↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
55/63

癒せぬ傷と受け継ぐ想い

ニーナは空の飛べるレイナに連れられルメイナ城を後にしたーーそしてたどり着いた先は。



【登場人物】

ニーナ:剣の勇者

レイナ:空の英傑

カイルス:癒しき龍の英傑 


【記憶の中に出てくる者】

アレン:古の剣の勇者

当時の癒しの英傑


空から見える雪原を超え、大海原を見下ろすニーナ。

ーー彼女はレイナの背に背負われていた。



「レイナちゃんー!?どこまで行くの!?」

「んー!もうつくから!ちゃーんと!掴まっててねー!」

「…わぁ…すごい…」



「炎が燃えている…」とあたりが燃える島を見つめていたニーナ。



「私たちが行くのはそっちじゃないよー」

「え???」



レイナにそう告げられたニーナは不思議そうに辺りを見渡す。

しばらく空の探検をしていると、霧に覆われた島から突如伸びている大きな木を見つけた。



「なんだあれ…あそこだけビヨン!って出てる!?」

「あはは!あそこに行きまーす!」



「捕まっててねぇ!」という緩い声とは対照的に、猛スピードで降下するレイナに必死に捕まるニーナ。


2人が共に降り立ったのは、人間が踏み入れてはいけない雰囲気を醸し出している神秘的な島。

ーー龍の島である。


初めて見るその神秘的な空気に、ニーナは恐れ慄いていた。



「え…こ、これ…入っていいの…?レイナちゃん…?」

「うん!大丈夫大丈夫!貴方は勇者だから!」

「…え、それ関係あるの…?」



「無理なんだけど…」と言ってニーナは踵を返そうとするが、レイナに首根っこを掴まれる。



「がっ!?」

「はいはいはい、そんな怖がってないで行こう行こう」

「ちょちょ!!な、なんか魔物とか出たら…」

「そんなのでないって!!」

「いやでも…お、お化けとか…」

「あー…お化けはいるかも」

「ひいいい!!行かない!!!!私無理!!!!」

「なんでそんなに怖がってるの!!」

「お化けいるのは怖い!!!!」

「貴方の剣の方がよっぽど怖い!早く行くよ!」



可愛い顔からは想像がつかない強い力で、ニーナを森の中に連れ込むレイナ。



「待って!!!せめて目を瞑ります!!」

「大丈夫だって!!」

「じゃあレイナちゃんおんぶして!?怖い!」

「もー…わがまま言わないの!何が怖いの?」

「だだだだってさ…お化けとかいたら…」



「ひいいいい!!!!」と、ニーナは大木にしがみついた。



「もー、なにやってるのー?行くよー?」


「無理…怖い!!!!レイナちゃんがおんぶしてくれないと無理かも!!!」


「抱っこでもおんぶでもしてあげるから!!」

「やっぱ無理いいい!!!」



ニーナが恐怖のあまり大木にしがみついていると。

小さな龍が、彼女達を迎え入れる。



「ひいいいい!!なんか!!ニョロニョロしてるのがきた!!!レイナちゃん私無理!!」


「ちょっとちょっと!落ち着いて!怖くない!よく見て!!!これは小さい龍だよ!」


「なんっで…龍がいるんだよおおお…」

「ここ!!龍の英傑の島!」

「…」



その言葉を聞いたニーナは大木から体を離し、地面に座り込むとキョトンとした表情をレイナに向けた。



「…はぇ?お化けの島じゃないの?」


「ニーナがルークを直した場所教えてっていうから連れてきたんだよ?」


「いや貴方主語ないし急に空舞ったじゃん!?行き先教えてよ!?」


「えー?それはごめん!」


「いえ、連れてきてくださったのね…ありがとうございます本当…」


「ほらほら、そんなところに正座してないで!さっさと会いに行こ!」


「…」



そう言ってレイナはニーナの腕を掴み、森の奥へと進んでいく。



「…うわぁ…すごい…」



どこか神秘的なその森は、ニーナの心を癒していた。

ニーナの周りを優雅に泳ぐ龍。

ーー彼はニーナに頬擦りをした。



「…ごめんね、お化けかと思って…ていうかニョロニョロとか言ってごめん…」



そう言ってその小さい龍を撫でた。

その間、レイナは大木付近を飛び回り人影を探す。



「カイルス〜連れてきたよ〜?カイルスー?」

「…カイルス?」



聞き覚えのない名前に眉を顰めていたニーナ。

すると



「…」



見るからに顔色の悪い青年が無数の龍に囲まれながらニーナの元に現れた。

ーーそれがカイルスである。



「…うわ…綺麗…っ…」

「…」



カイルスはニーナの背に背負われている剣を見つめた。



「貴方が…剣の勇者様でいらっしゃいますか?」

「…あ、はい…一応…名前はニーナです」

「私は癒しの英傑、カイルスです。」

「…へえ…そうなんだ…癒し…」



ルークが怪我を治していたことを思い出すニーナ。



「ルークの怪我を治してくれたの…カイルスなの?」


「私には治癒能力があります。貴方達の傷を治すのは容易いことです。」


「ありがとう、ルークの怪我を治してくれて…あの人…私の怪我は治してくれるのに…自分の怪我は治せないから…」


「…」



カイルスは、ニーナの穢れている魂を見つめた。



「…貴方はとても…傷ついています。どうか私の治癒の力でその傷を…」


「ねえ」

「どうされましたか」

「カイルスは…自分の治癒はできないの?」

「…え?」

「顔色すごい悪いよ?大丈夫?」


「…治癒能力を使うが故に、短命なのです。その生命力の弱さが見た目に出てしまっているのでしょう」


「…じゃあ…力を使えば使うほどカイルスの体に負担がかかるんだ…」


「それが龍の宿命なのです。」

「へぇ…」


「…ニーナ…貴方の魂はとても傷ついています。どうか私に貴方の傷を癒させてください。」



そう言ってカイルスはニーナの胸元に手を伸ばす。



「…私は…いいや」

ニーナはカイルスの手を握りしめた。



「え?」

「…大丈夫!他の人達を癒してあげて」

「…」

「そうですか…」



カイルスは、瞳を伏せ悲しげに笑う。



「…やはり貴方は…剣の勇者にふさわしいお方だ…」

「ん?」


「然し…我々は二度と同じ過ちを繰り返したくはない。どうか…貴方を癒させてください。」


「いやいや、あのね?本当に!本当に大丈夫だから!!!私はありがとうって言いたかっただけ!!お化けと思ってごめんなさいね!!」



「レイナちゃん帰ろう!」とレイナの手を掴むニーナ。



「…」

「ニーナ…!」


「いいからいいから!帰ろう!!気持ちだけ受け取っとくよ!バイバイカイルス!」


「…」

「ニーナ…貴方…自分の力を知ってるんでしょ…?」


「うん、でも…カイルスに死んでほしくないし…なんかここきたら、なんかモヤモヤとかそういうのスッキリしたし!大丈夫!!それだけでもう十分!!」



レイナはカイルスを見つめた。



「貴方がそう命令なさるのならば…私は貴方の傷を癒すことはしません…」


「カイルス…!」

「…しかしニーナ」

「ん?」



カイルスはニーナの額に手を翳した。



「あまりご自分を追い詰めないように」

「うん、わかった。」



「ありがとうカイルス」と、ニーナはカイルスに笑いかけた。



「じゃあ、帰ろう?ニーナ…」

「うん、またねカイルス!」

「えぇ、また。」


「んじゃしっかり掴まっててね、じゃあ…またね!カイルス〜!」



ニーナは治癒の施しを受けず、レイナと共に龍の島を去っていったのだった。



ーーーーーーーーー



ーーーーーーーーー



カイルスは1人、追憶の泉に向かうとゆっくりと水面に足をつける。



「…」



静かに目を瞑ったカイルス。

そして彼は、過去の記憶に思いを馳せた。


ーーそれは在りし日の己自身の記憶である。



「顔色が悪い…大丈夫か?」



自分の名ではない自分の名を呼ぶ少女がいた。



「おい!大丈夫か?」

「…アレン…か…気にするな」

「少し休んだほうがいい…」

「それは貴方だ、アレン。」


「…あはは!おいおい、私のことは気にするな。お前がいなくなっては、皆苦しんでしまうんだぞ?」


「…」


「皆お前を必要としている…だから私に力を使う暇があるのならば、少し休んでくれ。」


「貴方はなぜそこまでして…」

「お前に信じてほしいからだ」



「人間も、悪い奴ばかりではないと」

そう言って笑う、アレンと呼ばれる少女とニーナの笑顔が重なったカイルスは涙を流した。



「"我身を案じ…癒しの施しを受けたがらないお方…自分よりも二人の勇者を、勇者達よりも民をと、心のお優しいお方だった。"」



カイルスは泉の水を掬い上げる。



「貴方の…貴方たちの魂は…今もずっと泣き続けている…」



「今もどこかで…貴方達は苦しんでいるのですね…」

と、カイルスは空を見上げ、涙を流したのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。