という流れだ。
そのIKEくんは、たまに遅刻してくるんだ。
「IKEくんは〜、あっ、今来たよ。遅刻ギリギリセーフだな。」
僕は、まぁ、いつものことだよ!と言うように、かおるちゃんにお知らせした。
「よかったですね〜。また遅刻したら大変ですよね〜。それにしても、今日もカッコ良いですね〜。」
かおるちゃんは、毎日 IKEくんのトリコであった。
IKEくんの遅刻を心配し、
IKEくんの寝癖を直そうと、IKEくんの頭に伸び乗ろうとしたり、
時には、
IKEくんに変な女が寄ってこないように見張りもしていた。
そう、かおるちゃんはIKEくんの隠れガードマンなのであった。
ガードマンと言っても姿はフェアリーだし、尾行するにせよ僕がついていないといけない。つまり、僕が思いっきり怪しい人間になってしまう。
それを回避するために、僕はとてつもなくIKEくんと仲良くなる努力をしたんだ。




