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光を信じる者

モアを信じると言い切ったレイ。

彼の本当の思いと、仲間たちの思いが対立する。

「信じるよ」と告げたレイ。



「…え?」

「…」


「モアちゃんのお母さんが操られていた、それは誰が操ったのか…勇者様の発言の本当の意味や、双剣を持つ人の言葉の真意…まだわからない事がたくさんある…」



「一つずつ解決していけばいい。」とレイは告げた。



「もう、言い合いするのはやめよう…多分…ずっと平行線だ。このままじゃ…お互いの気持ちを蔑ろにしてしまうことになるよ。」


「レイ…」

「俺はモアちゃんを信じるよ。君は俺の主人だから。」

「レイ君…」


「信じるって…あんたねぇ!?そんな簡単に言わないでよ!?あんたはあいつを知らないから…!!」


「そう…俺は彼女を知らない…君たちの方がよっぽど彼女を知ってるはずだ。」


「何がいいてぇ…?」



そう言ってバルドは再びレイの胸ぐらを掴んだ。



「何も知らない俺が信用できるのに、どうしてお前達は信用できないんだっていいてぇのか…?」


「…勇者に選ばれた人は…俺たちの理解の範疇を超えた強さがある…例え世界中を敵に回しても、仲間の俺たちだけは味方でいなければならない…それなのに…君たちはなんだ…」


「あ…?」


「確証…?事実…?それを超えた真実があるかもしれないのに…簡単にモアちゃんを否定するのは違うんじゃないかな。」


「…簡単だと…」



「ちっ…!!!」

バルドはレイの頬を殴った。



「…」

「お、おい!?バルド…!!!」


「…何もしらねぇおめぇに教えといてやる…モアはな…俺らが思うよりもずっといい奴で…純粋なんだよ…」



バルドは拳を震わせた。

彼自身、ニーナを信じたいと言う思いが強かったのである。


ーーあの時自分が一緒に行動をしていれば。

そんなたらればがバルドの中で大きくなってしまっていた。


できることならば手放しで信じてあげたい。

しかし、真っ直ぐな思いが危険であることにも気づいていたバルド。

裏切りが事実だった時、モアがニーナを信じていた分その反動は計り知れない。


そう思ったバルドなりの考え方だったのだ。



「俺らを導く光が…友人の裏切りで闇に堕ちたら…それこそ世界が終わるんだよ…わかるか!!!!簡単になぁ!!信用させちゃいけねぇんだよ!!!」


「…」



シンは尻餅をついていたレイに駆け寄る。



「レイ…大丈夫か…?」

「あぁ、うん、大丈夫…」

「…」



バルドの「簡単」という言葉に反応した時の揺れる瞳。


レイはそれを見逃さなかった。

バルドが発する強い言葉の奥にあったのは怒りではない。


ーー彼は頭ごなしにニーナを否定しているわけではない。

ただ、モアが傷つく未来を恐れている。


彼の心情を知るため、レイはあえて彼の感情を揺さぶったのだ。



「…そっか…わかったよ、バルド君。」

「…あ?」



レイはバルドに微笑んだ。



「君の気持ちがよくわかったよ」

「…は???」


「…それを踏まえて、俺はモアちゃんの信じたいという思いを尊重するよ。」



そう言ったレイは懐から書物を取り出しモアに渡したのである。



「これ…」


「炎の英傑の日録…時代によって解読文が違うから、俺なりに勉強して解読したんだよね。」


「へぇ…すごい…」

「お前すごいな!これ読んでもいいのか?」

「うん、勿論。フィルちゃんも、涙拭いて?」

「言われなくても止めるわよ!!!!」



フィルは涙を拭き、モアの隣に座り書物を覗き込んだ。



「…」



固まって座るモア達を見つめ優しく微笑むレイ。



「レイ」

「ん?」

「…悪ぃ…カッとなっちまって…」


「あぁ…はは!全然気にしてないよ、みんなモアちゃんを思ってのことだもんね。」



「ただ、痛い」とレイは豪快に笑った。



「すまん…」


「…バルド君って…周り見て嫌われ役とかもできるかっこいい人なんだね」


「はぁ?ばかにしてんのかてめぇ」

「あはは!そうかもね」

「前言撤回!!!もう一回殴らせろ!!」

「えぇ?!なんでぇ?」



そう言って笑い合うレイとバルドを見つめ、笑うシンとドン引きする女性陣2人。



「はは!!仲直りしてよかったな彼奴ら!!!!」

「男ってわかんない…」

「ね…」

「とりあえず見ようぜ?」

「うん」



そこにはびっしりと頁いっぱいに古の文字が綴られていた。



「すごい…こんなにびっしり…」

「それをレイが解読したんだね?」



「変態ね。」とフィルの一言にモアは笑みをこぼした。


レイが解読した文を3人は見ていくと、そこには勇者や英傑達への思いが綴られていた。



"アルヴィス様は何処か飄々としていて、それでいてどっしりと構えているお方だ。どんな不条理も受け止め、その広い心で全ての民の思いを受け止めているようにみえた。"


“ウル様は、たとえ何があっても闇に囚われることのない強い心の持ち主であると言うことがわかる。彼女から放たれるその清い光に、沢山の民は救われているに違いない。彼女がいることで彼らの中心軸ができているのだろうなとも理解できた。"


"アレン様は、いつも優しい笑顔を絶やさず、常に民の心に寄り添おうとする心が特に強いお方だ。相手の憎しみも苦しみも受け止める慈愛に深い方、その気持ちをどうかご自分にも向けて欲しいと願うばかりだ。そばにいる身として彼女の心に光を灯せる存在でありたいと思う"



「アレン…ウル…アルヴィス…か…これが昔の勇者の名前か…」



3人はある一文に目をとめた。



"彼は信用に値しない。だが、お三方がお許しになったのならば私はそれに従うだけ。"


"彼の、アレン様を見る眼差しが日に日に殺伐としている気がする。注視しなければならないだろう"



「"彼"って書かれてるこの人…英傑かな?」

「ね…誰だろう…」



"一本に結んでいた髪を切り落とし、一人称を「私」から「俺」と変えたアレン様、男として生きようと突き進んでいた。"



「はっ…」



モアは夢で見た「彼」の違和感がここではっきりとわかったのだ。



"あどけない笑顔は初めて会った時のままで、可愛らしい少女の影が残っていた。お二人といる時も、それが垣間見える。どこか無理をなさる彼女に心の拠り所があり、私達英傑も安心していた。"



日録を見ていくにつれてわかったこと。

それは、炎の英傑が勇者アレンの忠臣であることだった。


彼女への思いが綴られている文に、モアは顔をほこらばせた。


ーーしかし、頁を進めて行くにつれその文は不穏になっていく。



"どんな時も笑顔でいるアレン様が涙を流しながら「疲れた」とおっしゃっていた。どこか、彼女の心が壊れているような気がした私は、英傑たち、そしてお二人と共に彼女を励まし、彼女の笑顔を取り戻そうとした。"



「…」



"「私が死ねば愚かな争いも…何もかも終わるのだろうか」とポツリと漏らすアレン様。その目に光はなく、どこか辛そうだった。耐えられず二人に伝え、お二人は彼女の手を握り、何か声をかけていた。"


「どんな言葉も、彼女の心にはまるで響いていないように見えた。」と言う言葉を最後に、モアは涙で文字が見えなくなってしまう。



「…ごめん、なさい…っ…」

「モア…?」

「…」

「…ごめん…っ…」

「見るのやめるか?」


「ごめん…もう…見れない…また…別の機会に見る…」



モアは涙を流した。

何度も夢に見た、剣の勇者と思わしき人物。



"嗚呼…友よ…俺にはこうすることでしか誰かを護ることはできない…っ…この道を進む俺を許してくれ…"

そう言って涙を流していた。



優しさは、時に人を救う。

ーーけれど

その優しさが、自分自身を傷つけることもある。


アレンは、きっと誰かを守るために歩き続けて、いつの間にか自分の痛みを置き去りにしてしまったのだろうとモアは思う。



「アレンは優しすぎた…」

「そうだな…」

「…だからって!!!」

「びっ…くりした…なんだよ…?」


「だからって自殺するのは違うし…ニーナのことだって簡単に信じられないから!!」


「…っ…」


「フィル!!!お前が何を思おうが否定はしねぇけど…少し言い方考えろって!?」


「うっさい!!ばぁか!!!」

「なっ…おい、フィル!!」

「シンちゃん…」



モアはシンの腕を掴み、首を横に振った。



「いいの。いつかわかってくれる時が来るまで…私は諦めない。」


「…そうか…わかった。」



シンはモアの頭を撫でた。



「…っ…」

「あ!!!なぁレイ!」

「ん?」


「お前炎の英傑なんだったら、一緒に旅してくれるよな!!」


「勿論」

「そうか!!!じゃあ一緒に行こうぜ!!!!」

「うん」



シンとレイは固い握手を交わした。

ーーその後「善は急げ」ということで、里を直ぐに出るというレイに一同は驚愕した。



「お、おい!?仲間達との最後の夜とか、別れを惜しむとか!?そういうことしなくていいのかよ!?」


「え?あぁ…うん、だって俺…里長とかやりたくなかったし」



「「ええ!?」」



「力に目覚めたらその人が強制的に里長になる決まりだったから…俺ずっと隠してたんだけど…バレちゃってね」


「おいおい…随分とまた…」

「変わってるわねあんた」


「そうかな?俺は…誰かを支える方が性に合ってるんだよね」


「そ、そうか…そうか!!!お前がそうなら!そうなんだな!」



そう言ってシンはレイの背中を叩いた。



「だから早く行こう」

「おう!!」



そう言って炎の里を後にしようとしたモア達。

ーーすると



「レイ兄ちゃん」



里の子供達がレイの元に現れたのだ。



「お前達…家にいろって言っただろ…?」

「兄ちゃん、帰ってくる?」

「…」



レイは子供達に目線を合わせるようにして跪いた。



「少し時間はかかるかもしれないけど…帰ってくるよ」

「本当!?」

「うん」

「兄ちゃん、その頃には女連れて帰ってきそうだなぁ!」

「あはは、そしたら温かく迎え入れてね?」



「「はーい!!!」」



「じゃあね」

そう言ってレイは筏に乗り込んだ。



「んじゃ、いくぞぉ」

「うん!!」

「フィル!頼んだ」

「わかった!」



フィルが薙刀を振り翳すと、風を起こす。

バルドが海に手を翳し、筏は転覆せずゆっくりと動き始めた。



「…」

「レイにいちゃーん!!!!!」

「…ん?」



「バイバーイ!!」という子供達や、我慢できずにやってきた炎の里の兵士達がレイに手を振っていた。



「いいよ…戻りなよー!!!!」



「「行ってらっしゃーい!!!!」」



「あぁ…ありがとう!!!」



少し照れくさそうにレイは手を振った。

そんな彼を見つめモアとシンは笑みを浮かべたのである。


ーーここでシンはある疑問を抱いた。



「なぁ、レイ」

「ん?」

「お前の父ちゃんと母ちゃんは?」



レイは、彼らに気づかれない程度に表情を曇らせる。



「…さぁ。」



「「さぁ!?」」



「…」

「さあって何!?」


「里長になってから一言も話してないからわからない、もう老いぼれてるんじゃないかな?」


「あ、あんな小さい島なのにそんなことあるの!?」

「あはは!うん、そんなことあるよ」

「なんでよ!?」

「…」



「おら!」とバルドはフィルの頭を叩く。



「いったいわねぇ!?なによ!?」

「こういう機会にお前も風の操り方練習しろ!!」

「なっ…うっさいわね!!わかったわよ!!」



バルドとフィルは相変わらず、張り合いながら能力を高め合った。

そんな2人を見つめ、レイは笑う。


モアは、きっと触れてほしくない何かがあるのだろうと察し話を変えることにした。



「レイ君!」

「ん?」

「これからよろしくお願いします!!」

「うん、よろしくモアちゃん」



モアとレイは握手を交わした。

その様子を見守る三人。



「とりあえず…王様んとこに戻るか!!」

「おー!!」

「え、王様…?」



ノリノリなシンとモアを見つめたレイ。



「え、王様?」

「何もいうな…レイ…」

「行けばわかるから…」



そう言ってレイの背中をさすったバルドとフィル。

ーーモアは新たな仲間を交えて、ホアンクルムの王宮へ戻るのだった。


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