↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
39/63

目を覚ました英傑

剣に呑まれそうになっていくニーナ。

そんなニーナを止めようとリヒト、ルークそして、ある人物がついに動き出す。

ニーナが向けた剣は、アルヴィスの心臓を貫くことはなかったのである。



「…」

「ニーナ…」

「…」

「やめるんだ…ニーナ。」

「…」



ニーナにそう語りかけたのはリヒトだった。

ルークはニーナが掴むグリップごと彼女の手を握る。



「…ニーナ…目を覚まして…君の純粋な思いが悪い形になって剣が反応してしまっている…」


「やめろニーナ。自分を見失うな。お前がしたことは間違えていなかったんだ…だから自分を責めるな…」



リヒトとルークの問いかけに瞳の奥で、葛藤を滲ませるニーナ。



「守らなきゃ…いけないんだ…皆を…」

「…ニーナ…!!!目を覚ませ!!」

「“いっそ世界ごと…変えてしまおうか…“」



ニーナならざる者が、ニーナの心を支配していた。



「ニーナ…っ…」



ルークはニーナを抱きしめた。

ルークの温かさに包まれたニーナはなんとか自我を保とうと、せめぎ合う。



「ニーナ…目を覚まして…お願いだから…」

「…」


「君は救うべき命を救ったんだ…だからもうこれ以上…自分を責めちゃいけない…っ…」


「…でも…っ…でも私は友達の…家族を…っ…」



ニーナの悲痛な叫びを聞きリヒトはきつく瞳を閉じる。



「私は殺し…」

 

「ニーナだから子供達を救えたんだ…ニーナじゃなかったらきっと…誰も救えないまま、助かるはずだった命も助からなかった…」



「だから闇に呑まれちゃいけない…」

まるで、泣き喚く子供をあやす様に、優しく、ゆっくりとニーナに言葉をかけるルーク。



「…」



ニーナは大粒の涙をこぼした。

黒く怪しく光っていた剣は元の色へと姿を変える。



「…」



ーーすると、ある人物が姿を現したのだ。

その人物の登場に、リヒトは目を見開く。



「お前…」

「…」

「…目が覚めたのか…」

「…えぇ…」



「なんとか戻ってこれました…」

そう言って穏やかに微笑む、その人物。

以前の様な殺伐とした瞳をしていない彼は、ルークに抱きしめられているニーナの元に跪いた。



「…どうか…どうか…今度こそは…貴方の心をお救いしたいのです…」



涙を流すニーナの手を、自分の頬に添える。



「貴方を師として慕い…心服致します…我勇者様…」

「…お…前…っ…」



ニーナはその青年の笑顔を最後に意識を失った。



「…」



リヒトは安堵し、アルヴィスの元へ向かう。

彼は、まるで何かを思い出したかのように頭を抱えていた。



「…」



「…団長、傷の手当てを…」

そう言って差し出したリヒトの手を、アルヴィスは払いのける。



「…要らぬ。」

「…」


「お前達の服従する心には頭が上がらん…ニーナを連れさっさと部屋を出ろ。」


「御意。」



ルークはニーナを抱きかかえ、リヒトともう1人の青年と共に部屋を後にしたのだった。



ーーーーーーーー



ーーーーーーーー



目を覚ますと、暗い場所に佇んでいることに気づいたニーナ。



「あれ…ルーク…?リヒト…?」



そこにはルークやリヒトはおらず、ニーナは慌ててその場から去ろうと歩き出す。



「…ここは…」

その場所は、モアを助けた際吸い込まれたあの場所に似ていた。



「…」



以前と違うのは巨大な蜘蛛の姿はなく、たくさんの死体が転がっていることである。


握られている、眩い光を放ったその剣で奪った命達。

その中にはモアの母ルェンの姿も。



「…っ…」



『勇者よ…剣の勇者…ニーナよ』



「…誰…」



周囲には自分と話せるような姿をした者はいなかった。

ふと、己の握る剣をニーナは見つめた。



「剣…お前…なのか…私に話しかけてるのはお前か…?」



「そんなわけないか…」と瞳を閉じるニーナ。



「守れる力が欲しいか」と言う頭の奥で響く言葉に力無く頷く。



「欲しい…誰も傷つけたくない…失わせたくない…っ…誰も失いたくない…っ…」


ーー『救いたいか』

「救いたい…」

ーー『失いたくないか』


「だからそう言ってるって…!!!!!強くならなきゃ…もっと強く、ならなきゃ…団長の言った通り私は誰も救えない…っ…」


『お前の思いが剣に乗る、そしてそれは力になるのだ。ニーナ。』


「え…?」

『お前が強く願えば、思えば…力になる…』



「全てを守る為に、世界ごと闇を消し去ることができる。」と響き渡る声。



「違う…それは救ったことにはならない…でも…そうすれば…誰も傷つかないことは確かだ…」



「苦しむのは…傷つくのは私だけでいいから…っ…目の前の命を救える力が欲しい…っ…」と、膝から崩れ落ち涙を流すニーナ。



『これを受け取るが良い。』と言う声が響き渡り、顔を上げると目の前に血に塗れた短剣が姿を表したのである。



「…要らない…もう剣は…いらない」

「…」



朧げな景色を見つめていたニーナ。

そんな彼女の前に現れたのは以前見たことのある人物だった。



「…」



その人物は俯いていて、どこか酷く傷ついているように見える。



「どうして…人は同じ過ちを繰り返すのだ…っ…」

その人物の横には自分と同じ剣が置かれていたため、ニーナは目を見張った。



「…誰…?ねぇ、前も会ったよね…?確か…私が変な蜘蛛みたいなやつに吸い込まれてすぐに…その時は貴方の言葉が読み取れなかったんだよ…」


「…」

「貴方は誰?」

「…」



「…ただ…静かに暮らしていたかった…」と言う消え入りそうな声が確かに聞こえた。



「…え?」


『命を奪い合うことのない、戦のない世の中で…大切な人たちと生きていたかった…』


「…え…?」


『愛する者に…ただ愛していると…ただ愛して欲しいと言いたかった…』



「剣の勇者を知る全ての者に…自分を認めて欲しかった…」その声はどんどん小さくなっていく。


憔悴しきっているその人物に、ゆっくり近づいていくニーナ。



ーーすると



「ニーナ!!!!」

「…え?」


「そっちへ行ってはダメ!!!お願い!!!戻ってきて!!!」


「え?なにが…?」



モアに似た声が聞こえ、振り返ると同時に彼女は清い光に胸を射抜かれた気がした。



「…なんだこれ…」



その光はとても温かく、何かを思い出すかのような感覚に襲われる。



「温かい…涙が出てくるくらいに…温かい…」



ニーナは白い光に包まれながら、静かにその濡れた瞳を閉じたのだった。

【登場人物】

ユア:ユアンの元の人格

挿絵(By みてみん)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。