第9話 村に着いた瞬間、すでに嫌な予感しかしないんだが
「――ここがその村です」
リゼリアの声とともに、視界が開けた。
森を抜けた先に、小さな村が見える。木造の家が並び、畑が広がる、どこにでもありそうな田舎の風景――のはずだった。
「……なんか暗くない?」
空気が重い。
人の気配はあるのに、活気がない。妙に静かだ。
「警戒しているのでしょう」
リゼリアが周囲を見回す。
***
村に入ると、視線が集まった。
子どもが母親の後ろに隠れる。大人たちもどこか怯えた様子でこちらを見ている。
「完全に不審者なんだけど俺」
「今さらです」
「今さらで済ませるな」
***
「すみません!」
あの少女が駆け寄ってくる。
「来ていただいて、本当にありがとうございます!」
「いや、まだ何もしてないからな」
三回目である。
***
「状況を説明してもらえますか」
リゼリアが前に出る。
「は、はい……」
少女が頷く。
「最近、夜になると魔物が増えて……畑も荒らされて……」
「種類は?」
「それが……分からなくて……」
不安そうに目を伏せる。
***
「目撃情報が曖昧ですね」
リゼリアが呟く。
「群れではなく、“何か”が原因の可能性があります」
「嫌な言い方するな」
大体こういうのは面倒なやつだ。
***
「とりあえず見に行くか」
筋肉男が言う。
「森の奥だろ?」
「はい……その辺りでよく……」
少女が震えながら指差す。
***
「……帰りたい」
小さく呟く。
「もう帰っていい?」
「ダメです」
「即答かよ」
***
森に入る。
昼間なのに、やけに暗い。
音が少ない。風も弱い。妙に静まり返っている。
「……絶対なんかいるだろこれ」
嫌な予感しかしない。
***
ガサッ。
音がした。
「……来るぞ」
筋肉男が構える。
リゼリアも剣を抜く。
俺だけ何もしてない。
***
次の瞬間。
――ズルッ。
地面が動いた。
「え?」
足元が盛り上がる。
土が、波打つように蠢く。
***
「下だ!!」
誰かが叫ぶ。
地面から何かが飛び出した。
巨大な、ミミズのような魔物。
「キモッ!!」
反射的に叫ぶ。
***
「数が多い!」
周囲の地面から次々と出てくる。
一本、二本、三本――
「いや多すぎだろ!?」
***
「ユウト!」
リゼリアが叫ぶ。
「壊さないように――」
「それもう無理だろ!?」
範囲が広すぎる。
***
ミミズ型魔物が一斉に襲いかかってくる。
「うわ来た!!」
反射的に後ろへ飛ぶ。
だが足が滑った。
***
「――あ」
転びかける。
手をつく。
その瞬間。
――ドォォォォォォォォォォォン!!
***
地面が、消えた。
***
「…………」
完全な静寂。
***
さっきまで魔物がいた場所が、綺麗に抉れている。
ぽっかりと空いたクレーター。
魔物の姿は――ない。
***
「……あれ?」
恐る恐る顔を上げる。
「今の……ノーカウントだよな?」
「アウトです」
リゼリアが即答した。
***
「……すごい……」
少女が呟く。
目を見開いている。
「いや違うって」
全力で否定する。
「今の事故だから」
***
「……いや」
筋肉男が首を振る。
「事故でこれはおかしい」
「俺もそう思う」
***
その日、村で新たな認識が生まれた。
この男は――
地面ごと消す。
***
「……もう何も触りたくない」
俺はそっと立ち上がった。
本気で怖くなってきた。
「ここまで読んでいただきありがとうございます!
村に着いたと思ったら、早速やらかしました(笑)
ここから原因の正体や物語も動いていきますので、楽しんでいただけたら嬉しいです!
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