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『異世界転生した俺、スライム蹴ったら国家災害扱いでした〜常識バグ世界で俺だけルール外〜』  作者: 関澤諭


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増えてるんだがそれぞれ微妙に違う動きしてて普通に対応しづらい件

 ――増えている。


 さっきまで“一つの問題”だったはずのものが、今ははっきりと複数に分かれている。しかも、ただ数が増えただけじゃない。配置が悪い。包囲されている、という言い方が一番しっくりきた。


 どこに逃げても、必ず一つは当たる。


 そういう位置取りだ。


***


「……なあ、ちょっと確認したいんだけど」


 できるだけ落ち着いた声で言う。落ち着いているふりをしているだけで、内心はそこそこ焦っていた。


「これ、数えた方がいいと思うか?」


 正確な数を把握した方がいいのか、それとも見ないふりをした方が精神的に楽なのか、判断に迷っていた。


***


「おすすめしません」


 リゼリアが即答する。間がない。考える余地すら与えない速度だった。


***


「理由くらい聞いてもいいか?」


 さすがに納得材料が欲しい。


***


「数を意識すると、対応が遅れます」


 簡潔だが、妙に説得力のある答えだった。


***


「なるほどな。じゃあ見なかったことにするわ」


 そう言いながらも、視界の端に入る影の数はどうしても気になる。人間の目は優秀だが、こういう時だけは余計なものまで拾ってくる。


***


 横で、ミラがしゃがみ込む。


 状況に似合わない落ち着き方だった。いや、落ち着いているというより、楽しんでいるに近い。


***


「ねえユウトさん」


 地面に手を当てたまま、こちらを見ずに言う。


「今回、ちょっと面白いよ」


***


「面白くない状況なんだけど、今」


 正直に返す。命がかかっている場面で“面白い”は使っていい言葉じゃない。


***


「違う違う、そういう意味じゃなくて」


 ミラは軽く首を振る。


「一体一体、動きが微妙に違うの」


***


「違うって、どのくらい?」


 聞きながら、目の前の一体に意識を向ける。確かに、さっきのやつより少し動きが軽い気がする。


***


「癖みたいなのがある」


 ミラは少し考えながら言葉を選ぶ。


「同じように見えて、全部同じじゃない。たぶん、元が一つでも、分かれた時にズレてる」


***


「……分裂して弱くなるタイプじゃなくて、面倒になるタイプか」


 小さく息を吐く。


 それは、あまり嬉しくない進化だ。


***


「うん。しかも」


 ミラが少しだけ間を置く。


「速いのは速いまま」


***


「一番ダメなやつだなそれ」


 弱くなってもいいから遅くなってほしかった。両立されると、ただ面倒が増えるだけだ。


***


 その時、地面がわずかに盛り上がる。


 ズズッ、と鈍い音を立てながら、新しい“それ”が顔を出す。


***


「……まだ増えるのか」


 確認するように呟く。


***


「増えています」


 リゼリアが淡々と答える。


***


「今のは聞かなくても分かったな」


 視覚的に十分だった。


***


 複数の気配が、一斉に動く。


 散らばるように、だが狙いは正確にこちらへ向いている。


***


「来るな」


 言葉にすると同時に、身体が構える。


***


「来ます」


 リゼリアの声が重なる。


***


「分かってるって」


 短く返しながら、一歩踏み込む。


***


 右から一体。


 正面からもう一体。


 少し遅れて、後ろ。


***


「……連携してるわけじゃないのが逆にやりづらいな」


 それぞれが勝手に動いている。だからこそ、読みづらい。


***


 最初の一体を殴る。


 ドンッ、と手応えがある。


 軽い。


***


「やっぱり一体ずつは弱いな」


 そう判断する。だが同時に、別の一体が間合いに入ってくる。


***


「でも数が多い」


 当たり前のことを口にするしかなかった。


***


「その通り」


 ミラが軽く頷く。


「だから一体ずつやってると終わらないよ」


***


「だろうな」


 短く同意する。


 さっきの戦闘で、もう分かっている。


***


「……まとめるしかないか」


 小さく呟く。


 その言葉に、自分でも少しだけ嫌な予感を覚えた。


***


「その顔、あんまり良くないね」


 ミラが笑いながら言う。


***


「自覚はある」


 むしろ、それをやるしかない状況が良くない。


***


「でもやるんでしょ?」


***


「やらないと終わらないだろ」


 言い切る。


 選択肢は、最初からなかった。


***


 手を握る。


***


 ドクン。


***


 身体の奥で、あの感覚が強くなる。


 空気がざわつく。


 周囲の“流れ”が、意識しなくてもこちらに寄ってくる。


***


「ユウトさん、それ」


 ミラの声が少しだけ低くなる。


「さっきより強いよね」


***


「……かもな」


 否定はしない。


 否定できない。


***


「制御できる?」


***


「できる気はしない」


 正直に答える。


***


「正直でいいね」


***


「褒められてる気がしない」


***


 小型のそれが、一斉に動く。


 今度は間隔を詰めて、まとめて突っ込んでくる。


***


「……ちょうどいい」


 小さく呟く。


***


「何が」


***


「まとめやすい」


***


 ミラが一瞬だけ黙る。


 そのあと、少し楽しそうに笑った。


***


「やっぱりユウトさん、ちょっとおかしいね」


***


「知ってる」


 今さら否定する気もない。


***


 その日。


***


 増え続ける問題に対して、


***


 “雑な解決方法”が選ばれようとしていた。


***


「……これ、絶対あとで面倒なことになるな」


 やる前から分かっているのが、一番嫌だった。

「ここまで読んでいただきありがとうございます!

増えるだけでも嫌なのに、個体差まで出てきました。

だいぶ面倒な方向に進んでいます(笑)

続きもぜひ読んでいただけたら嬉しいです!」

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