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ホアンクルム王宮へ一時帰還

【登場人物】

フィリクス・ホアンクルム

ホアンクルム国王。少し頼りないがとても優しく、モアやシン達を受け入れる器の広さがある。


ロベルト

国王の側近。風の谷出身でフィルの従兄弟ということが判明。


巫女

突如現れる青年を知っている様子。

ベルゼウで突如現れた青年から言われた通り、モア達は英傑を探していた。

ーーしかし有力な情報は得られず数日飲まず食わずで探し回っていたため、一行は疲れ果てていた。



「つ…疲れた…」

「流石に疲れたな。」

「…」



進み続けるモアが心配になるシン。

彼は、夜な夜なモアが1人、弓矢の練習をしていることを知っていたのである。



「モアー…ねぇ少し休もう?」

「でもお金がなくて…」

「…あ。」



その言葉で、あることを思い出したシン。



「なぁ、モア。」

「はい…なんですかシンちゃん」

「思い出した…王様んとこ戻ろうぜ?飯食いに」

「は?」

「え?」



その言葉に、バルドとフィルは耳を疑った。



「…お前何言ってんだ!?暑さで頭やられたのか!?」

「そうだよシン!?なんてこと…」

「…あ、そうじゃん!!王様のところに戻ろう!」



「「えっ?????」」



モアの言葉にも耳を疑う2人。



「いやね!?そうだよ思い出した!!いつでも戻ってきていいって言われたんだよ!」



「「なぜ。」」



「シンちゃん流石じゃん!!戻りましょ!!!!」

「よーし!いくぞお前ら!」

「…」

「…」



普段の景気のいい掛け声が聞こえてこなかったため、シンは振り返る。



「あれ…お前らどうした?」

「いや…」

「処刑されない…?」


「されないよ?だって王様がいつでも帰ってきてって言ってたんだもん」



「「…」」



バルドとフィルは、いつもぶっ飛んでる発言をする二人に手を焼いていた。

そのため今回もそのぶっ飛んでる発言だと思っていたのである。


ーー王宮で手厚い支援を受けるまでは。



「…」

「…」


「やぁやぁ!なんだよー二人とも仲間ができたなら僕に紹介してくれてもよかったのにぃ」


「いやー色々あってさー!王様だって暇じゃないじゃないすかー!」


「まぁねー、外を散歩したりロベちゃんから逃げたり…」

「王様仕事してない!!!!」



王と友達のように話す二人を見て、冷や汗をかくバルドとフィル。

すると、王であるフィリクスが2人の肩に腕を回した。



「バルちゃんとフィルちんだねぇ、モアたそ、着々と仲間を見つけて素晴らしいですなぁ!!」


「は、はぁ…」

「どーも…」

「というかフィルちん!!」

「は、はい…?」

「君、ロベちゃんと似た血筋を感じるのだけれど?」

「ロベちゃん…?ロベルト兄様のこと…ですか?」

「そう!!!」


「ロベルト兄様は私の従兄弟です、あ!そういえば頼りない王様に仕えるって言ってたっけ…!!」



「おい…」と、バルドはフィルの頭を叩く。



「いったいわね!?なによ!?」

「その頼りねぇ王様ってのがこの王様なんじゃねぇのか。」

「はっ…」

「とほほ…まぁ頼りないのは事実ですがね…っ…」

「フィルちゃん、ロベルトさんと従兄弟なんだ!?」


「そう!強くてかっこいい!風の谷では憧れの的だよ!あたしも兄様みたいになりたくて頑張ってるんだから!」



「怒るとすーごい怖いけどねぇ」と笑うフィル。



「へぇ…!?そうなんだ…」

「確かに似てるよな…ちょっと無鉄砲なとことか…」


「た、たしかに…ロベルトさんも結構考古学のこととかになると風のように現れたりするもんね…」



モアとシンは2人で深く頷いていた。



「あ!そういや…ロベルトさん!!水の英傑の書物解読してくれ…」



「ませんか」と言い切る前に風のようにやってきたロベルト。



「うおぉ…ロ、ロベルトさん…」

「お呼びですか、シン様。」


「あぁ、はいお呼びです…バルドが持ってたこの書物を…解読して下さい…」


「勿論…バルド様、預かってもよろしいのですか。」

「あ?あぁ…構わねぇよ。」


「ちょっと…!ロベルト兄様にそんな口の聞き方しないでくれる!?」


「うるせぇな、んなもんてめぇだけが口調に気をつけてりゃいいだけだろ。」


「はぁ!?ふざけないでよ!!ロベルト兄様からもなんとか言ってやってよ!?」


「フィル」

「へ?」

「口調に気をつけるのはお前も同じですよ。」

「なっ…!?」



「はい…ごめんなさい…」と呟くフィルに驚く3人。



「おいおい…あいつ素直に謝ったぜ…?」

「怒ったらめちゃくちゃ怖いんだって…」

「マジかよ…!?」



そんな様子を見ていた巫女の女性はモアに声をかける。



「はい、巫女様」

「其方の一連の行動を私は見ていた。つらかったな。」

「…」



モアは家族全員を失ってしまった。

しかし「ここで立ち止まるわけにはいかない」と自分自身を強く鼓舞したモア。



「…いえ、仕方がありません。自分が強くなるための…試練だと思っています。」


「…仕方なくなんかねぇよ。」



そう、怒りを露わにしたのはバルドだった。



「家族が死んじまってんだ…仕方ねぇで終わらせんな。もっとも…俺は…あいつをゆるせねぇがな…」


「バルド君…ニーナはやってないよ…!!あんなこと…できる人じゃない…」


「手を下してなくても…あの金髪の男に指示してたのは事実だろ。あの時…俺はあいつについて行こうとしてた。だか彼奴はそれを断った。そのうちに先回りして殺してたんだろ。」


「そんな…憶測だけで…」


「憶測なんかじゃねぇ。現に彼奴は否定しなかった。それが答えだ。」


「やめろよ…バルド」

「シンだってそう思うだろ!!!」

「俺は…!!!」



バルドの言葉に、モアは目を見張った。



「…嘘…シンちゃんも信じてくれないの…?」


「…悪い…っ…信じたいって思う、けど…俺はお前みたいに信じきれてない部分がある」


「あの子はそう言うことする子だよ!!だって…盗賊を殺してたんだから!!どんなに悪くても…人を殺しちゃいけないのに!!!」



「私が悪いんだって!!!!」

と、モアが声を張り上げると辺りは静まり返ってしまった。



「モア様…落ち着いて下さい。」

「…っ…」


「わかってもらうためには…落ち着いて話すことが大切でございます」



ロベルトがモアにそう告げた。



「はい…」

「…」


「私が悪い…盗賊に村が襲われた時だって…私はあの子を抱きしめることしかできなかった…あの子は私の説得より、ニーナがしたことを喜んでいた…」


「それは…」


「私は何も間違えたことは言っていない。でも…当事者の気持ちになって考えてみないと…わからないことだって…」


「当事者になって…それでもおめぇは人を殺したくないと思ってるじゃねぇか。」


「…っ…」

「あいつを殺したいと思わねぇってのか。」

「だからニーナはやってないって…!!」

「なら、やってたらどうなんだ。」

「…っ」

「おい、バルド…やめろよそんなこというの…」

「…っ…やってたら…」



「やっぱり恨まれても仕方ないことをしたんだなって…思うよ…」とモアは告げた。



「私はニーナに救われた…救われたからこうしてここにいて、みんなのような素敵な仲間に出会えた…」


「でも、ニーナは辛い思いをずっとしていた…私を庇ったばかりに…」


「モア…」


「それはあいつが自分の意思でやったこと…モアが気に病む必要なんて何もないでしょ…?」


「ニーナはもしかしたら…」

「…」


「…お母さんから…弟達を守ろうとしていたのかもしれないの。」


「…は?」

「どういうことだよ、モア…」

「まだ確証はない…だから確証が持てたらいう…」


「確証って…!!!どんな確証があってあいつはあんたのお母さんを殺すわけ!?」


「フィル…!!!」

「…っ…」



「…少し…風に当たってきます…」

モアは立ち上がり、そう呟いた。



「かしこまりました。」



ロベルトはモアを連れ、王宮の中庭へとを出て行こうとした。

すると突然強い風が王宮に入り込んだのである。



「…よっと…おお、こんな所にいたか。」

そう言った人物に、4人は驚きを隠せなかった。



「あ、貴方様は…」

「ホアンクルムの国王よ。」

「は、はい!私が国王でございますが…」

「随分と気の弱そうな男だな。」


「いやはや…否定できないところが正直なところでございます」



「主、は…まさか…」と女性は目を見張る。



「国王、お前に折り合って頼みがある。」

「は、はい?」


「俺は勇者、そして英傑達に話がある。その巫女や従者と共に、席を外してくれないか。」


「え!?でも国王なんだけど、僕…」


「まぁ…聞かれて困る話ではない、聞きたいならその場にいて構わないが。」



バルドは「なんでこいつはこんな大柄な態度なんだよ。」と呟く。


女性はその青年を見つめるとフィリクスの腕を掴む。



「王よ、行くぞ。」

「え!?巫女たま!?あの子誰!?巫女たまー!」



そう言って、俗に言う「部外者」を外に出し彼らと対峙する。



「…てめぇ!!!なんでここにいやがんだ?」

「お前らを追いかけてきたのではないか。」


「おめぇがゼルセウの国民見ててくれるって言ったから俺たちはあんたに任せたんだぞ…っ…」



バルドはマイペースな青年を見つめ顔に青筋を立てる。



「騒がしいやつらだなぁ…己が一人で、あんな大人数の人間を守るわけがないだろう。」



「「はぁ!?」」



「貴様らは俺を神とでも謳うか。愚か者共」

どこか人を見下すような言い方をするその青年に、バルドは殴りかかりそうになるも、シンが抑える。



「どーどーどー!バルド…!一旦落ち着けよ!」

「…あの、どうして…私たちを…」

「3つの神器の話をするのを忘れていてな。」



「それならもう知ってるわ」とバルドは告げる。



「…それぞれの神器を授けられし勇者の心に必要なものが何かと言うことは知っているのか?」


「それは…」



モアはバルドの肩に手を置き微笑む。



「モア…」

「ここは私に任せて…?」

「…あぁ、わかった…」



バルドはモアの後ろに下がる。




「知らないです、どうか私に教えてください。」

「よかろう。勇者よ。」



彼が言った、神器を授けられし勇者達に必要な心。



一つは、闇に寄り添い、全てを受容する心


一つは、揺るがぬ信念を持つ心


一つは、不屈なる覚悟を持つ心



「勇者達は心が強い。しかしその強さに縋りつづければ、忽ち崩れてしまう。強さを持つ者は、崩れるのもまた一瞬なのだ。」


「…」


「勇者の心が崩れぬように、支え続けるのが英傑の務めである。しかしそれを阻害する者もいる。」


「…」


「だったら…人を殺した彼奴はもう勇者を剥奪させろよ!!!!」


「…」


「モアの大切な家族を…奪ったのよ!?あんた!!!全部見てたんだったら剣の勇者をに報いを受けさせなさいよ!!!」


「黙れ。」



その気迫に、彼らは言葉を失った。



「黙れだぁ…?」

「…」

「てめぇ…いい加減にしねぇと…」

「お、おいバルド…!!!」



「やめろって…!!」とシンはバルドを止める。



「申し訳ありません!!彼らは少し頭に血が昇りやすく…どうかお許しください…!!」



そう言って、モアは何度も頭を下げる。



「…そうか…お前達は…手放しで主人を信じることをしないと言うことだな。」



青年はどこか悲しげに、どこか安心したように目を細める。



「…」

「なにわけわかんねぇこといってんだ!!!」

「モア。」

「は、はい…?」


「…お前は闇を浄化するという力がある。この世には…沢山の闇が存在する…それを見極め、浄化していけ。」


「…」


「そうすれば自ずと剣を持つ奴にも巡り合えるはずだ。」


「…あの、貴方は…もしかして…」

「…」



彼は、指笛を鳴らした。

すると王宮の外に舞い降りた見たこともないほどに大きい鳥が舞い降りてくる。



「見たものが全てではないと言うことを学ぶいい機会になるだろう。」


「なに?」

「…」


「自分の決めた行動に後悔はするな。その後悔の念は…のちに響いてくる。」



どこか嘆いてるようなそんな言葉に、モアは強く拳を握り締めたのだった。


ーー颯爽と青年が帰ったころ、扉の向こうでは申し訳なさげにモア達を見つめるフィリクスがいた。



「…」

「モアたそぉ?」

「はっ!!!!」

「彼…かえった?」

「あ!!はい!!帰りました!!」


「なんだかこの間よりなんだか風格が出てるじゃんよ?モアたそ?」



そう言ってモアの肩を叩くフィリクス。



「えへへ?そうですか?」


「うむ、無理せず英傑、そして神器探しをしておくれ」


「ありがとうございます…」



「「…」」



明らかに怒りを抑えながら出された食事を無言で平らげるバルドとフィル。

そんな2人を見つめ苦笑するモアとシン。


すると、フィリクスが口を開いたのである。



「巫女たまから詳細は聞いた、とても辛いことがあったんだってね」


「…」


「僕をモアたその第二のお父さんだと思ってくれていいし、なんならロベちゃんもお兄ちゃんだと思ってくれていい」


「…え?」


「君は一人じゃない、孤独に苛まれる必要はないんだからね」


「…ありがとう…ございます…」



フィリクスの言葉に涙が込み上げるモア。



「モア様、辛くなったら此方にお戻り下さい。我々はいつでも貴方方をお待ちしております。」


「美味しいご飯を作って待ってますよ!」


「ありがとうございます…二人とも…なんだか元気が出てきました!」


「うむ。よかったよかった!さぁ気を取り直してたくさん食べなさんな!君たちのために極上の料理を提供いたしますぞぉー」


「数日ぶりの食事!!平らげますぞおお!!」

「その粋じゃー!」



優しい王国の人々の優しさに触れ、モアの心は安らぎを取り戻したのだった。

モアの力:闇を浄化するというもの。

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