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嫌な予感

【登場人物】

トウジ

モアの父親


マコちゃん

マコト。ニーナの父親。


※以降、残酷描写が含まれる表現がございますので苦手な方は無視してください。

ホアンクルムにある、貿易が行われている港。

その場所まで、行くため南下していたモア達。


ーー南へ進む毎に、カラッとした暑さが5人を襲う。

それは確かにベルゼウに向かっている証拠だった。



ベルゼウに向かう旅の中で、三人の英傑たちにはわかったことがあった。



「「…」」



それは旅がサクサク進むということである。



「ニーナー!みて!お花!」

「おーすごいすごい。」

「ちょっと!?」

「道迷うよそんな事してたら」

「あ!!見て!!」



「こっちに綺麗な花畑があるよ!」と足を進めようとするモアの首根っこを掴み引きずるニーナ。



「道草するな…旅が終わる頃にはみんなじじばばになってんぞ!?」


「そんな焦らなさんなニーナ。」

「じゃあここに置いて行くぞ。」

「ごめんなさい行きます。」



観念し、歩き始めたモアだが今度は自信満々に道を指定し歩きはじめようとしてくる。



「右は行くぞよ!!」

「違います真っ直ぐです。」

「えー?」

「じゃあ君だけ右行っていいよ。」

「ぐぬぬ…みんな!!右に行くわよ!」



「「…」」



3人は気まずそうにニーナの後ろに整列した。



「ちょっと!?裏切るのか!?」

「んー…モア…わかってるでしょ?」

「何が!?」


「い、いやあ…ほら?ニーナの行った道の方が正しい…って言う…さ??」


「おめぇらはっきり言え、モア。俺らはおめぇの方向音痴に付き合ってる暇はねぇ。」


「え。」

「ニーナに着いて行かせてもらうぜ。」



「早く行こうぜモアー!」とシンまでもがニーナについて行ったために、モアは地団駄を踏み始めた。



「なに!?!?みんな!!裏切り者ー!!!」

モアは駄々をこね、道端に座る。



「ニーナ…どうする?」

「…んー。」



ニーナは少し考え、閃いた。



「あ。モア〜!!」

「…なによ。」

「みて?あっちの街!いい匂いするよ!」

「え!!!本当!?」



「「…」」



「行きます!!着いていきますとも!!!貴方に着いて行かせてください友よ!!!」


「あいつ簡単だな。」

「ものすごく簡単ね。」

「おめぇらもあんな感じだろ」



「「バルドが言うな!!!!」」



「あ!?んだとてめぇら!!!ふざけんな!!俺はおめぇらとはちげぇんだよ!!」


「一緒だろ流石に!!」

「なんならバルド?あんたが一番単純よ!?」

「ふざけんなよコラァ!!!」

「まぁまぁ、みんな仲良くしなさんな」



三人は1日3回は言い合いをしている、最初は気になっていたニーナだったが、旅を続ける中で気にならなくなっていった。


そんな平和な空気が流れるニーナたちを、黒いフードを深く被っている人物が見つめていた。



「…見ー…つけた。」

そう言って、その人物は口元だけ上げる笑みを浮かべていたのだった。




ーーーーーーー



ホアンクルム王国最南端の船着場では魚市場が開かれていた。



「ぐ…さ、魚臭い…」

「モア、魚苦手なのか?」

「苦手じゃ無いけどちょっと…この匂いが…」

「まさかここからゼルセウに行くのか?」

「誰か使わない船があるかな〜ー」



そう言って、使えそうな船を物色していくニーナ。



「ゴホン…ニーナあのね?私たち教えられたことがあって…」


「ん?」


「ベルゼウに行こうとする人たちを拒絶するように、この穏やかな海が荒れちゃうんだって。」


「…でも私はベルゼウの民じゃん、国民を拒絶するようなことする神様じゃないでしょ」


「確かに!!!!そうじゃんそうじゃん!!!!じゃあひとまずさ!!!!外の国のお土産家族に買ってから行くからニーナは先に行っておばさんたちに会ってきなよ!」


「あぁ、わかった。」

「じゃあまたあとでな!ニーナ!!!!」

「うん、またね」



そう言って、誰も使っていない船を見つけたニーナはそれを器用に運んでいく。



「なぁニーナ。」

「ん?なにバルド?」

「…俺も着いていくぜ。」


「おお、ありがとう!でも大丈夫だよ!あの子、優柔不断だから遅くなると思うし…はっきり言ってくれるバルドが彼女には必要だからさ!」


「…そうか。わかった。」


「あー…モアに頼ると遭難するかもしれないからお前に伝えておこう」


「あ?」


「ここをずーっと真っ直ぐだからね?あのー…すっごい真っ黒な雲!!あれが道標だから、それを外れると遭難しちゃうから!!」



「まぁこれ、死んだ前の王様の受け売りだけど!」と船に乗り込むニーナ。



「おお、わかった。伝えとく。」

「んじゃ!また後でね!バルド!!」



そう言ってニーナはバルドに手を振り、ベルゼウへと出発した。



「…」



バルドは何か嫌な予感を感じていたのである。



「どうしたの?バルド?」

「フィルか…いや…なんか嫌な予感がしてよ。」

「え?」

「おい、モア!!!」

「ん?」

「ニーナを1人で行かせねぇ方がいいかもしれねぇ…」


「大丈夫だよ!ニーナ、お化けとかは怖がるけど、1人でどこかにいくのとか、血とか見るのは全然…」


「だめだ!!!」



バルドは大声を上げた。



「あ…いや…悪い…」

「ううん…」

「早く終わらせてあいつを追うぞ。」

「わかった!!」


「フィル。お前は使わなそうな船を探せ。シンはモアについてろ、探したのち、すぐにあいつを追うぞ!!」


「わかった!!」

「おう!!」



そう言って、船を探し始めたバルドとフィル。


その後彼らはニーナを追い、船を走らせたのだった。




ーーーーーーーー



ーーーーーーーー



モアが言っていた、荒れ狂う海とは真逆で国に導かれるように島へと向かうニーナ。


まるで他の国とは時間の流れが違うような気がする不思議な海路を進んでいく。



「…」



ーーーーー



次第に近づいてくる故郷。

ニーナは何処か様子がおかしいベルゼウをじっと見つめていた。



「なんだ…?」



いつもは音楽が聞こえてくるはずの港


しかし、彼女が近づけば近づくほどその賑やかさはなく、どこか不気味なほどに静かだった。



「…」



ひどく胸騒ぎがする。

そんな中で島へと上陸すると、島から悲鳴が聞こえてきた。



「…っ…」



船を降り駆け出したニーナは、島を左に進んだ先にある丘を登る。



「はっ…お、おじさん!!!!!」

「…」

「おじさん…おじさん!おじさん!!!!」



倒れていたのは、モアの父親トウジ。

あたりは彼の血で塗れてしまっていた。



「おじさん…どうしたの!?早く血を止め…っ…」

「…っ…ニィ…ナ…っ…」


「待って…おじさんすぐ…モア達も来るから!!誰に何をされたの!!!」



トウジはニーナの手を掴む。



「俺は…もう…助からない…っ…彼を…止めるんだ…っ…」

「彼…?誰のこと!?」


「…もっと…早く…お前達に…教えておかなければいけなかったんだ…っ…」


「え…?」

「俺は…お前達を…誇りに…思……」

「おじさん…おじさん!!!おじさん!!!!!?」



トウジは薄く瞳を開けたまま動かなくなってしまった。

途端に時の女性や子供達の声が聞こえ、ニーナは目を見張る。



「…この気配…っ…あいつだ…っ…」

そう言ってニーナはトウジを木にもたれかけさせると、剣を鞘から抜き取り、駆け出した。



「…っ…」



小さな丘を下った先にある、大きな集落に向かう途中悍ましい光景を目の当たりにする。



「…っ…」



ニーナは声を出すことができなかった。


そこには王や、近所の馴染みのもの達が吊るされたまま目を開いた状態で、こちらを見つめていたからである。



「…」



胸が嫌な音を立てて動くなか、震える足に鞭打ってニーナは走り出した。



「…」



古き良き美しい街並みは血にまみれ、美しさを失い、まるで地獄へ来たような感覚に襲われた。

村の男たちは首を切られ瞬殺されている。バラバラにされているものもいた。


ーー女子供の泣き声が聞こえてくる。


「痛い」「助けて」「こんな事しないで」


そんな言葉が聞こえてきた。



「…」



この傷付け方に、ニーナは見覚えがあった。



「おい!!どこにいるんだ!!おい!!!!」



「ユアン!!!!」と名前を叫ぶ。



「おい!!!誰か!!!いないか!!」



自分の家族の姿がない。目に見えぬほどにバラバラにされてしまったのだろうか。



「お父さん!!!!お母さん!!みんな!!どこ!!」

「ニィナ…!!!」

「おばさん!!!おじさん達も…大丈夫…!?」

「あたしらはここに隠れてたから…でもマコちゃん達が…」


「突然金色の髪をした男に襲われたんだ…っ…勇者様の命令だってな…っ…」


「ちっ…!!!!!」

「ニーナ!!!!」



ユアンは嘘を溢し、自身の手で島の人々を傷つけていたのである。



「許さない…っ…許さない!!!!!」



走って走って、走り続けたニーナ。

モアの家、そして隣に立ち並ぶ自分の家に辿り着いた時、その恐ろしい光景に彼女は目を見開き、言葉を失ってしまうのだった。

挿絵(By みてみん)

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