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俺、いきなり千年妖狐の主様になった件  作者: 浦賀やまみち
第二章 コンコーン!

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第07話 上にいた!




「おっと……。」



 音楽室から幾つものリコーダーの音色が聞こえる。


 どうやら使用中らしい。

 俺は腰を落とし、戸のガラス窓の下を潜ってゆく。



「……というか、本当にどこへいったんだ?」



 葛葉は、普通の者には見えない。


 それでも、人がいる場所にいるとは思えない。

 俺も、人目があるところをうろついていたら怒られる。


 俺は特別教室棟を探検していた。


 葛葉は俺と契約するまで、百年以上も神社の境内から出られなかったと愚痴をこぼしていた。

 なら、特別教室にある品々は相当珍しいはずだ。



「マジ、あの神社何なん?」



 探検といえば、名香神社のことも気になる。


 クラスメイトの話では、歴史のある神社らしい。

 普段は寂れているが、お正月には賑わい、夏祭りには屋台も並ぶという。



「市の名前まで、名香なのに観光地らしくないし……。」



 その跡取り娘が、名香綾音。

 俺より二つ上で、十六歳。


 成績優秀で、スポーツもできる。

 小学校では児童会長を務め、俺が今日転校してきた中学でも生徒会長を務めていた。



「でも、そんなお姉さんいなかったぞ?」



 そして、最も重要なこと。

 超美人だという。


 それが、朝のホームルーム後の男どもの騒ぎの原因だった。

 祭りで披露される神楽舞で、ころりとやられた男は多いらしい。


 超分かる。

 巫女服は、最高だ。



「特に、ウエストの隙間がね。

 エッチなんだよね。あそこから……。」


 葛葉は、その上に金髪でもある。

 俺は最高の幸せ者だと、クラスの男どもに自慢したい。


 だが、姿が見えない以上、結局は『妄想乙』で終わってしまうのが悔しい。



「やばっ……。思い出してきた」



 たぶん、葛葉がいなくなったのも、そのあたりが原因だろう。


 何度も話しかけられたが、返事をすれば、他の者には一人芝居になる。

 転校初日で、危ないやつ扱いは避けたい。



「……少し寄ってくか」



 葛葉探しの口実にしたトイレだった。

 でも、その気もなかったのに、前に来た途端、急に催してきた。




 ******




「ふーーー……。」



 一仕事を終え、大きく息を吐く。


 小のつもりだったが、気を抜いた瞬間、プリッと屁が出た。

 そっちには許可を出していない。


 まずいと思い、慌てて個室に飛び込んだ。


 俺は健康優良児だ。

 毎日すっきり快便。


 だが、その俺が一昨日から出していないのだから、こうなるのも当然だ。



「うん、よし!」



 下を覗き込み、満足して頷く。

 身体を捻り、レバーを下げる。


 水の流れる音がトイレに響いた。

 カラカラと、トイレットペーパーが回る。



「ふーーー……。」



 まだ小は済ませていない。

 狙いを定めた、その瞬間。


 コンコンコン、とノック。



「うん?」



 俺は、眉を寄せた。

 今は授業中で、ここは人の少ない特別教室棟だ。


 男子トイレには個室が三つある。

 俺が入った端の一つ以外は空いている。


 なぜ、ここをノックする必要がある。



「入ってます」



 ノックを返すと、さらにコンコンコン。

 イラッとした。


 まさか、中学生にもなって、俺をウンコマン扱いする気か。

 小学校からやり直せ。



「入ってるって言ってんだろ!」



 ドンッ、と拳でドアを叩いた。

 ノックは返ってこない。


 だが、ドアの向こうに気配だけが残っている。


 仕方がない。

 説教してやる。



「……いいか? 

 ウンコのときは、誰にも邪魔されず自由で……。 

 なんというか、ちゃんと救われてる感じが必要なんだよ

 独りで、静かで、思いっきり……。なっ!?」



 腕を組み、ひとりでうんうんと頷いた。


 個室の下に伸びていた影が、ふっと消えた。

 安心したのも束の間だった。



「じーーー……。」



 次の瞬間、気配は『上』へ移った。

 声が、真上から落ちてくる。



「うん?」



 思わず顔を上げた。

 そこには、ドアの上からこちらを覗き込む女の子の顔があった。



「私、花子さん」



 淡々とした声。

 俺は一瞬フリーズした。



「キャーーっ!? え、エッチぃっ!?」

「今、あなたの前にいるの」



 そして反射的に、開いていた両足を閉じる。

 股間を両手で押さえた。




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