帰還
ニーナと離れてしまったレイナ達。
ニーナの光を感じなんとか彼女に会おうとやっとのことで鉄格子を破壊することができたレイナ達だったが、その再会はとても悲しいものであった。
【登場人物】
レイナ
ルーク
リヒト
ユアン
地下の牢屋で、身動きの取れない状態が続いていたリヒトとレイナ、そしてルーク。
「ルーク…っ…なんとか…ならないの…」
「…っ…すみません…この鍵が…なかなか…」
「くそ…っ…」
すると、先ほどの胸の痛みが嘘のように消えたのである。
「あれ…っ…瘴気の痛みが消えた…」
「ニーナが…戻ってきたのか…っ…」
そのとき、外との空気が一切漏れることのないこの地下牢に風が吹く。
「…っ…」
「ルーク?どうしたの?」
「…もしかして…勇者様の元にいる分身を戻したのか…」
「はっ…」
「ちょっと…何!?ルーク!!!!!」
「ユアン君は…団長は…ニーナの心を傷つけたんだ…っ…」
「なに…」
「…っ…」
瞬間、レイナはびくともしなかったはずの鉄格子を蹴り捨てた。
「早く…ニーナのところに…」
「急いで!!!」とレイナは声を上げた。
「…っ…行くぞ…ルーク!!!」
「はい…!!!!」
「…遅い!!!!」
「…うおっ…!?」
ルークとリヒトという大男2人を抱えあげたレイナは天井を蹴破り、飛び立ったのだった。
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城の床や天井を破壊し、ニーナの気配のする広間へと戻ってきたレイナ達。
「ニーナ!!!!!」
「…」
「…っ…」
「…」
3人はニーナを見つめ言葉を失った。
血に塗れた顔。
虚な表情。
穢れきった魂。
変わり果てたニーナの姿がそこにはあった。
「…ニー…ナ…」
「…」
「団長がお待ちだ…、行ってこいよ…勇者様…」
そう言ってユアンはニーナの背中を蹴り飛ばした。
「ニーナ…」
「動くなルーク…」
「…っ…」
「…」
瞬きも忘れ、ニーナはふらふらとした足取りでアルヴィスの元へと向かっていった。
張り詰めた空気が流れる。
ーーそんななか、リヒトの足跡が響き渡った。
「…」
「おい…!!!!」
リヒトはユアンの胸ぐらを掴み上げる。
「お前…ニーナに何をしたんだ…」
「ヘヘ…っ…おいおい…落ち着けよ…」
「…」
レイナはユアンを見つめつぶやく。
「貴方も…傷ついてるんだね」と。
その言葉に、ユアンは眉を顰めた。
「…は?俺が傷つくことは何もねぇよ。」
「心が泣いてるよ、本当の貴方の心が。」
「うるせぇ…黙れ。」
「やめてくれ、もう傷つけないでくれ、なんでそんなことするんだ…ってね。」
「うるせぇな!!!!!」と彼は剣を取り出した。
「でも悲しいね、戻ったら彼…貴方がしたこと全部思い出せなくなっちゃうんだもの。」
「黙れレイナァ!!!」
「…」
「…っ…次…その口開いたらぁ…殺すぞ…」
レイナは一歩、また一歩とユアンに近づいていく。
「貴方は私を殺せないよ。」
彼女は迷いなくユアンにそう告げた。
「…っ…」
「わかってるんでしょ?貴方も。」
「まさかお前…記憶が戻っているのか…?」
「だったらなんでニーナを傷つけるようなことをしたんだ!!!」とリヒトは声を上げる。
「うるせぇ!!!!」
「貴方の記憶が」
「…っ…」
「貴方の記憶は確か…彼女を慕ってたことを覚えているんでしょ?今の貴方がそれを受け入れられないだけでね。」
「うるせぇ…黙れ!!!殺すぞ!!!」
「私は知ってるよ…大昔…勇者様達が亡くなって…闇に堕ちた貴方の前世の名はヒュースト。」
「…っ…」
「彼はすごく優しかった。貴方は時々それを思い出しては苦痛に顔を歪めている…」
「思い出すたびに消し去ったはずの人格が戻りたいと言っているから。」
そう言ったレイナに、ユアンは双剣を向けた。
「…っ…黙れ!!!それ以上…それ以上話したらお前を殺す!!!俺にはできねぇって…?笑わせんなよ…?俺はぁ…あいつらの故郷をめちゃくちゃにして…奴らの家族をぶっ殺した野郎だぜ!!!!!」
「…っ…」
「…」
その言葉にリヒトは憤慨する。
「お前…何やってるんだ!!!!!!」
「リヒト君…!!!」
怒りを露わにするリヒトをルークは止める。
「ヘヘ…っ…へへへ…あいつの嘆き悲しむ姿はぁ…いいもんだったぜぇ…はぁ…傷つけてぇなぁ…もっと…苦痛に喘いでくれねぇかなぁ…!!!!」
「…っ!!」
そのとき、レイナの平手打ちがユアンの頬を捉え乾いた音が鳴り響いたのである。
「…」
「悲しいね…ユアン君…苦しいね。」
「…っ…」
「でもね…残念…っ…ニーナはこれっぽっちも…貴方のことなんか考えてないよ…っ…」
レイナはあの一瞬で、ニーナの心を読み取りことの次第を察したのである。
知っているからこそ、レイナは涙を流していた。
「貴方の過ちを背負って…大切な人を殺して…仲間達にさえ信じてもらえずに責められたその深い悲しみの中にいるニーナが…っ…」
「貴方のことなんか考える余裕なんてないよ。」とユアンに告げた。
「うるさい…黙れ!!!!だまれぇ!!!!」
「貴方はやめてって言ってもやめないでしょ。だったら私だって黙らない。貴方は勇者様を傷つけたの、それは一生消えない大きな罪となって貴方を苦しめる。」
「うるせえって…言ってんだろ!!!!」
ユアンは双剣を振り翳した。
しかし、レイナは軽々とした身のこなしで彼の攻撃を避ける。
「どうする?戦う?私が強いの…貴方はよく知ってるでしょ?」
「…ちっ…!!!!」
「2人とも…!!!やめてください!!!」
「お前ら…もうやめろ」
リヒトとルークでユアンを抑える。
「俺は…過去になど縛られない。」
「彼女の故郷の人たちを傷つけてた時…貴方は酷い頭痛に襲われていたんじゃないの?」
「…うるせぇよ…」
「…」
ユアンは双剣の片方をレイナに投げつける。
「剣持てよ…レイナ…!!遊んでやるから。」
「私たち英傑はお互いを傷つけちゃいけないの…でも…」
そう言ってレイナは穢れに塗れた双剣を手に取った。
「貴方は勇者様を傷つけたもんね…」
「うるせぇ!!!!俺は英傑なんかじゃねぇ!!!勝手な絵空事並べて、俺に良心を植え付けようとすんな!!!!」
「うるせぇんだよ…」と掠れたユアンの声が響き渡る。
「苦しいね…辛いねユアン君。」
「うるせぇよ!!!!!俺の心を…俺の心を読むな!!!」
「貴方に私は斬れないよ。」
「…」
そう言って、レイナはユアンの元へと双剣を投げつけ注意を逸らした。
瞬間、ユアンの鳩尾に拳を入れ彼を気絶させた。
「…」
「この双剣には勇者様の光が見える…そんな粗末な使い方をしてたら…ずっと勇者様を慕ってた貴方の中にある別の自分が…悲しんじゃう、悲しんで…もう戻れなくなってしまうよ。」
レイナはそう言ってユアンを抱き止めたのである。
「…ルーク…ユアン君をそこに寝かせておいて?
「わかりました…」
扉へと向かうレイナにリヒトが呼びかける。
「…あの人が呼んでるの!」
「…」
「ずっと逃げてばかりいたみたいだから…私は逃げないようにしないとね?」
「団長には内緒にしててね」
そう言ってレイナはリヒトにウィンクをすると、その場を後にしたのだった。




