第17話 触れた瞬間、何かが流れ込んできたんだがこれ普通じゃない
――遅かった。
伸ばした指先が、黒い“核”に触れた瞬間。
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ドクン。
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鼓動が、鳴った。
音じゃない。振動でもない。
“理解”だけが、直接脳に叩き込まれるような感覚。
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「――っ」
息が詰まる。
肺に空気が入らない。体が硬直する。
視界が一瞬で白に弾け、その直後、真逆に黒へと塗り潰された。
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落ちている。
いや、沈んでいる。
上下の感覚が消える。身体の輪郭が曖昧になり、自分がどこまで“自分”なのか分からなくなる。
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――見える。
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知らない街だった。
石造りの建物。崩れた塔。瓦礫の山。
だが、人の気配はある。
……なのに、誰も“いない”。
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正確には。
“いたはずのものが、いなくなっている”。
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ドクン。
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景色が変わる。
焼けた大地。ひび割れた地面。
その奥で――同じ“核”が脈打っている。
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人影が、近づく。
触れる。
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――消える。
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音もなく、悲鳴もなく、ただ“削り取られる”ように。
光になって、核へ吸い込まれていく。
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「……これ……」
声が出ない。
だが、分かる。
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これは――
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“過去”だ。
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ドクン。
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さらに深く潜る。
視界が歪む。
今度は――
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見覚えのある部屋。
狭いワンルーム。机。椅子。散らかったコード。
スマホの光。
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「……あ」
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指が、震えている。
画面に映るガチャ。
タップ。
演出。
期待。
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そして――
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“落ちる”。
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「……違う」
これはただの記憶だ。
俺の過去。
――のはずだ。
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なのに。
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ドクン。
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全てが、繋がる。
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吸う。
吸われる。
消える。
残るのは“核”。
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「……同じ、だ」
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俺の中の“何か”と、目の前の“それ”。
構造が、同じ。
仕組みが、同じ。
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「――ユウト!!」
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声。
遠い。
だが確実に引き戻される。
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視界が戻る。
色が戻る。
重さが戻る。
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「……っ、は……!」
肺が空気を求めるように膨らむ。
膝が抜け、その場に崩れ落ちる。
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「ユウトさん!」
ミラが駆け寄ってくる。
いつもの軽さはない。明らかに焦っている。
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「今の……何……?」
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「……分からん」
本音だった。
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だが、一つだけ。
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「……これ、触っちゃダメなやつだ」
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「今さら!?」
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ミラのツッコミが飛ぶ。
珍しく、正しい。
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「いや、ほら」
呼吸を整えながら言う。
「今までは“なんかやばい”くらいだったけどさ」
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「今回は?」
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「“普通に終わるやつ”だなこれ」
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沈黙。
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「終わるって何が!?」
「俺がだよ!!」
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さすがに笑えない。
……いや、ちょっとだけ笑えるけど。
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だが、その空気を切り裂くように。
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ドクン。
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核が、さらに大きく脈打った。
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「……おい」
筋肉男が低く言う。
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「まだ終わってねぇぞ」
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黒い核の表面に、ひびが入る。
細く、だが確実に。
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「……まさか」
リゼリアの声がわずかに揺れる。
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ゴキン。
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音がした。
“割れる音”。
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次の瞬間。
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内側から、“何か”が押し出された。
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「……嘘だろ」
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人の形。
だが、人ではない。
黒い光で構成された輪郭。
空洞のような身体。
そして――
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“目”。
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こちらを、はっきりと見ていた。
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ドクン。
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視線が、合う。
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その瞬間。
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理解した。
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これは、ただの魔物じゃない。
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“意思がある”。
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「……やばい」
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今度は、言葉が自然に出た。
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「これは……」
逃げるべきか。
戦うべきか。
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そんなことを考えるより先に。
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“向こう”が、動いた。
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その日、村の地下で――
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“核”は、殻を破った。
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「……これ絶対俺のせいだろ」
心の底から、そう思った。
いや、もう認めたくはないけど。
たぶん、そうだ。
「ここまで読んでいただきありがとうございます!
一気に雰囲気が変わってきました。
そして、主人公と“何か”の繋がりも見えてきましたね……。
この先どうなっていくのか、ぜひ楽しみにしていただけたら嬉しいです!
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