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いつか行った隠れ里  作者: 天野幸道


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おぼろの里

ユキ、ゆき、一寸法師は おぼろの里へ着きました。もやがかかったような村で昼とも夜とも分からない場所でした。大通りに出るといたずらをされるからと三人は木陰で休みました。うとうとしてユキが目を覚ますと、飛梅を見かけまだ寝ている二人を残し後を追いました。古い家に入るとおじいちゃんとおばあちゃんがいて、ユキの好物を出してくれました。ユキが信じて食べようとすると一寸法師の投げた石がユキの箸をおとし、おじいちゃんとおばあちゃんは黒い塊に変わってしまいました。三人はまた旅を続けます。

挿絵(By みてみん)

ユキとゆき、そして一寸法師は”おぼろ”目指して進みました。

隠れ里の出口に一年中霧が立ち込めて先が見えない道があります。

「うわ、軽井沢を思い出すわ。」

「この先に”おぼろ”があるの、この道は”かすみ”と言うの。」

「飛梅はこの道に吹かれていきました。」

ユキの肩の上で法師は、小さな手を伸べました。

「本当にあなた大丈夫かしら?そんなに小さかったら潰されちゃうわよ。」

「大丈夫です、打ち出の小づちがあります。それを振れば大きくなります。」

「あれ?あなたお姫様と結婚したのじゃないの?」

「それは私たち一寸一族の一人です。打ち出の小づちはもともと私たち一族のもので、しかも一つではありません。私たちは隠れ里の一部に小さくなって住んでいるのです。」

「ほら、うぐいす姫の家のたんすの中、あそこの引き出しに今も住んでいるのよ。」

「引き出し?」

「そう田んぼ、小川、果樹園、なんでもあるのよ。」

ああ思い出した、うぐいす姫の童話に書いてあっあれかな?

しばらく道を進んで行くと、霧がぼわーと全体的に青みがかったようになり、その中に集落が見えて来ました。

「ここが”おぼろ”です。気を付けてくださいね。」

「悪い者たちはいないけど、ちょっといたずら好きなものたちがいるのよ。」

 夜とも夕方とも分からない村です。

「人がいるのかしら?」

「いるけれど、見えないわ。あちらから姿を現すまでね。」

「あそこの木陰で休みましょう。大通りに出るといたずらされてしまうから。」

 三人は木陰で休みました。暑くも無く、寒くも無く,ほどよい気温。ユキはうとうととしてきました。子どものころお爺さんとおばあさんの家に連れて来られ最初は泣いていたこと、ゆきんこに会ったこと。隠れ里へ行ったこと。やがて家に戻り学校に通うようになったこと。いつの間にか隠れ里のこともおぼろげにしか思い出せないようになっていました。

 ユキは目を覚ましました。

「あれ?梅の花が飛んでいる。飛梅!」

すぐにゆきと一寸法師に声をかけようとしたのですが、二人とも寝ています。

「どうしよう、ねえ起きて、待って早くしないと行っちゃう、えっどうしよう?」

 ユキは飛梅を追ってその場を離れました。飛梅は何か楽しそうにふわふわ飛んで行き一軒の農家に入り込みました。

「知らない人の家、おぼろの家じゃないの!どうしよう。」

ユキは一瞬ためらいましたが家の中に入っていきました。

なんか怖い、、でも見たことがある家だわ。』

「お帰りなさい、ユキちゃん」

「どこへ行っていたのかしら、ほらもう夕ご飯よ。」

 家の中はお爺ちゃんとおばあちゃんがいました。そうですそこはお爺ちゃんとおばあちゃんの家だったのです。

「おじいちゃん、おばあちゃんの家、どうして?私おぼろの家に入ったのに。」

「おやおや、なんだか寝ぼけてしまっているなあ。さっきお昼寝するって言ってたから。」

「今夜はユキの大好きな、ヤマメを焼いたわよ。」

そうか寝ぼけていたのかな、、待てよだまされているってこともあるわよね。でも確かにここはお家だわ。

「さあユキお座りなさい、一緒にご飯を食べようね。お爺ちゃんが、ユキのために釣ってきたんだよ。」

「そうそう、それをおばあちゃんがお料理したのよ。ユキの好きな山ブドウもあるわよ。」

間違いない、私の好きなものばかり。

「いただきまーす。」

ユキはお魚をお箸で取ろうとしました、その時。

「ターー!!!」

小石が飛んで来て、ユキの箸を落としました。

「食べちゃダメだ!帰れなくなるよ!」

一寸法師とゆきがいました。

「ユキ!それはお爺ちゃんとおばあちゃんに化けたおぼろよ!」

ゆきはそういうと手をかざしました。白い粉雪のような光が手から出ました。

法師も針の剣を抜いて構えました。

目の前のおじいちゃんおばあちゃんは見る見るうちに黒いもやもやしたかたまりになっていきました。

「きゃーー!」

「これでもくらえ!」

なんと一寸法師はおぼろにとびかかり針の剣で刺しました。

「*?>●△'#"%%&!+*}◇{<!!!」

訳の分からない悲鳴を上げ、おぼろは逃げていきました。

「危なかったわ。もう、一人で行ってはダメ、離れないでね。」

「ごめんなさい、でもおじいちゃんおばあちゃんに見えたし、私の好きなもの知ってたから。それにここはお爺ちゃん、おばあちゃんの家だもの。」

「いいえ、よく見てごらんなさい。ほらおぼろが消えたでしょ。だからこの家も消えるのです。」

見る見るうちに家はかすんでいき、ユキたちは森の中にいました。

「まぼろし!?」

「おぼろなのよ。人の心の中を読み取って、あたかも本物のように、まぼろしを映し出すの。」

「私殺されかけたの?」

「いいえ、おぼろは人を殺しません。人と仲良くしたいのです。思い出をよみがえらせそこに住まわそうとするのです。悪気が無いけれど厄介なのです。」

「人は、思い出を大切にしすぎると現実から逃げてしまうのよ。ユキがうとうとして昔を思い出したから、ユキの心の中に入り込んだのね。ユキが思い出の中にいたいと判断してしまったのね。」

「そうなんだ。じゃあ飛梅も、おぼろだったのかなあ?」

「たぶんそれは本当だと思うわ。精霊たちは他の精霊の真似はできないから。」

「この場所に来たということは、どこか道があるはずです。」

「あそこ、あれは”にわか”への道だわ。」



最初に訪れたおぼろの里。メーテルリンクの青い鳥の思い出の国を何となくイメージしました。もちろん登場人物は正義の味方ではありません。悪気が無いが人の思い出に入り込み、引き込んでいくものたちです。

やがて次の場所に行く道が出てきました。

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