見覚えのある顔
龍の島を目指し、旅を始めたモア達。
彼らはそこである青年と出会うことになるーー
王宮を出る前にロベルトに言われた龍の島についての逸話をきいたモア達は体を休めた後王宮を出て、次なる英傑を探しに出る。
ーー龍の島についての逸話とはなにか。
それはホアンクルム王国の離れた島に、誰も入ることは許されない神聖な龍が祀られていると言うものだった。
その龍が謎の青年が言った「癒しき龍」の正体の可能性が高いと言うことだったため、そこへと向かうモア達。
ホアンクルムの龍の島が見えると言う最東部の浜辺まで向かい、目を凝らすバルド。
しかし、いくら目を凝らせどそれは見えなかったのである。
「見えねぇな」
「んー…そうだね…」
「海を渡っていくんだよきっと。」
「よーし!行ってみようぜ!きっとその龍も英傑と勇者だってわかったらいれてくれるだろうからな?」
「たしかに!それもそうだねシンちゃん、行ってみよう!」
「おい、そんな簡単にいけると思うなよおめぇら!!逸話にもなるくらいだぞ、そんな簡単な話じゃあるめぇ」
「バルドの話、あの子達聞いてないわよ」
「チッ…」
「てめぇら!!!!」とバルドは声をかけるも、余裕綽々なシンとモアはどこから見つけたかわからない筏に乗り込み、島へと向かい始めた。
ーーしかし、シン、モアの予想は外れ、その島に近づくに連れて自分達を拒絶するように降る雨、波によって船が転覆し、バルドがいなかったらあわや大惨事になるところだったのである。
バルドに抱えられた3人は、元いた浜辺とは別の浜辺に流れ着く。
「おら…大丈夫かおめぇら…」
「へっくし…!!!」
「…ったく…」
浜辺に落ちている木屑を拾い、火を灯すバルド。
「炎の英傑…がいりゃあ一瞬なんだがな。」
「バルド…ありがとな…」
「…気にすんな。」
「こうなることはわかっていた。」とバルドは告げる。
「わかってたなら止めなさいよ」
「テメェらが話し聞かねぇからだろうが!!!」
「何よ人のせいにして!!!」
「うっせぇ!オメェのせいだろ!!!風でも起こして嵐くらい沈めろよ!!!」
「うるさいわね!!!だったら自分も荒波抑えなさいよ!!!」
「おいおい喧嘩すんなよお前らー…」
「…」
バルドとフィルはいつものように言い合いする。
「…あれ…」
一方でモアはホアンクルム王国を旅していて、あることに気づいた。
「ねえみんな」
「ん?」
「…この国って…貧富の差が激しいよね…」
「…さっきの場所とは全然違うな。」
彼女達が流れ着いた地は、ホアンクルム王国において最も貧しい街だったのである。
暖をとるモア達を、住人達の空虚な瞳が見つめていた。
「みんなガリガリだな。」
「こっち見てる…」
「俺らみたいな新参者は金目のものを持ってると思われて、襲われやすい。気をつけろ。」
「お!流石元賊!いうことがちがうな!!」
「言うな!!!否定できねぇんだよ!!」
「てめぇらも!!!見せもんじゃねぇぞ!!!」と怒鳴り散らかしたバルドによって、こちらを見ていた住人達は皆逃げ帰っていってしまう。
「ちょっとちょっと…あれ…?」
布が擦り切れ、ほぼ裸の状態の人々が多い中で一際目立つ人物を見つけたモア。
「…あれ…あの人」
「どうしたの?モアちゃん」
「…」
その青年は、見覚えのある外套を着ていた。
「…ありゃあ…ニーナと同じ制服…北国のやつか。」
「…どこ行くんだろう…?」
その人物は道の舗装されていない森に入っていったのである。
モア達は目を凝らしてその人物を見つめていると。
ーーその人物の胸元が光を放っていることに気づいたのである。
「おい、彼奴も俺らと同じで光ってるぞ」
「行ってみよう!!」
モア達は、その光を持つ英傑らしき人物を追いかけて行ったのだった。
ーーーーーーー
ーーーーーーー
その人物は、ユアだったのである。
「…」
彼は石碑に書かれた文字を見つめていた。
ここへ導かれし者。
例えどんな闇に苛まれようと、勇者の光の加護を受け続ける。
それが苦痛だったとしても。
「…うっ…」
ユアはひどい頭痛に襲われた。
そして聞こえてくる、自分に命乞いをする人々の声。
"助けて"
"やめて…そんなことしないで!!!"
「…頭が…痛い…っ…」
酷い頭痛に襲われ、視界が歪み吐き気がする。
「やめて…くれ…っ…くそ…まただ、また何かに心を…っ…奪われてしまう…っ…」
意識が朦朧としてきたユアはその場にうずくまった。
沢山の声の中で聞こえてきたのは、決まって同じ声。
ーー自分を憎む声だった。
"どうしてあの人を殺したの!!!!!"
"あんたが死ねばよかったのよ…"
"殺してやる…"
「…っ…どうして…そんなこと言うの…っ…」
「お母…さん…っ…」と呟いたユア。
息もできなくなるほどの激痛に耐えられず、意識を手放そうとしたその時。
ユアの視界に、眩い光が差し込んだのである。
「…」
「大丈夫ですか!?」
「…え?」
「お、おい…!?顔面蒼白だぞお前!?背負ってやるから!!もう少し日当たりのいい場所に行こうぜ!!!」
「…はぁ…そう…か…っ…この光を…私は知っている…」
「え?」
ユアは瞳を閉じ、ニーナの光を思い出した。
「…勇者様…ですか…?」
「ええ、そうです!」
「…」
バルドは、石碑をじっと見ていた。
「とりあえず見晴らしのいいところに行こうぜ!!」
「申し訳…ありません…」
「…」
シンはユアを背負い、彼を連れ深い森を出て行った。




