第3話 軟禁されたら普通に生活できないんだが
「――というわけで、お前は保護観察だ」
「言い方変えただけで軟禁ですよねそれ」
「似たようなものだ」
隠す気ゼロだった。
***
俺は現在、王城の一室にいる。
広い。無駄に広い。ふかふかのベッドに高級そうな机と椅子。窓からは王都の街並みが一望できる。
どう見ても待遇はいい。
ただし――
「……出られない時点で意味ないよなこれ」
「当然です」
背後から即答が飛んできた。
振り返ると、腕を組んだリゼリアが立っている。相変わらず隙がない。
「あなたを野放しにしたら、国がいくつあっても足りませんから」
「そんな爆弾みたいに言うなよ」
「事実です」
即答だった。否定できないのが辛い。
***
「改めて確認します」
リゼリアは手元の紙に目を落とす。
「あなたは魔法が使えますか?」
「使えない」
「魔力の自覚は?」
「ない」
「戦闘経験は?」
「ゲームならある」
「現実で」
「ない」
沈黙。完全に詰んでいる。
「……ではなぜドラゴンを消し飛ばせるんですか?」
「俺が聞きたい」
本気で分からない。
***
「……はぁ」
リゼリアは小さくため息をついた。
「とりあえず検証します」
「やめろその流れ怖い」
「安心してください。“できるだけ壊れない方法”でやります」
「壊れる前提なのやめろ」
***
連れてこられたのは城の裏手にある訓練場だった。
広い空間に的や木人が並んでいる。
そして周囲には――なぜか人だかり。
兵士、騎士、魔術師。全員、明らかに距離を取っている。
「なんでそんな離れてるの?」
「自覚ないんですか?」
ないです。
***
「では、まず軽いテストから」
リゼリアが石を拾い、俺に渡す。
「これをあちらの的に投げてください」
距離は三十メートルほど。
「それだけ?」
「それだけです。“普通に”お願いします」
その“普通”に妙な圧を感じる。
***
とりあえず投げた。本当に普通に。
――ズドォォォォォォォォォォン!!
的が消えた。壁も消えた。奥の建物まで巻き込んで粉々になった。
「…………」
静まり返る訓練場。
「普通とは」
リゼリアが静かに言う。
「俺基準では普通」
「その基準を今すぐ捨ててください」
***
「次です」
リゼリアは即座に切り替える。
「“力を抜いて”やってください」
「いや抜いてるつもりなんだけど」
「もっとです」
「もっとってどうやって」
「壊さないように、です」
それを最初に言え。
***
深呼吸する。
壊さない。壊さない。壊さない。
「……よし」
もう一度、石を持つ。
今度は、そっと。
コツン。
的に当たった。揺れた。それだけだった。
「……おお」
初めて普通っぽい結果が出た。
「やればできるじゃん」
「……なるほど」
リゼリアが頷く。
「出力は意識依存ですね」
「本人分かってないからな?」
「つまりあなたは――無意識だと災害、意識すると人間です」
「極端すぎるだろ」
***
その時だった。
ドゴォォォォォン!!
遠くで爆発音が響く。
「……今の何?」
嫌な予感しかしない。
兵士が駆け込んできた。
「報告! 城壁外に魔物の群れ確認!」
「数は!?」
「数百規模!」
「多くない!?」
***
気づけば、俺は城壁の上に立っていた。
下には魔物の群れ。ゴブリンやオークらしき影が押し寄せてくる。
「……無理だろこれ」
「大丈夫です」
リゼリアはあっさり言う。
「壊さないようにやってください」
「それが一番難しいんだよ!」
***
距離が縮まる。時間がない。
「……どうすんだこれ」
考える。
殴る→危険
蹴る→論外
投げる→論外
「……あ」
ひらめいた。
「押せばいいんじゃね?」
前に軽く押すだけなら壊れないはずだ。
***
俺は手を前に出す。
本当に軽く。
空気を押すように。
――ドォォォォォォォォォォォン!!
衝撃波が走り、魔物の群れがまとめて吹き飛ぶ。地平線の彼方まで。
「…………」
静まり返る城壁。
「……な?」
「壊してないだろ?」
「壊してます」
***
その日、王国は理解した。
この男は――手加減しても災害である。
「ここまで読んでいただきありがとうございます!
手加減しても普通に災害扱いされる主人公でした(笑)
この先も“やらかし”がどんどん加速していきますので、楽しんでいただけたら嬉しいです!
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