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第四話

 取り敢えずリリヤスの指示通りにギルド登録を終えた。ランクは最下級のEランクだったのは納得いかなかったが、規則と言われたら言い返しができない。

 忍者でも規則は大事だからだ。……よくお供え物の油揚げを盗んではダメという規則は破るが。


 取り敢えず初仕事は、一番儲かるものと宣言した。するとすぐにギルド中から笑われる。

 リリヤスはそんな木葉にため息をつきながら、薬草集めの仕事を見繕ってきた。


 今は平野で尻尾を振りながら草をジーッと見つめているところだ。


「これが薬草!?」


 引っこ抜き、近くにいたルディに見せる。


「残念、それは雑草だね」

「うむむ……難しすぎる」

「いや、誰でもできる仕事なんだけどね?」


 手に持った雑草を捨てながら、木葉は手についた土を払う。頬をぷくっと膨らませて、ルディを睨んだ。


「誰でもって子どもでもできるってことだよね?」


 ここでできないって答えが返ってきたら、ほら嘘じゃんって子どもじみた返しをしようとした。しかし──


「村にいる子たちなら五歳くらいでやってるんじゃないかな」

「……え?」


 予想外の言葉に固まる。

 耳をピクリと動かして、拳をギュッと握った。


「だ……だったら赤ちゃんにもできるの!?」

「うん、それはもう無理やりだね」


 たしなめるような苦笑いに、またぷくっと頬をふくらませる。


「取り敢えず、真面目にやって」


 脇で見ていたリリヤスが、羊皮紙に何かを書き込みながら口を出す。


「だってわからないんだもん!」


 尻尾をたれさせながら木葉がいうと、リリヤスは半眼になりながら羊皮紙を見せてきた。


「これが探してる薬草」


 見せてきたのは、異様にうまい草の絵だった。


「分かった?」

「……なんとなく?」

「じゃあこれは?」


 今度は違う紙を見せてくる。さっきと似たような草の絵だ。


「……薬草?」

「これは名前のついてない雑草」

「違いないじゃん!」


 二人のやりとりを見ていたルディからまた笑い声が聞こえてきた。



 あれから1時間ほど経って、ようやく目標の半分を越える。

 地面に顔を擦り付けながらお尻を高くあげる。尻尾は彼女の真剣さを現すように揺れていた。


「ねぇ、コノハちゃん」


 そんな彼女にルディが話しかけてくる。


「なーに?」

「その尻尾っていつも手入れしてるの?」

「一時間かけてしてるよ」


 その答えを聞いて、なるほどという彼の短い言葉が返ってきた。


「……ルディまさか触りたいと思ってないよね?」

「そ、そんなことないよリリヤス……僕は至って真面目さ。うん、ちょっとモフモフさに誘惑されかけたけども」


 何か話してる二人を置いて、木葉はこれだと草を強く引っ張った。


「あ、それは──」


 リリヤスの制止を聞かずに、一気に引っこ抜く。現れたのは人面の球根を持つマンドラゴラだ。これは低ランク冒険者殺しとも言われる雑草に擬態する魔物である。駆除しても駆除してもどこからか生えるため、ギルドにとっては頭痛の種であった。

 低ランク冒険者殺しと呼ばれる所以は、鼓膜を破壊するほどの金切り声を上げるからだ。


 木葉の引き抜いたそれも、例に漏れず大きな金切り声を出そうとしている。近くで聞けば、再起不能で間違いない。


 ルディが剣柄に手を伸ばそうとしている。そんな彼よりも早く、木葉はマンドラゴラの首と思われる部分を手で絞めた。

 

『きえ……!』


 変な声を上げて、マンドラゴラは大人しくなる。


「やった!」


 それを掲げる木葉と対照的に、二人は固まり顔を見合わせている。


「あの、コノハさん……それをどうするの?」


 静かに聞いてくるリリヤスに、木葉は首を傾げる。耳をピクリと動かして、尻尾を揺らす。


「何って、これ万能薬の元」

「マンドラゴラが?」

「……この叫び草、マンドラゴラって言うの?」


 またしても二人は目を合わせていた。

 リリヤスは真剣な表情を作り、ルディは笑みを収める。


「……ええっとちょっと待ってね。コノハさんの故郷では、それを薬草として扱ってるの?」

「うーん、たまにしか取れないから普段使いはしてないけど……大抵の病気は治せるよ」


 だって常識だよと付け加えると、ルディが咳払いをする。


「常識ではないな。むしろ、こいつは魔物として厄介物扱いされていた」

「魔物? こいつが?」

「そう、弱いけど魔物」


 その言葉にピクピクしてるマンドラゴラと目を合わせる。そして腹を抱えるように木葉は笑った。


「何を言ってるの? これ、ただの草だよ?」

「……そうだね。うん、そうだ……僕らからしたらただの草に変わりない」


 無理やり納得させているようだったが、ルディはどこか腑に落ちないような表情である。

 

「それよりもコノハさん。そいつが万能薬になるってことを詳しく教えてください」


 リリヤスは会話に割り込み、急に丁寧な言葉遣いになるのだった。

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