第20話 そろそろ終わってほしいんだが全然終わる気配がない件
――まだ、動いている。
削れたはずの核が、ゆっくりと脈打っていた。
ドクン。ドクン。
その音が、やけに大きく聞こえる。
***
「……いや嘘だろ」
思わず声が漏れる。
さっきの一撃は、間違いなく当たっていた。手応えもあった。地面も吹き飛んだし、見た目もだいぶ削れていた。
なのに――
壊れていない。
***
「これ、HPゲージ何本あるタイプ?」
誰に向けたわけでもないツッコミが口をつく。
嫌な予感しかしない。
***
「ユウトさん……」
ミラの声が少し低い。
「まだ、完全に繋がってる」
***
「……だろうな」
見れば分かる。
削れた核の奥で、黒い“何か”がうごめいている。
表面じゃない。
もっと奥。
***
「中に本体がいるタイプかよ……」
思わず天を仰ぐ。
どこまでめんどくさい仕様なんだこの世界は。
***
ドクン。
***
核が、さらに強く脈打つ。
同時に――
***
人型が、再び立ち上がる。
***
「……復活すんのかよ」
完全に嫌な展開だ。
***
だが。
さっきまでと違う。
***
「……遅いな」
***
動きが、見える。
いや、違う。
“分かる”。
***
踏み込みの癖。力の流れ。攻撃の起点。
全部、理解できる。
***
「ユウト!」
リゼリアの声。
***
「大丈夫だ」
短く返す。
***
本当に大丈夫かは知らない。
だが、今はそれでいい。
***
来る。
***
人型が加速する。
さっきと同じ速度。
だが――
***
「見えてる」
***
一歩ずれる。
風が頬をかすめる。
***
「で――」
***
振り向きざまに、拳を叩き込む。
***
ドォンッ!!
***
人型が大きく歪む。
今度は明確に崩れた。
***
「効いてる効いてる!」
ミラのテンションが上がる。
***
「実況いらねぇ!!」
ツッコミながらも、止まらない。
***
次。
また来る。
***
だがもう迷わない。
***
「……悪いな」
***
小さく呟く。
***
「ちょっと本気で行く」
***
手を握る。
***
ドクン。
***
身体の奥で、何かが強く脈打つ。
***
空気が震える。
周囲の“流れ”が、一気に引き寄せられる。
***
「ユウトさんそれやばい!!」
ミラが叫ぶ。
***
「知ってる!!」
***
分かってる。
分かってるけど――
***
「これ以上長引く方が、もっとやばいだろ!!」
***
踏み込む。
***
地面が砕ける。
空気が引き裂かれる。
***
人型が割り込む。
***
「邪魔」
***
振り払う。
***
ドォンッ!!
***
今度は完全に吹き飛ばした。
***
一直線。
***
核へ。
***
「……終われ」
***
手を叩き込む。
***
ドクン。
***
触れた瞬間。
***
“全部吸う”。
***
今までと違う。
制御とか考えない。
ただ、全力で引きずり込む。
***
ドォォォォォォォォォォォン!!
***
爆発。
光が溢れる。
地面が崩れる。
***
視界が真っ白になる。
***
――そして。
***
静寂。
***
「……は……」
息を吐く。
***
目を開ける。
***
そこには――
***
何も、なかった。
***
「……終わった?」
***
ぽつりと呟く。
***
風が吹く。
さっきまでの圧が、嘘のように消えている。
***
「……マジで?」
***
信じられない。
***
その時。
***
ズキッ。
***
「……っ」
***
頭に痛みが走る。
***
視界が揺れる。
***
黒い空。
崩れた街。
***
一瞬だけ、あの景色がよぎる。
***
「……おい」
筋肉男の声。
***
「顔色、死んでるぞ」
***
「……気のせいだ」
***
絶対気のせいじゃない。
***
「ユウトさん」
ミラが、珍しく真面目な顔で言う。
***
「それ、使いすぎるとヤバいよ」
***
「知ってる」
***
苦笑する。
***
だが。
***
それ以上に。
***
「……終わったなら、もういい」
***
本音だった。
***
その日。
***
村の地下で――
***
一つの“異常”が、消えた。
***
そして同時に。
***
新たな“異常”が、生まれていた。
***
「……帰って寝たい」
それだけが、今の願いだった。
「ここまで読んでいただきありがとうございます!
ひとまず一つの決着となりました。
ですが、主人公の力や見えたものなど、まだ気になる要素は残っています。
ここから物語も少しずつ新しい展開に入っていきますので、引き続き楽しんでいただけたら嬉しいです!
よければブクマやいいねで応援していただけると励みになります!」




