温かな家族
リン
シンの母親。楽観的で明るく村の太陽的存在。
声が大きいためどこにいるかすぐにわかる。
ジョウ
シンの父親。物忘れが多く、ちょっと抜けているところがある。酒が好き。
モアは、その後シンの家族と共に一夜を過ごす。
そこでわかったことは、自分の家の家族とどこか似ているところだった。
「あらあらぁ!可愛い女の子じゃないの!」
「シン…やるじゃん?」とニカッと笑ったのはシンの母であるリン。
「やるじゃんてなんだよ…急に木から落ちてきたから落ちてきたから助けたの!!!」
「本当はあんたが落ちたんじゃないのかい?」
「そんなわけねぇだろ!!!」
「そうかいそうかい!!!モアちゃん!私この馬鹿の母ちゃんやってんの!!よろしくね?」
「よ、よろしくお願いします…!!」
「いーのいーの!!困った時はお互い様!!気にしないでいいから!」
「あんたら!!!苗の準備終わったの!!?」と騒がしい子供達と共に外へと向かうリン。
「わ、私も手伝います!!!」
「え?」
「あら、いいのよ?気を遣わないで!」
「いえ!私の国でも良くやっていたので!!」」
「お任せ下さい!!」とモアはカゴを2個背負い、目にも止まらぬ早さで苗を田んぼに植えて行く。
「すごいなあいつ…あんな見た目であんな馬鹿力なのかよ…」
「すごいわねぇ…!?」
「ホイホイホイホイ…ホイホイ!!!!」
「モア姉ちゃんすごい!!!」という声が聞こえ、気分が良くなったモアは、田んぼ一面を綺麗に苗で植え尽くした。
「「すごい!!!」」
「こんなもんです!!!」
「おい!モア!!!!」
「はい!!」
シンに声をかけられたモアは、背筋を伸ばす。
「お前…スゲェな!?」
「え?」
「あんな速いの、俺みたことないよ!!すごい!!」
「え…そ、そう?」
「俺達にも教えてよ!!!!モアお姉ちゃん!!」
「私にもー!!!」
「あはは!わかったじゃあみんな!一列に並んで!!」
モアはシンの弟や妹達、村の子供達と並んで田植えの極意を伝授しながら進めて行った。
「あらあらあら!!」
そして、全てが終わる頃には日が落ち、身体中は泥まみれになってしまった。
「す、すみませんリンさん…田植えが終わったら、子供達とつい泥遊びを…」
「あはは!!!あんた…育ちのいいお嬢ちゃんかと思ったけど…うん!!気に入ったよ!!ほら!!!水浴びな!!!」
「「はーい!!!」」
「はい!!」
「あれ、シンは?」
「シン兄ちゃんなら、泥団子磨いてたよ?」
「あの馬鹿…」
「あ、モアお姉ちゃん…!耳塞いで…!」
「え?あ、うん…」
子供達に言われた通り、モアは耳を塞ぐ。
すると
「シイイイイイン!!!いつまで遊んでんだ!!!戻ってこい馬鹿たれ!!!!!」という声が聞こえ、塞いだはずの耳がキーンと音を立てた。
「ほら!!モアちゃん、あんたらも!早く入っといで!!」
「「はーい!!」」
「ありがとうございます!!」
「ありがとうねー?子供達の世話してくれて!」
「いえいえ!私ときょうだい多かったので!!」
そう言ってリンに再び礼をしたモアは、サヴァン達と共に水を浴びに向かったのだった。
ーーーーーーーー
この村はモアにとって、とても居心地の良い場所だった。
それは、故郷に雰囲気が似ていたからである。
村の雰囲気、活気ある人々の笑い声、楽しげな子供達の声。
その全てが似ていた。
「おい、リンー、酒あるかー?」
「昨日全部飲んだでしょう!?」
「あれそうだっけ!?」
「飯食え飯!!!!」
「なんだよまぁ、怒りっぽいなぁ…」
「父ちゃんが怒らせてんだよ。」と、シンは父親であるジョウをジト目で見つめる。
シンの家族達を見ていたモアは、自分の家族達を思い出した。
厳格だが優しい父、穏やかだが曲がったことが嫌いな母、喧しい弟たち。
「…」
「…」
シンは、少しずつ口数が減って行っているモアを見つめていた。
「…」
「どうした」
「…え?」
「母ちゃんの料理不味いか?」
そう言って悪戯っぽく笑うシン。
「う、ううん!!そんなことないよ!!ちょっと…はしゃぎすぎちゃって…」
「そっか。」
シンは囲炉裏の上に浮かぶ鍋をよそい、モアと自分の皿に移す。
「ありがとう…」
「…すぐ、家に帰してやるからな」
「…え?」
「…」
シンはニカッと笑い、モアの頭を撫でた。
「…」
「お前の笑ってる顔好きだよ、俺」
「はっ…!?」
「…は???」
「…」
爆発音のような音と同時にシンの脳天には巨大なタンコブが生まれた。
「いってぇ…いてぇよ母ちゃん!!!」
「喧しい!!ったく…好きなんて軽々しくいって!女の子困らせてんじゃないよ!!!」
「困らせてねぇよ別に!!思ったこと言っただけだって!?」
「だからそれをやめろって言ってんの!!!!」
「シン君!リンさん!!!落ち着いてください!!!
「まぁ確かに好きって言われてびっくりしましたけども…」と、呟き胸に手を当てるモア。
喧嘩がヒートアップして行く中でリンから「シンに君なんかつけなくていい」と教えを受けたモアは、その後「シン君」呼びから「シンちゃん」呼びに形を変えたのだった。




