第14話 怖がらない新人が来たんだが距離感どうなってるの
宴の余韻がまだ残る村で、俺は焚き火のそばに立っていた。
夜風が少し冷たい。だが人の気配は温かい――はずなのに。
俺の周りだけ、なぜか半径二メートルほど空いている。
「……結界でも張られてんのかこれ」
ぼそりと呟く。
***
「ユウト」
リゼリアが呼ぶ。
「調査を再開します」
「知ってた」
逃げ道はない。
筋肉男も腕を組んで頷いている。全員、やる気だ。
俺だけ帰りたい。
***
村外れの林へ向かう途中。
気配が一つ、増えた。
「――あっ、いたいた!」
やたら元気な声。
振り向くと、小柄な少女がこちらに向かって一直線に走ってくる。
金に近い栗色の髪をポニーテールに結び、ローブの裾をひらひらさせている。
年は十六、七くらいか。
***
「ねえねえ、君がユウトさん!?」
距離が、近い。
というか、近すぎる。
「ちょ、止ま――」
止まらない。
***
「うわああああ本物だ!!」
目の前で急停止。
キラキラした目で、至近距離から顔を覗き込まれる。
近い。近い近い。
「すごいすごいすごい!ほんとに一撃で消したの!?」
「ちょっと落ち着け」
息がかかる距離だ。
***
「ミラ」
リゼリアが低い声で言う。
「距離を取りなさい」
「えーなんで?」
ミラと呼ばれた少女は、きょとんと首を傾げる。
***
「危険です」
「え?」
きょとん。
***
「この人、危険なんですか?」
ミラが俺を見る。
そして、もう一歩近づいた。
***
「ちょ、やめろ」
思わず後ずさる。
***
「えー?全然普通じゃない?」
ミラは俺の周りをくるりと一周する。
観察するみたいに、上から下までじーっと見る。
「うん、普通の人間にしか見えない」
***
「普通じゃない」
リゼリアが即答する。
「この人は規格外です」
「へえ!」
ミラの目がさらに輝いた。
***
「最高じゃん!!」
***
「やめろその反応!!」
***
「ねえねえ、もう一回やってよ!」
「やらない」
「なんで!?」
「被害出るからだよ!」
***
ミラは不満そうに頬を膨らませる。
「でも見たいし」
「見せない」
即答した。
***
「ミラは王都の研究所所属の見習い魔術師です」
リゼリアが説明する。
「今回の異常魔力の調査に志願してきました」
「志願って……」
自分から来たのか。
***
「だって面白そうだったから!」
本人が元気よく答える。
理由が軽い。
***
「あとね!」
ミラがぐっと距離を詰めてくる。
「ユウトさん、魔力の流れめちゃくちゃ変だよ!」
「え?」
初めて聞く情報だ。
***
「普通はこう、流れるんだけど――」
ミラが手で円を描く。
「ユウトさんはね、周りを“吸ってる”感じ」
***
「……は?」
嫌なワードが出た。
***
「吸ってる?」
「うん!さっきの地下も、たぶんそれ!」
無邪気に頷く。
***
「……それってやばくない?」
恐る恐る聞く。
***
「やばいよ!」
即答だった。
***
「やばいのかよ!!」
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「でもね!」
ミラは楽しそうに続ける。
「だからあのデカいのも一撃で消えたんだと思う!」
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なるほど。
――いや、なるほどじゃない。
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「ユウト」
リゼリアが言う。
「話が繋がりました」
「繋げるな」
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「この一帯の魔力が減少しているのは、あなたの影響です」
「やめてくれ」
本気でやめてほしい。
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「でもさ!」
ミラが笑う。
「つまり最強ってことだよね!?」
***
「違う」
***
全力で否定した。
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その時。
ズズッ……と、足元の土が微かに動いた。
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「……またか」
嫌な予感しかしない。
***
「来るよ!」
ミラが楽しそうに言う。
***
「楽しむな!!」
***
その日、村の外れで新たな認識が生まれた。
この男は――
観察される対象になった。
***
「……一番やばいの来た気がする」
俺は小さく呟いた。
本気で帰りたい。
「ここまで読んでいただきありがとうございます!
新ヒロイン・ミラが登場しました!
怖がらないどころか、むしろ興味津々という、今までとは真逆のタイプです(笑)
ここからさらに賑やか&カオスになっていきますので、楽しんでいただけたら嬉しいです!
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