第16話 本当の原因が出てきたんだがスケールがおかしい
ズズズズッ……。
足元から伝わってくる振動は、さっきまでのものとは明らかに違っていた。
断続的な揺れではない。ゆっくりと、しかし確実に広がっていく圧のようなものが、大地そのものを押し上げている。
靴底越しに感じる感触が、不快なほど生々しい。
「……でかいな」
筋肉男が低く呟く。
その声にも、わずかな緊張が混じっていた。
***
地面が波打つ。
木々の根が軋み、土が盛り上がり、まるで大地が呼吸しているかのように上下する。
風が止まった。
いや、違う。
空気そのものが重くなっている。
息が、少し吸いづらい。
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「来るよ」
ミラの声が静かに響く。
さっきまでの無邪気な調子はない。観察するような、冷静な声音だった。
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「ユウトさん」
ミラがこちらを見る。
「今度は、さっきのと同じじゃない」
「見れば分かる」
問題は、そこじゃない。
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ズドォォォォォォォォォォン!!
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地面が裂けた。
土と岩が弾け飛び、視界が一瞬で茶色に染まる。
遅れて、重い衝撃が身体に叩きつけられた。
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現れたそれを見て――
言葉が、出なかった。
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「……なんだこれ」
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巨大な“塊”。
ミミズのような形状をしているが、もはや別物だ。
岩と土と肉が混ざり合い、境界が曖昧になっている。
その体は地面と繋がり、どこまでが個体でどこまでが大地なのか分からない。
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そして――
その中心。
黒く歪んだ“核”のようなものが、ゆっくりと脈打っていた。
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ドクン。
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鼓動。
音ではないはずなのに、はっきりと“聞こえた”。
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「……魔力の収束点」
リゼリアが呟く。
その声は、いつもより低い。
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「当たりだね」
ミラが頷く。
目は完全に研究者のそれだった。
「さっき言った“吸われてる先”、あれだよ」
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「……つまり」
筋肉男が一歩前に出る。
「全部あいつのせいってことか」
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異形が蠢く。
地面ごと持ち上がるようにして、ゆっくりとこちらへ向きを変えた。
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「……目、合った?」
嫌な汗が背中を伝う。
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ドクン。
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黒い核が、大きく脈打った。
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その瞬間。
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――ズンッ。
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空気が、沈んだ。
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「……は?」
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身体が重い。
動かない。
足が地面に貼り付いたみたいに、びくともしない。
肺が圧迫されるようで、息が浅くなる。
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「これ……」
ミラが目を見開く。
「吸ってるどころじゃない……引きずり込んでる」
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「何それ」
聞きたくなかった。
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足元の土が崩れる。
崩れるというより――引かれている。
中心の“核”へ。
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「ユウト!」
リゼリアの声が響く。
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「……分かってる」
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逃げるか。
戦うか。
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いや。
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「……これ、触ったらどうなると思う?」
ぼそりと呟く。
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「やめてください」
リゼリアが即答する。
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「やってみよう!」
ミラが即答する。
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「意見割れてる!!」
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だが――時間がない。
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引き寄せが強くなる。
このままでは、全員巻き込まれる。
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「……しょうがねぇな」
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一歩、踏み出す。
足が重い。それでも、無理やり前に出る。
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「ユウト!」
「大丈夫だ」
多分。
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異形がさらに膨れ上がる。
黒い核が、確かに“こちらを見ていた”。
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「……ほんと、やりたくねぇけど」
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手を伸ばす。
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その瞬間。
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――ドクン。
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世界が、歪んだ。
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「……あ?」
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視界の端に、知らない景色が差し込む。
崩れた街。
黒い空。
何かに飲み込まれていく光景。
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「……なんだ今の」
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一瞬で消える。
だが、確かに“見た”。
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「ユウトさん!?」
ミラの声が遠くなる。
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止まれない。
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その日――
村の地下で、
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“何か”が、目を覚まそうとしていた。
***
「……やっぱやめ――」
***
――遅かった。
「ここまで読んでいただきありがとうございます!
ついに“本当の原因”に触れました。
そして、少しだけ意味深な描写も入ってきましたね……。
この先どうなっていくのか、ぜひ楽しみにしていただけたら嬉しいです!
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