大地の英傑
「モア!!おい!!!モア!!!!」
一方で、どこを探してもモアを見つけることができないシン。
「…ったくあいつ、足速いな…どこいっちまったんだよ…」
木に登り、辺りを見渡しモアの姿を探していたシン。
すると、どこからともなく声が聞こえてくる。
しかしその声をモアだと錯覚したシンは、モアの名前を呼ぶ。
「モア!!!モアー!!!」
「大地を司りし英傑よ」という脳内に響くその声が、モアとは別物である事に気づくシン。
「…は?何…誰!?お前誰だよ!?」
その声を気にしようとはせず、モアの名を呼び続けるシン。
すると、辺りの騒がしさに気づいた。
それはシンだけが感じる大地の声。
「…なんだ…っ…森が…騒がしい…」
「…」
揺れる植物達の声に、今度は耳を澄ますシン。
「…」
「お前の力は…勇者様を守るために使うものだ…」
確かに聞こえたその声に、シンはどこか戸惑いを見せる。
「…え?」
シンは自身の体から、まるで蜃気楼の様な緑色の光が微弱に放たれている事に気づくと、体の底から溢れんばかりの力の漲りを感じたのである。
そして感じたのである、モアの声を。
「なんか…力が湧いて来てる…モアが呼んでる…」
何かを感じとったシンは、何かに導かれる様にして道をひたすらに走り出した。
シンが踏んだその地は、美しい花々を咲かせ、大地の息吹が宿っていたのだった。
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そして、巫女の力を宿したと自負するモアはというと。
「…」
「…」
「…」
弾いた矢が旋風の如く、男の足元に着地する想像をしていたモア。
しかしその矢は、モアの足元で力なく刺さっていた。
3人の中には気まずい静寂が流れる。
「…」
まさかの展開に、不本意に呆気にとられる男。
「えーっと…隙あり…」
そのうちに少年はモアの元へ駆け寄り、彼女の背後に隠れた。
「…ちっ…まさかの展開に身体が動かなかったぜ…しかしめんどくせぇガキだな…もういい…顔も見られた事だ、死んでもらうぞ。」
そう言って男は鎌を取り出し、ジリジリとモア達と距離を詰める。
「…っ…」
「ど、どうしよ…兄ちゃん…っ…怖いよ…」
「…」
その幼い少年の声に、不本意に離れる事になってしまった弟達を思い出したモアは、少年の肩を強く押した。
「貴方だけでも逃げて…」
「お姉ちゃん!!お姉ちゃんが死んじゃうよ!!」
「大丈夫!!大丈夫だから!お姉ちゃんこんなことしかできなくてごめん…でも貴方だけは助けるから!!!」
「でも…っ…」
「お優しいこった、なら望み通り殺してやる!!!」
「…」
モアは少年をきつく抱きしめた。
その時だった。
体の内側から例えようのないほどの清らかで温かい「何か」が感じられたのである。
その何かに戸惑っていたモアは、自身の胸元が強い光を放っている事に気づいた。
「…え?」
「…がっ…」
「へ??」
思わず男の方を見ると、モア達を襲おうとしていたその男は、蔦で身動きが取れなくなっていたのである。
「そいつに手出しはさせねぇぞ!!!」
「えぇ!?シン君!?」
「…」
シンは手元から伸びる蔦を器用に使い、男を締め上げた。
「お前には、心の安らぎがたりねぇよ。」
「…」
「花の匂いでも嗅いで癒されてろ!!」
「ぐっ…や、やすらぐ…安らいでいくぞ…な、何だこの花の香りは…!」
「はっはっは!!見て驚けよ!!それは…えーっと何つー花だっけかな…」
「シン兄!!!それはペニチュアだよ!!!」
「あ?そうそう!!ペニチュアだ!!!なんでペニチュアかは俺にもわからない!!!!」
「ぐぬぬぬぬ…心が安らかになっていく…っ…」
男は心に安らぎを取り戻し、やがて眠りについた。
「ふぅ…な、なんとか間に合った…それにしても…何だこの力…すげぇな…」
「俺の手蔦になってる」と、自分でも驚いているシン。
「シン兄とお姉ちゃん、なんか光ってるよ!」
「え?」
「本当だ…」
「お前の声が聞こえたんだよ。」
「え?」
「…」
「わかんないけど、確かに聞こえたんだ」とシンはモアを見つめた。
「ま、まぁ…私声大きいってよく言われるから…」
「そういう事?…でもそんな…って!!!ちがう!!そんなことよりだな!?」
「は、はい…」
「お前!急にどっかいなくなんなよ!!!危うく死ぬところだったんだぞ!?」
「ご、ごめんなさい…」
「まぁでも…モアの奇行のおかげでこいつも助かったみてえだし…そこはありがとうな?」
「…あ…ううん…」
「友達探すんだろ?今日はとりあえず俺の家こいよ。」
「いいの?」
「当たり前だろ?こいつの命の恩人だしな」
そう言ってシンは少年を肩に乗せた。
「え???」
「こいつ、俺の弟。」
「ええええ!?そうなの!?」
「お姉ちゃんありがとう!シン兄!こいつどうするの?」
「この男!!」と少年はシンを見つめていた。
「あー、村長に突き出してやる。女子供を手にかけるなんて許せねぇからな。こいつは俺が持って行くから、戻ろうぜ、モア」
「あぁ…うん…」
まるで鈍器で殴られた様な頭痛が走り、静かだったはずの辺りが妙な喧しさで溢れたため、モアは顔を歪めた。
「どうした?」
「なんだか…いろんな声が聞こえて来てるような気がして…」
「…ちょっと、俺の婆ちゃんに聞いてみる。なんかガキの頃聞いたことがあってさ。」
「何を?」
「よっこらせ…こいつ重てぇな…引きずってくか。」
「シン君、何を聞いたことあるの??」
「あ?あぁ…あんま覚えてねぇんだけど…遠い昔に、俺が今出したような力を持って戦ってた人がいたって話」
「へぇ…かっこいい!!!そんな話があるの!?」
「おぉ、それとさっきの光が関係あんじゃねぇかなって」
「そっか…シン君のおばあちゃんに聞いてみたい」
「おう、じゃあ行こうぜ」
モアはシン達兄弟に連れられ、彼らが住む村へと足を進める事にするのだった。




