第22話 終わったはずなのにまた始まる気配がするんだが誰も止めようとしない件
地下の空気は、さっきよりも静かだった。
だが――
落ち着いている、という感じではない。
むしろ逆だ。
“何かが起きる前の静けさ”に近い。
***
「……なあ」
少しだけ声を落として言う。
***
「これ、本当に終わったんだよな?」
***
「終わりました」
リゼリアが答える。
即答だった。
***
「さっきも聞いたけど」
***
「同じ答えです」
***
「安心できないんだよなその言い方」
***
ミラが横で小さく笑う。
***
「でもさ」
***
「何」
***
「ユウトさん、自分でも分かってるでしょ?」
***
妙に楽しそうな声だった。
***
「何が」
***
「“まだ残ってる感じ”」
***
言われた瞬間、言葉に詰まる。
***
「……まあ」
***
否定はできない。
***
「あるな」
***
「でしょ?」
***
ミラが満足そうに頷く。
***
「だから終わってないよ」
***
「軽く言うな」
***
リゼリアが静かに口を開く。
***
「感覚的な話ではなく、実際に異常は残っています」
***
「今の会話、全部いらなかったな」
***
「必要です」
***
「どこが」
***
「納得のためです」
***
「納得できてないけど」
***
短い沈黙。
***
そこで。
***
ミラがしゃがみ込んだ。
***
「ねえ」
***
「何してる」
***
「感じてる」
***
「雑すぎる説明やめろ」
***
ミラは地面に手を当てたまま、目を細める。
***
「……うん」
***
「何が“うん”なんだよ」
***
「動いてる」
***
空気が、少しだけ変わる。
***
「……どこが」
***
「下」
***
「ざっくりしすぎだろ」
***
だが。
***
その直後。
***
ズッ……
***
足元が、ほんのわずかに沈んだ。
***
「……今の」
***
「気のせいじゃない」
リゼリアが即答する。
***
「いや今のは分かる」
***
「分かるんだ」
***
「さすがに分かる」
***
ミラが顔を上げる。
***
「さっきのとは違うよ」
***
「何が」
***
「“外”じゃない」
***
「分かるように言え」
***
「中」
***
「もっと分かりづらくなったな」
***
だが、言いたいことは何となく分かる。
***
「……残りカスか?」
***
「近い」
***
「近いのかよ」
***
筋肉男が口を開く。
***
「分裂してる可能性がある」
***
「最悪のやつ来たな」
***
「倒したら増えるタイプ」
***
「ゲームで一番嫌われるやつだぞそれ」
***
ミラが嬉しそうに言う。
***
「でも観察的には最高だよね」
***
「お前の価値観怖いな」
***
再び。
***
ズズッ……
***
今度は、少し大きく動いた。
***
「……増えてるなこれ」
***
「はい」
リゼリアが頷く。
***
「対応が必要です」
***
「さっき倒したばっかなんだけど」
***
「関係ありません」
***
「あるだろ」
***
ミラが立ち上がる。
***
「ユウトさん」
***
「何」
***
「もう一回いける?」
***
間が空く。
***
「……無理」
***
正直に答えた。
***
「だよね」
***
「軽いな受け止め方」
***
「でもやるしかないよね」
***
「やらないって選択肢は?」
***
「ない」
***
「全員同じこと言うのやめろ」
***
ため息をつく。
***
「……分かったよ」
***
「やる」
***
言ってしまった。
***
言った瞬間に後悔した。
***
「ありがとう!」
ミラが満面の笑みで言う。
***
「まだ何もしてない」
***
「でもするでしょ?」
***
「するけど」
***
「じゃあ同じ」
***
「同じじゃない」
***
その時。
***
ドクン。
***
また、あの音がした。
***
だが今度は。
***
一つじゃない。
***
複数。
***
「……おい」
***
「はい」
***
「増えてないかこれ」
***
「増えています」
***
「断言やめろ」
***
足元の空気が、明らかに揺れている。
***
その日。
***
終わったはずの地下で――
***
“次の問題”が、静かに増えていた。
***
「……帰るの、もう少し先になりそうだな」
誰にともなく、そう呟いた。
「ここまで読んでいただきありがとうございます!
終わったと思ったら終わっていませんでした。
しかも増えてます。
この世界、なかなか優しくないですね(笑)
ここからどうなっていくのか、ぜひ続きも読んでいただけたら嬉しいです!
よければブクマやいいねで応援していただけると励みになります!」




