孤独の剣に走る閃光
勇者が持つ神器(主に弓や剣などの攻撃に特化した2つ)に英傑の力を込めると、攻撃力が上がる。
剣同士が重なり合う音がなる城内。
「…っ」
「…甘い。」
そう言ってニーナの肩を蹴り上げ、地面に叩きつけたアルヴィス。
「…ゲホゲホ…」
「…そんな甘ったれた剣裁きで、剣の勇者が務まるものか。」
「…もう一回…お願いします…っ…」
「ニーナ…もうやめるんだ…!!」
「ダメだ…っ…強く…ならなきゃ…っ…」
強く握りしめたグリップは血に塗れていて、疲労からか、その手は震えていた。
「ニーナ…」
「団長!!!もうおやめください。ニーナの身体は限界です…」
「…どいていろ…ルーク、リヒト…」
「彼女の身体はもう限界です…おやめください団長。」
「…2度は言わぬぞ…!!!」
アルヴィスはルークの胸元を切り裂いた。
「…」
「ルーク…!!!」
「お前達…見ていろ…お前達が傷付けば…ニーナは今以上の力を発揮する…」
「…っ…!!!」
先ほどとは比べ物にならないほどの剣戟が響き渡る。
「ルーク…とりあえず止血を…」
「俺は大丈夫です…リヒト君…ニーナを止めて…ください…っ…」
「…」
鋭い瞳でアルヴィスを見つめるニーナは、剣を振り回す力を強め始めた。
「ニーナ!!落ち着け…ルークは無事だ!!」
「…っ…」
ルークはニーナに声をかけようとするも、瘴気による痛みによって蹲ったまま動かなくなってしまう。
「…っ…ルーク…!!」
ニーナはルークの元へ駆け出し、彼の胸の傷口をなんとか塞ぐ。
「ルーク…血を、血を止めなきゃ…っ…」
「…ニーナ落ち着け…大丈夫だ…ルークの傷は浅い…」
「でも…っ…」
「…」
「ニーナ」とアルヴィスはニーナの名前を呼んだ。
「ルークが怪我をしたのはお前が弱いからだ。」
「…っ…」
「団長…!!それは違う!!!」
リヒトはニーナとルークを庇うようにしてアルヴィスの前に立つ。
「…っ…私の…せい…」
「違う…ニーナ…団長の言葉は聞かなくていい…俺は大丈夫だから…お願い…その想いのまま…剣を振るっちゃいけない…」
「何をしているの」という声が聞こえ、彼らはその声の方へ視線を向ける。
「レイナ…」
「団長…もうこういうのやめようよ…?」
レイナはゆっくりと、歩き出しアルヴィスに距離を詰める。
「私は貴方の心を知ってるよ…貴方の本当の心はニーナにこんな酷いことをしたいと思ってない。」
「レイナ…どうやら私はお前を少し野放しにしすぎたようだ…」
そう言ってアルヴィスはレイナにレイピアを向けた。
「2度とその口開けなくしてやるぞ…」
「そんなことしても、団長の心は救われないよ。無意味なことはしない方がいいと思う。」
「…」
「貴方の本当の気持ち…言葉にして教えてあげる…どうして、そんな目で私を見るの、どうして…」
どうしてそんなに似ているのだ。
どうして私だけを見てくれないのだろうか。
どうしてこんなに愛しているのだ。
レイナがその言葉を続けようとしたその時。
アルヴィスは声を荒げた。
「黙れ!!!!!レイナ…」
「…」
「お前はもうこの城に必要ない…去れ。」
「嫌だ!!私は団長の敵じゃないもん」
「まぁ味方でもないけど」とレイナはアルヴィスに告げる。
その様子を見ていた3人は唖然としていた。
「ほんと…急いで来てみれば…何やってんの…ルーク…」
「ゲホゲホ…っ…すみません…」
「リヒト、ニーナを頼んだよ」
「…あそこへ行くのか。」
「うん。だからニーナを頼んだ!!」
「…」
そう言ってレイナはルークを抱え空を飛び上がろうとするが、アルヴィスの剣に阻まれる。
「ここまでコケにされて…私が行かせると思うか…」
「…」
「…っ!!!」
ニーナはアルヴィスに向け剣を張り下ろす。
「ニーナ…!!」
「行って!!!レイナちゃん!!!」
「…っ…」
レイナはニーナを見つめ頷くと、アルヴィスの隙を見て大空へと舞い上がった。
「チッ…!!!」
「…うっ…」
ニーナの剣を掴み、蹴り飛ばしたアルヴィス。
「ニーナ!!」
蹴り飛ばされたニーナをリヒトは抱き止めた。
「大丈夫か…」
「はぁ…っ…っ…くそ…っ…なんで…」
「ニーナ…」
「なんで…私はこんなに弱いんだ…っ…!!!」
「ニ…っ…」
リヒトは再び走り出したニーナの後ろ姿を見つめ、遠い記憶を思い出す。
“後のことは…頼んだぞ"
リヒトはそう言って笑う誰かを思い出した。
「"行かないで…ください…"」
"…ねぇ!お願い…お願い目を覚まして…!!!お願い!!!"
そして、再び記憶を想起した時にリヒトの瞳に映ったのは別の人物の姿。
「…っ…」
強い剣戟が鳴り響く中でリヒトは拳を握り立ち上がった。
「私はお前を倒す…っ…!!!絶対に!!!!!」
ニーナの心には再び憎しみが湧き上がった。
「お前が…っ…ユアンに命令したせいで…っ…!!ユアが思い出した時…苦しむのも知らずに!!!!」
「ふん…己の弱さを私の責任にするか…?なんと脆弱なやつだ…」
「…うるさい!!!!!!!!」
ニーナは、怒りに苛まれたまま剣を振りあげる。
ーー瞬間、その場に閃光と共に轟音が鳴り響いた。
「…っ…」
「ニーナ…もう…やめるんだ…っ…」
「…」
「…リヒ、ト…?」
「…頼む…もうやめてくれ…これ以上…お前が傷つくのは…見ていられない…っ…」
ここまで大きな感情を表に出すことをしなかったリヒトが、大粒の涙を流していた。
「え…どうして泣いてるの!?リヒト…?!!」
「…」
ーー気づけばアルヴィスはその場から姿を消していた。
ニーナはそれを気に止めることなく、リヒトの肩を揺さぶる。
「リヒト…どうしたの!?お前もどこか痛いの!?」
「…はっ…」
焦点が合わず開き切ってしまったリヒトの瞳は、ゆっくりと閉じられる。
「…何でも、ない…悪かった…」
「…あ、そう…」
「大事ないか…ニーナ。」
「いや…はい…お前が心配でどうでも良くなっちゃったわ…」
先ほどの苛立ちが嘘のように、ニーナは精神を落ち着かせていた。
「そうか…」
そう言ってリヒトは力無く笑った。
「人間…あり得ないことが起こると怒りとか消えるんだな…」
「あり得ないこと…俺が泣くことがそんなにあり得ない事か。」
「うん。」
「…ゴホン…すまない、取り乱したんだ。」
「全然気にしてない、寧ろ感情があって安心した」
「そうか…」と今度は顔を綻ばせ、笑ったリヒト。
「ルークなら大丈夫だ。レイナがある場所へ連れて行ったから。」
「ある場所?」
「いずれ分かる。」
ニーナはジッとリヒトを見つめる。
そして不満げにリヒトに告げた。
「スカしてんの?」と。
「…スカしていないだろ。」
「じゃあ勿体ぶってないで教えろし。」
「教えたって見るまでわからないだろう。」
「それはそうだけどさぁ!?」
「なんだよ、ケチ。」そう言ってリヒトに背を向けたニーナ。
「…」
リヒトは、剣をこちらに向け座るニーナを見つめていた。
ーーそして彼女の剣に向け、光を放つ。
「うわぁぁあ!!!!」
背中に電気が走り驚いて剣を背負うのをやめたニーナ。
「…痛い痛い!!?痛い痛い!?なんか電気走った今!!」
「…悪い、ちょっと試したいことあったからやった」
「は…!?」
「…その剣…俺や他の力を持つ英傑に触れてもらうと英傑の力を得た剣になるんだ。」
「あ、そう…」
「炎の力を借りれば炎の剣に…俺が力を貸せば雷電の剣になる。」
「…」
満足そうな表情を浮かべ、優雅に寝転ぶリヒト。
「お前…頭いかれてんのか…背中痛いんですけど。」
「え?あぁ、それはすまないことをし…」
ーー瞬間、何かが破壊されるような音が聞こえた。
「…」
「…」
少しヒリヒリする背中をさするニーナと、頭の上にできた大きなコブをさするリヒト。
「これでおあいこね。」
「…あぁ…わかった…」
「で?」
「ん?」
「2人はどこに行ったの?」
「…」
「龍の島だ」とリヒトは呟く。
「龍の島?」
「信じてないって顔をしているぞ、だから俺はいずれわかると言ったんだ。」
「イヤイヤ!?そこまで言われたら気になるでしょうが!!」
「いずれわかることだ、気にする事はないだろ」
「気にするっての!?」
「…そうか。それはすまない」
「なんだそれ、だったら今後深み持たせる言い方禁止ね?なんか、鼻につくし。」
「鼻につく…そうか…わかった。」
「…」
「…」
少しの沈黙ののち、ニーナとリヒトは互いを見つめケラケラと笑い合った。
「ねぇ、リヒト」
「どうした。」
「露台に行ってくる。」
「何故?」
「…2人を外で待ってる」
「そうか…わかった。」
「うん」
「なら俺も行こう。」
「えぇ?いいよ!大丈夫!」
ニーナはリヒトにそう告げると、広間を後にし露台へと向かったのだった。
露台:テラスやバルコニー




