笑うイノシシとたけしの苦悩
「う〜ん。ちょっとね…。」
僕は困った顔をして、答えを濁した。
すると、かおるちゃんが僕の顔を覗き込んできて、
「う〜ん。やはり人間の方々は、こういう派手めなデザインはお気に召さないようですね。」
と、しょんぼりした様子で言った。
僕は、慌てて、
「そんなことないよ。斬新なデザインで、こんなの見たこともないし、素敵だと思うよ! 」
と、無理やり褒めた。
しかし、上手く褒めることができなかった。わざとらしい言葉を並べて話す自分が嫌になった。そして、かおるちゃんの表情は暗いままだった。
すると、かおるちゃんがニッコリと笑って話しはじめた。
「フェアリーの世界では、この前クリスマスだったんです。このお洋服は姉からプレゼントしてもらったんです。フェアリーの世界ではとても人気なブランドなんですよ。」
かおるちゃんは、透け感が最高なスカートを両手で持ち上げ、ヒラヒラとさせた。
「そのスカート、ヒラヒラしてて素敵だね。ちょっと透けてて可愛い。」
僕は、一生懸命そのスカートを褒めた。
「ありがとうございます。この透け具合、最高ですよね。人間界には無い生地なんですよ。透けてるようで透けていない! という画期的な新技術による化学繊維なんです。さすが、たけしさんです! 一番の見どころを褒めてくださるなんて! 」
かおるちゃんは、目を丸くして力説してくれた。
その後、動物の絵を指差して続けて説明をしてくれた。
「ここを見てください。これ! そう! なんと! イノシシさんなんです! フェアリーの世界には、干支は存在しないのですが、干支が人気なんです! 笑っているイノシシがとってもカワイイ! 」
かおるちゃんは、興奮して鼻の穴まで大きく開いて話していた。
「干支が流行っているなんて面白いね。そのイノシシ、すごく渋いね。上司に出す渋めの年賀状に描いてある絵くらい渋いよ。それが洋服に描かれているなんて、なかなかすごい。しかも、渋いのに笑ってる。笑ってる……ははは……。」
僕は、苦笑いしかできなかった。もう、褒めているのか貶しているのか、訳が分からなくなってきた。
「ありがとうございます。さすが、たけしさん、この絵のすごさをわかってくれるなんて。フェアリーは、人間と仲良くするために頑張っているのです。違う文化もこういった形で受け入れているのです。フェアリーの気持ちをわかっていただけて嬉しく思います。」
かおるちゃんは、目をキラキラさせて、ミュージカル女優のような身振りで力強く話した。
僕は、もはや頷くのみで、大人しくかおるちゃんの力説を最後まで聞いた。とにかく話が長かった気がするけど、静かに聞いた。
「たけしさん! 本当にありがとうございます。この想いを受け入れていただけて、私は本当に幸せです。このお洋服をデザインしたデザイナーさん、実はお友達なのです。今度、特注でたけしさんのお洋服を作ってもらいますので是非プレゼントさせてください!! 」
僕は、驚いた。
結局、この斬新なデザインのお洋服をプレゼントしてもらうという結末になるのだ。
い、いらない……。
絶対着ないよ……。
ルンルン上機嫌話すかおるちゃんに反して、トホホ…と疲れた顔のたけしであった。
しかし、なぜか最後は笑いが込み上げてきて、
「ありがとう。どんな洋服ができるか楽しみだな〜。ははは……。」
と、かおるちゃんに自然と返答していたたけしであった。




