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別れてしまった光達

ニーナはハルカの命令で、ルノーピアへと向かうことになる。

ルーク達英傑と共に向かうと思っていたニーナだが、そこにいたのはアルヴィスだけだった。

「すぐに出立しろ」という命令が下ったため、ニーナは、急遽馬車へと向かう。



「あれ…?」



先ほどまで後ろに居たはずのルークの姿が見当たらなかったのである。



「…ルーク?あれ、ルーク?そういえば…扉の外に居たと思ってたのに…リヒト達もいなくなってたな…」



一抹の不安がよぎり、ニーナは踵を返し城内へと足を進めようとしていると、強い力で腕を引かれ慌ててその場を振り返る。



「…何をしている。」

「…団長…っ…」



自分を見つめるアルヴィスの瞳に恐怖心が拭えず、慌てて目を逸らすニーナ。



「どうした。」

「…あ、あの…ルーク達は?」

「…」


「リヒトとかレイナちゃんとか…あのいかれ野郎もいない…どこに行ったの?」


「…陛下はお前を遣わせた…他の者達は必要ない。」


「必要ないって…英傑だって伝説に残ってるなら連れて行ったほうが…」



アルヴィスはニーナの顎を掴み上げる。



「…っ…」

「英傑達は不要だ…私は今そう告げたはず…」

「…」

「貴様の立場で…私に指図するな…」

「…っ…」



「ごめん、なさい…っ…」と、きつく瞳を閉じたニーナ。



「…っ…」



アルヴィスはハッとしたようにニーナから手を離し、苦しそうに表情を歪める。



「馬車に…乗れ。」

「…はい…っ…」

「…」



涙を拭ったニーナは逃げるように馬車に乗り込んだ。



「はぁ…っ…」



アルヴィスは頭痛に苛まれ、頭を抑える。



「…っ…」



"お前は何も話してくれないだろ?私はお前のことが知りたい!!"


"お前は今、何を考えているの?"



その声がアルヴィスの頭を巡り、グシャリと自身の髪を掴む。



「…っ…何故今…こんな仕様もないことを思い出す…っ…彼奴が…似ているからなのか…?」



「馬鹿馬鹿しい…っ…」ときつく瞳を閉じるアルヴィス。



アルヴィスは「団長。」という兵士の声が聞こえ、現実に引き戻される。



「…出発だ。」



「「はっ!!!!」」



アルヴィスは馬に乗ると、ルノーピアまで馬車を走らせるのだった。



ーーーーーーー



ルーク達が姿を見せなかったのには理由があった。



ーーーーーーー



ルメイナ城地下深く。



「…ん…あ、あれ…っ…」



暗闇の中で目を覚ましたレイナ。

意識が混濁する中、耳鳴りが起こりそうになるほどの激しい金属音が聞こえて来る。



「くそ…っ…おい!!!誰かいないのか!!!ここを開けろ!!!!!!」


「…リヒト…ここは…?」


「恐らく地下の牢獄だ…くそ…っ…俺も先ほど目を覚ました…」


「…っ…」


「俺たちは背後から攻撃を受け、意識を失った…あの独特な金属の擦れる音は恐らくレイピアの音…」


「…まさか…」

「…くそ…っ…ニーナが危ない…!!!!!」



そう言って指を鳴らしたリヒトはその場に雷を放つ。

鋼鉄の鉄格子は一切の攻撃も受けていなかった。



「…ちっ…!!」



艶のある黒いリヒトの髪や瞳は雷を放つときだけその色を金に染めていた。



「団長は一体何をする気なの…っ…ふん!!!!」



鉄格子を広げようと力を入れるレイナだが、びくともしない。



「硬い…もう!!!硬い!!!!」


「この様子じゃ、ニーナはルノーピアに連れて行かれたはずだ…あの国の皇帝は勇者の伝説について調べていた…ニーナを殺そうとはしないはず…だがなぜ…俺たちを別々にしなきゃいけないんだ…」


「…そんなことはいい!!!早くここから出て…ニーナを守らなきゃ!!!!」


「…っ…」



すると、分厚い鉄の扉が音を立てながらゆっくりと開けられる。


ーー薄明かりでさえ眩しく見えるその中で見えたその人物。



「お前…っ…」

「…クク…ククク…っ…」



喉を鳴らしながら楽しそうにリヒトを見つめていたのはユアンだった。



「ユアン君…」


「そのいつも涼しそうな顔が…癪だったんでねぇ…お前らの大好きな主人さんを陥れたら一体…どんな表情になるのか見て見たかったんだぁ…っ…」


「…そんなもののためだけに…俺たちとニーナを離れさせたわけじゃないだろう…お前の…団長の目的はなんだ。」


「…」



ユアンは腕に抱えていたあるものを投げ捨てた。



「…っ…」



それは、全身傷だらけのルークの姿。



「ルーク…!!!!ルーク!!!!」

「…っ…」


「俺がつけた肩の傷は痛むかぁ?ルーク君よぉ…っ…」



ユアンはルークの肩を足で踏みつける。



「ぐっ…っ…」

「ユアン君!!!こんなことして…」

「うるせぇよ!!!!レイナ…テメェは黙ってろ!!!」

「…っ…」


「あの馬鹿女…お前がいなくなったことに気づいちゃいなかった…ククク…お前がどんなに慕おうと…お前らがどんなに勇者様と祭り上げてもぉ!!!」



「あの女はその期待に応えちゃくれねぇんだよ!!!」とユアンは笑いながら告げた。



「…ユアン君…君はいつか…己の行動に絶望し…苦しむ日が…必ず…っ…来る…」


「あぁ…?テメェ…ボコボコにされた身で…よくいうぜぇ…っ…ククク…ところでルーク君よぉ…」



ユアンはルークの髪を掴み上げ、無理やり座らせると、鉄格子に押し付ける



「ユアン君!!お願い!!そんなことしないで!!!本当の貴方はそんなことするような子じゃないでしょ!?」


「団長が言ってたんだぁ…お前の片割れを探せ…ってなぁ…?」


「は…はぁ…っ…はぁ…」


「ルーク…お前…片割れってなんだ…?そしてそいつぁ…どこにいるんだぁ…?」



ユアンの腕を掴む、ルーク。



「…っ…勇者様の…ところだ…団長も…君も…見つけられない…っ…遠くの地に…い…っ…る…」


「…」


「期待とか…そんなもので…勇者様を量ること自体が…愚かなんだよ…ユアン君…っ…それに…片割れ…なら…君の方が…よく知っているんじゃ…ないのか…っ…」


「何…?」


「ユアン君…貴方は…いや団長は何をしようとしてるの!?お願い!!貴方も英傑なら、こんなことしないで…貴方のためにも!!!!!」


「…あの執着野郎の考えはわからねぇが…恐らくは…」

「…」

「…」



「あいつの魂とやらを闇に落とそうとしているぜ…?」

そう言ってユアンはその場から去って行った。



「…ユアン…」

「…っ…く…」



ルークは肩を抑え、呻き声を上げた。



「ルーク!!ひとまず手当てをしなきゃ…!!ちょっと!リヒトなんか電気とか作れないの!?」


「無茶言うな…だが、少々電流は流れるが…それでもいいなら照らせる…」


「それでいい!!ルークも行ける!?」


「俺は…大丈夫…掠っただけ…ただ…っ…瘴気を…取り、込まれたから…っ…苦しい、だけ…だから…っ…」


「そっか…っ…」

「早く…弓の勇者様を見つけなければ…っ…」



リヒトは強く拳を握りしめる。



「…それってリヒトがただ会いたいだけでしょ?今はそんな呑気なこと言ってないでこの現状を打破することを…っ…」


「そう言うことを言っているわけではない…まだ、ニーナは気づいていないんだ、自分の勇者の力に…」


「えぇ!?リヒト!!貴方教えたんじゃないの!?」

「伝えようとしたら団長に遮られたんだ…!!」


「そっか…団長は是が非でもニーナを手に落としたいんだね…」


「早く…弓の勇者様を見つけないとニーナの魂が穢れ切ってしまう…穢れた魂であの剣を握ってはならないんだ…っ…だから早く…っ…く…っ…」



リヒトは胸を抑え蹲る。



「…リヒト…っ…ルーク…立って…お願い…早くここから出なきゃ…!!ニーナが…っ…」


「くっ…っ…そ…っ…瘴気が…っ…」

「…っ…」



誰もいない地下牢で、3人の英傑達は瘴気によって体を蝕まれてしまうのだった。


ルークの片割れ:ルーク自身が能力で作り出している分身のこと。


瘴気:闇に属する、勇者(弓の英傑)でなければ消し去ることのできない穢れた気。体内に入り込むと激しい痛みが身体に襲い、赤黒、紫色に痣が広がっていく。


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