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口悪!?登場、水の英傑暴君バルド

バルド

水の英傑。盗賊。

威圧的な雰囲気をまとい、周囲を圧倒する存在。言動には容赦がなく、初対面の相手にも臆することなく接する。

旅を始めた2人。

ーーしかし大問題が発生する。



「はぁー…」

「…」



森に入ってすぐ、貧困を装った山賊にロベルトから預かった金貨、そしておむすびを殆ど取られてしまったのである。



「ご、ごめんシンちゃん…」

「はぁ…人信じすぎなんだよ、お前…」

「こ、困ってるって言うからさ!?」

「僕なんて言いましたか!!」

「そいつらは山賊だ…と」


「そうだよね!?ちゃんと人を見ろ!?何が私は勇者ですから!だ!?今後!!ああ言うのをすぐ信じちゃいけません!!わかったな!!!」


「はい…」



「これは没収!俺が持ってる!!」と何とかモアの手に残った数枚の金貨を、シンは自分の装備に保管した。



「…」


「まぁ…怪我がなくてよかったよ。それが一番だろ?」


「…」



明らかに落ち込んでいるモア。

そんなモアを見たシンは、困ったやつに頭をかき何か打開策を練る。



「あ。」

「…え?」

「ちょっと待ってろよ?」



シンはそう言うと、軽々と木を登って行き果物を落とした。



「すごい…あんな高いところ…」

「よっと!!」

「うぁ!?足痛くないの!?」

「おう、これで元気出せよ?」

「シンちゃん…」

「…」



シンはモアの頭を撫で、果物の皮を剥いてあげた。



「食べていいの?」

「勿論、モアのために取ってきたんだよ」

「ありがとう…」



一口食べると、口の中に爽やかな甘さが広がりそれだけで幸せを感じたモア。

簡単に先程の失態による落ち込みを切り抜けたのである



「美味しい!シンちゃんも半分!」

「…はは、機嫌治ったみたいだな?」



「ありがとう」とシンは果物をモアから受け取った。



「方角こそは任せてよ!!!」


「おう!頼りにしてるよ!しっかしどうすっかなぁ…」


「んー…」

「…」



耳を覚ますと、木々が重なる音の他に水音が聞こえてくるのを感じたモア。



「水の音…」

「本当か?」



シンも耳を澄まし、それがどこにあるのか予測した。



「本当だ…あっちの方だな…ちょっと行ってみようぜ?」


「うん!!!」



森の深くに入っていく2人。

そんな彼らの影を、木の上から見つめている人物がいた。



「…ふぁーあ…ちっ…うるせぇな」



その人物は腰につけていたくないを2人の影に突き刺すと、彼らを追いかけ駆け出して行ったのだった。



ーーーーーーーー



泉を見つけたモアとシンは、木をかき分け、足を滑らせそうになりながらも何とか辿り着く。



「うっわ綺麗だなー…もうちょい近くに行ってみるか!モア、いけるか?」


「うん!大丈夫!」


「木が腐っちまってるところがあるな…苔も生えてる、足滑らせるなよ?」


「うん!わかっ…うが!!!!」

「馬鹿やろ!!!言ってる側から!!!」



大きな水音をあげ2人はその泉の中に落ちてしまう。



「ぶは!!!シンちゃん大丈夫!?」



しかし、待てど暮らせど上がってこなかったためもう一度泉に潜り、確認するとシンは白目を剥き、泉の深くまで沈んで行ってしまっていた。


モアはシンを引っ張り水面に顔を出す。



「…っ…」


「ぷはっ…!!シ、シンちゃん!?泳げないの!?ちょっとちょっと!!!はっ…そ、そういえばさっき…私何かを膝蹴りしたような…」



どうやら落ちた時にモアの膝がシンの頭を蹴りあげてしまい、気絶してしまっているようだ。



「やーん!!シンちゃん死なないで!!」

「…」

「お願い!!!シンちゃんってば!!!」



シンの頬を思い切り叩いたモア。

胸ぐらを掴み何度も彼を揺さぶる。



「シンちゃん!!シンちゃん!!!!」



すると、シンの胸元が緑色の光を微弱に放っているを感じた。



「あれ…シンちゃん光って…ってあれ!?私も…」



瞬間、すごい勢いで水が噴き上がりモアとシンは地面に叩きつけられた。



「痛っ!!!!!」

「…っ…ゴホゴホ!!!いっ…てぇ…」

「大丈夫!?シンちゃん!!!シンちゃん!!」

「…あぁ…大丈夫…お前の蹴り…威力あんな…」

「ごめん…私思い切り…っ…」

「…」



涙を浮かべるモアに笑いかけるシン。



「強ぇ女…さすが勇者様だな…」

そう言ってシンはモアの頭を撫で、ゆっくりと体を起こした。



「ってて…て…何が起こったんだ…?」

「それが…」



「…おめぇら」と言う声が聞こえ、モアとシンは慌てて辺りを見渡す。



「…シンちゃん!あそこ!!」

「…っ…」



モアが指差した先にいたのは水面の上に腰掛けていた。



「ごめんなさい…あの…」

「…」



勇者の導かれし光がその青年からも見える。

彼を導いているその色は青だった。



「…お前!!まさか…」

「あぁ、俺は…」

「ニーナだろ!?」



「「は?」」



シンの思わぬ発言に、モアも声を上げてしまう。



「アイツがニーナなのか?!モア!!」


「違うわい!!ニーナはもっと顔薄くて汚れもなく綺麗です!!それにね!?こんな露出狂なんかじゃありません!!!」


「言ってくれるじゃねぇか…このクソアマ…」

そう言って表情筋をひくつかせる青年。



「それにね!!!あの子は刀鍛冶の娘さんだからこんな剥き出しに刀をぶら下げたりもしませんし!!」


「だってよ!?髪短いって言ったんじゃんか!!」


「こんな短いわけないでしょ!!!それにね!?ニーナは女の子です!!!誰よりも乙女な女の子です!!」


「お前また乙女って言ったな!?俺はお前の言う乙女は信用してねぇぞ!?」


「はぁん!?なんてことを!?」



「うるせぇぞてめぇら!!!!!!」と、声をあげる青年に驚き、思わず口をつぐむモアとシン。



「…」

「…」


「たく…初対面で早々侮辱しやがって…!!俺はな、バルドってんだよ!ニーナだ?そんなふざけた名前じゃねぇんだよ!!」


「なあんですって!?私の大切な相棒をそんなふうに愚弄して!!!私は許しませんよ…ええい!!!怒りました!!!!」


「イケイケモア!!言ってやれ!勇者の力!見せつけてやれ!!!」


「待て!!!!」


「なんだぁ?ツンツン頭ぁ!!怖気付いたのか?この方をどなたと心得る!!!世界を救う勇者様だぞ!!!」


「…」


「そして俺はその勇者様を支える英傑様だ!!!はっは!」



仁王立ちしながら得意げに声を上げるシンに対し、呆れてため息をつくバルド。



「はぁ…お前みたいな能天気と話してると疲れてくる。おい、そこのじゃじゃ馬女。」


「じゃ…」

「お前、勇者っつったか?」

「え?あ、はい…一応…」

「…」



するとバルドは腰元から、所々黄ばんでしまっている書物を出した。



「…へぇ?お前が剣の勇者か。一回会ってみたかったんだよ。勇者ってのは…人を動かす…強い奴…何だろ?」


「え?いやいやわたしは…」

「だったら俺と勝負しろおおお!!!!!!!」



そう言って短剣を抜き取り、モアに襲いかかった。



「ひええええ!!!」

「モア!!!」



突然斬りかかってくるしバルドの腹部を蹴り上げ、泉へ蹴落とし、モアを背に隠すシン。



「ぶはっ…テメェやりやがったな。」

「こっちのセリフだわ!!?なにすんだよ!?」


「黙れクソがぁ!!邪魔すんなら殺すぞ馬鹿野郎が!!!どの道なぁ!俺に負けたらテメェらは死ぬんだよボケナス。」


「うおぉ…口悪…」

「俺たちの一族はなぁ!!!盗賊なんだよ。」



「そんなこというもんじゃないぞ」とシンは呟く。



「だからいろんなものを奪って生きてんだ。」

「そ、それって…」


「金を持ってる野郎どもから金やら食料やらを頂いてんだ、それが俺らの生き方なんだよ。俺らの生き方に文句つけんじゃねぇ。」


「いやいや文句つけてねぇし…勝手に自己紹介してんなよな…っていうか!?斬りかかるのは違うじゃんかよ!?」


「俺らはこの短剣やらくないやらを使ってお貴族さまから金をもらってんだよ。その伝統は計算できねぇぐらいの大昔から続いてんだ。だがなぁ!!!」


「伝統っていっていいのかそれ。」

「ひ…!!」


「このわけのわかんねぇ書物にはこう書かれてんだよ。"敗北した俺は盗賊を辞め三人の勇者に忠誠を誓った"ってな!!!!」



「「ええええええええ!?」」



「今こそ先祖の仇を討たせてもらうぜ!!」

そう言って再びバルドは2人に向け攻撃を放つのだった。

挿絵(By みてみん)

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