第24話 まとめて処理しようとしてるんだがその発想自体がまずい気がしてきた件
――囲まれている。
改めて状況を整理すると、それが一番しっくりくる表現だった。
一体一体は大したことがない。実際、さっきから殴れば消えるし、反応も追える。ただ問題はそこじゃない。数と位置、それから微妙に違う動きが、全体として妙な“やりづらさ”を生んでいる。
雑に言えば、面倒くさい。
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「……なあ、これさ」
少しだけ声を落として言う。
焦っているわけじゃない。ただ、声を張るほどの余裕もなかった。
「一体ずつやるの、現実的じゃないよな?」
確認というより、ほぼ結論に近い問いだった。
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「現実的ではありません」
リゼリアが迷いなく答える。
いつもの調子だが、言っている内容はかなり厳しい。
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「だよな。じゃあ別の方法になるんだけど」
言いながら、少しだけ間を置く。
自分の中で、選択肢はもう一つしかなかった。
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「まとめるしかないよね」
横からミラが軽く言う。
こちらの思考を先回りされた形だ。
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「……分かってて言うけど、それやるとろくなことにならない気がするんだよな」
正直な感想をそのまま口にする。
経験則というほど経験はないが、こういう“まとめて解決”は大体副作用がついてくる。
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「でも一体ずつだと終わらないよ?」
ミラはあっさりと返す。
そこに迷いはない。
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「分かってる。分かってるけど」
言葉を探す。
納得はしているが、覚悟が追いついていない。
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「その“まとめて”って、どのくらいまとめるつもり?」
ミラが少しだけ真面目な声になる。
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「……そこなんだよな」
思わず苦笑が漏れる。
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「正直、範囲が分からん」
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「分からないままやるの?」
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「今さらそこ気にする段階か?」
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「気にする段階だと思うけど」
ミラの言い方は軽いが、内容は真っ当だ。
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「例えばさ」
少し考えてから続ける。
「この辺全部いける気がする」
曖昧なまま、周囲を示す。
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「それ、どこまで?」
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「……嫌な予感する範囲」
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「それ基準にするの危なくない?」
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「もう安全な基準残ってないだろ」
言い切る。
ここまで来たら、多少の危険は織り込み済みだ。
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その間にも、周囲の“それ”はじわじわと距離を詰めてくる。
急いでいるわけではないが、確実に逃げ場を削ってくる動きだ。
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「距離を取ります」
リゼリアが一歩下がる。
状況判断が早い。
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「俺は?」
分かっていて聞く。
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「中心です」
やはりそうなる。
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「……だよな」
軽く息を吐く。
逃げ場はないし、逃げる気もない。
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「ユウトさん」
ミラが少しだけ声を落とす。
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「やるなら、ちゃんと掴んでからね」
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「何を」
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「流れ」
短いが、意味は通じる。
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さっきの感覚。
空気の中にある“何か”を引き寄せる感覚。
あれを、もう一度。
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「……分かってる」
小さく答える。
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手を握る。
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ドクン。
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身体の奥で、強い脈動。
それに合わせて、周囲の空気がざわつき始める。
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「……来てるな」
自然とそう口にしていた。
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「見えてる?」
ミラが聞く。
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「見えてるっていうか、分かる」
言葉にするのは難しいが、確信はある。
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「どこに流れてるか、全部」
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ミラが一瞬だけ黙る。
そして、少しだけ笑った。
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「それ、だいぶおかしいね」
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「知ってる」
もう何度も言われている。
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小型のそれが、一斉に動く。
今度は散らばらず、まとまるように距離を詰めてくる。
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「……いいタイミングだ」
小さく呟く。
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「何が」
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「まとめやすい」
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ミラが、楽しそうに息を吐く。
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「やっぱり雑だね」
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「効率重視って言ってくれ」
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そのやり取りの間にも、距離は詰まる。
もう、迷っている時間はない。
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「……いくぞ」
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深く息を吸う。
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流れを掴む。
引き寄せる。
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さっきよりも、はっきりと。
強く。
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だが――
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「……ちょっと待て」
違和感。
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「どうしたの?」
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「これ、思ったより……」
言葉を探す。
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「広い」
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「だから言ったじゃん」
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「いや、そういうレベルじゃない」
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範囲が、想定よりも明らかに広い。
ここだけじゃない。
もっと外まで、届く感覚がある。
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「……これ、やばくないか」
今さら気づく。
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「やばいと思うよ」
ミラがあっさり言う。
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「止める?」
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少しだけ間が空く。
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「……止まると思うか?」
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「思わない」
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「だよな」
苦笑する。
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その日。
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“まとめて処理する”という選択は――
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想定よりもずっと大きな結果を呼びそうだった。
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「……やっぱこれ、後で絶対怒られるな」
確信だけがあった。
「ここまで読んでいただきありがとうございます!
まとめてやれば早い、という発想はだいたい危ないですね(笑)
しかも今回はちょっとやりすぎな気配があります。
続きもぜひ読んでいただけたら嬉しいです!」




