第25話 十人十色
なるべく早くとは何だったのか…言い訳は後書きにします。どうでもいい人は飛ばして下さい。すみません…
「よぉ、坊主!オメェか?新入りってのは?」
またか…また夢なのか…
「は、はい…」
「ハッ!縮こまってんじゃねぇよ!目が黒いの気にしてんのかぁ?そんなんじゃぁここで生きていけねぇぞ!」
「えっと…あなた、は?」
「俺かぁ?俺はラド、ラド・イル。コレでもAランク冒険者なんだぜ!」
「え、Aランク⁉︎」
「おうよ!お前さん、なんでも母ちゃんの為に必死こいで金ぇ稼いでるらしいな!」
「え、えぇ…まぁ…」
「健気なこったぁ…よぉし!俺が一人前の冒険者にしてやる!付いて来い!」
「え⁉︎そ、そんな突然!」
「返事は!」
「は、はいッ‼︎」
ラドさん…
「おおう!いい面構えになって来たじゃねぇか!」
「あざっス!」
「口も一丁前になりやがって!この野郎!」
「や、やめて下さいよ…」
「ははは!…お前ももうCランクかぁ…」
「ラドさんのお陰っスよ」
「いやお前の才能だろ。お前ならきっとSランクだって取れる!この俺が言うんだから間違いねぇ!」
「無茶言わんで下さいよ…あんなイカレたの、早々慣れませんって…」
「ハハッ!期待してるって事だよ!」
「…あ…アザッス…!」
俺は、何処へ向かってんだ?
「そうか…母ちゃん死んじまったか…」
「はい…覚悟はしてました…」
「冒険者続けんのか?もう、やる意味も無いだろう…」
「いえ…続けます。コレが俺の仕事ですから…!」
「……そうか…ふっ、ハッハッハッ!そうこなくっちゃなぁ!よぅし今日は特別だ!ぶっ倒れるまで付き合ってやるぞ!」
コレでいいのか?
「ラドさん‼︎いくらアンタでも無理だ‼︎速く逃げ…」
「馬鹿言うな!んな事したら皆御陀仏よ…ならまだ俺の方が希望ある!」
「逃げのびれる可能性だってあるじゃないか!なんで戦おうとするんだよ!」
「…俺はな、昔弟がいたんだ…その弟はガキの頃、俺が連れ回したばっかに魔物に襲われて死んじまった…」
「な、何言って…」
「誰も助けられねぇ!何にも出来ねぇ!そんなの懲り懲りなんだよぉ‼︎」
「…」
「俺は弟とお前を重ねてた!バカみてぇだろ?もうガキん頃の話だってのによ…」
「そ、そんな事…俺だってラドさんの事、家族みたいに…」
「だったら尚更だろ……お前は、誰かを守れるような人間になれよ。じゃぁな…」
「⁉︎待ってくれ!ラドさん‼︎行くな!行くなぁぁぁぁあああッ‼︎」
目を開けば朝になってる。
俺はちゃんと出来てるか?正しく出来ているのか?
分からない…
「アレ?今日は起きてるんですかい?」
ブルーが部屋に入って来た、もうそんな時間なのか?
「あぁ?ああ、昨日のは偶々だって」
「そうなん?ならいいけど…王都まではまだ暫くありますから、気をつけて下さいよ?」
「分かった分かった!じゃ、行くかぁ」
「今日はまだ時間ありますけど…」
「早起きしちまったのか…ま、いいや」
立ち上がり、部屋の外へと向かう…
『お前は、誰かを守れるような人間になれよ』
…俺は、アイツを守っているのか?守れているのか?
…今日は、長い一日になりそうだ…
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馬車生活4日目…今日もブルーは馬車の上にいるのであった!
そして馬車の中からは話し声が〜…
「ひ ま だ」
いやマジで。あ、でも襲撃は勘弁。
あぁ、空が青いなぁ…
「んなこたぁ言ったて仕方ねぇだろうがよぉ。つか、声届くんだし混ざりゃいいじゃねぇか」
「そんな…僕ごときCランク冒険者が姫様にお声をかけるなんて…」
「今更過ぎんだろ!…ってCだぁ⁉︎嘘つけ、お前でCランクならSランクは今頃、世界を破壊し尽くしてるぞ⁉︎」
「え?ダジャレ?」
「言ってねぇよ!はっ倒すぞ!」
「まぁまぁ落ち着いて、ホラ」
全く、カルシウムが足りてないんじゃないかなぁ!
お魚食べろ!お魚さん!
と、言うことでギルドカードを渡し、納得してもらう。
「ま、マジでCだ…お前何してたんだよ…」
「何もしてません」
「あ、だからCなのか」
え?なんか俺の思ってたのと違う感じで納得された…
アレ?今の言い方だと俺がサボリ魔みたいじゃね?
まぁ、いいや!
「詮索はしないっつったけどよ、そうなると俄然気になるなぁオイ。お前冒険者になる前はなにしてたんだよ」
「修行をしておりました」
「まぁ、そう簡単に言わねぇか」
いや、結構本当なんだけど…
「よっし!じゃぁお互い一つずつ秘密を暴露するってのはどうだ?」
「え⁉︎なんですかそのノリ、ちょっとま…」
「はい!言うぞ〜!俺の秘密はだなぁ…ズバリ金欠だという事だ!」
「えぇ〜…」
オイAランク、何してる。
「まさか…護衛の依頼受けたのって…」
「コレもちょっとあるな」
どんだけ切羽詰まってんだよ⁉︎マジで何してるの⁉︎前にも言った気がするけど、Aランクが金に困る事なんて先ずないんだぞ⁉︎
「さぁ、俺は言ったぞ!次はお前だ!」
「ヴァッシュさんが勝手に言いだしたこと…」
「言えや」
「ハイ…」
え〜、俺の秘密かぁ〜……適当なのでいいかな?
「俺、実は前世の記憶持ってます」
「……」
あ、ダメだったっぽい。目線が冷たい。
嘘じゃないんですってば!っても信じて貰える訳ねぇか。説明ダルいし…
え〜と、じゃぁ…あ〜。そうだ!
「こんなんどうです?」
「⁉︎」
目を見開くヴァッシュさん。かなり驚いているようだ、よし、コレでいいな…
イヤリングとっただけだけど。
まぁ、このカラフルしてる世界でコレはかなり衝撃的な筈だ。黒髪黒目。
「お前、それ…」
「はい、生まれつきですよ」
「……成る程、そりゃ亜人側にもなる訳だ…目だけでも嫌われ者だってのに、どんだけ苦労したんだよテメェ」
「いや、そんなんでも無かったですけど」
「いやいや、んな訳ねーだろ。俺なんてコレの所為でずっとソロだ」
「いやいやいやそれ性格のせいじゃないですかね?」
「いやいやい…オイ、今何つった?」
「なんでもないです」
目だけでも嫌われ者、か。俺が普通の所に生まれてきてたらどうなってたんだろうか?それを考えると運がいいのかな?
「まぁいい。それよりお前、なんで黒髪とか黒目が嫌われるか知ってっか?」
「え?縁起が悪いから〜とかじゃないんですか?」
「まぁそれもあるけどよ、何でも、昔話、まぁ、伝説だな。それが関係してるらしいぜ?」
伝説?なんだろう…そういや俺、この世界についても詳しくないけど、歴史とかになったらもっと知らんな。コレは聞いといた方がいいかもしれん。
「どんな伝説なんです?」
「ああ、確かなこんな話だったな…その昔、人類が生まれるよりもっと前の事、そこでは天使と悪魔が争っていた。らしい」
伝説ってか、神話やな!最初っから飛ばす飛ばす…
「で、その二つは滅んで、時代は終わった。次に人類の時代になってだな」
「展開早っ⁉︎」
「いたのは人間族と、亜人族。しかし、亜人族は悪魔の血を引いていて、人間は天使の血を引いていたそうだ」
「滅んだんじゃないんかい…」
「その中でも色濃く悪魔の血を引いていたのが、所謂魔王だ。初代魔王は黒髪黒目、それが悪魔の特徴であり、象徴だったらしい」
赤の方が血を連想させてマズイ気がするの俺だけなんだろうか?日本で慣れすぎたのかな?黒赤のヴァンの方がよっぽど魔王っぽいだろ。
「それに対して勇者は白髪白眼、それが天使の特徴であり、象徴だとさ」
羽とか天輪じゃねぇの?なんだ白髪白眼って…病人じゃねぇか…でも確かにシルヴィアは白髪だったな、他に白髪なんて見ねぇし…オイ宗教、まさかそれ基準で勇者とか言いだしたんじゃねぇだろうな?
「だから黒髪や黒目は嫌われる、逆に白髪や白目は好かれるんだとよ」
「白髪なんてジジババにでもなりゃみんな同じだと思うんだけどな」
「それは天使に近づいてる証拠なんだと、アホらしいだろう?」
「ですね」
天使に悪魔か。つか悪魔の血を引いてる人種なのになんで魔王になるんだよ…劣化してるんじゃねぇのか?アレか、神話の謎現象か…ん?神話?もしかして…
「それって、イーシャ教ってヤツの教えですか?」
「お?よく知ってんな、そうだぞ」
そうだった。
え?じゃぁ何?シルヴィアは「黒いの=悪魔」ってな感じに教えられてんのか?会ったら俺もヤバイんじゃね?
まぁ、そうそう斬り掛かってきたりはしないだろうけど、そこ等へんどうなんだろうか?前から少し心配ではあったけど、シルヴィアは亜人族をどう思っているのだろう?
街を壊され
家族を殺された
「アレが魔王の娘がのっている馬車だぁ!』『潰せぇ!』『ぶっ殺せ!』『首を取れ!』『魔王に送りつけてやる』
『何が友好条約だ‼︎ふざけるな‼︎俺達が一体どんな気持ちで戦って来たと思っている⁉︎同族が死に!友が死に!仲間が死に!それでも家族の為、王の為、国の為にと戦って来たんだぞ!それがなんだこの有様は⁉︎』
恨んでいるんだろうか…
俺が生きていて、ヴァンと仲良くしている事を知ったら、どう思うんだろうか?
あの純粋な娘は…どう育ったんだろうか……
お兄ちゃん超心配。
「つっても、俺はあんなイカれた宗教入ってねぇかんな?気味が悪い」
「まぁ、入ってたらそんな口調じゃないでしょうしね」
「…何が言いてぇんだ?」
「何でも〜?」
しっかし、そうなると、黒目のヴァッシュさんってどれだけ大変な思いして来たんだろう?
ま、それでもこうやって明るくしていられるんだ。良い人生じゃ無かったとしても、悪い人生でも無かったんだろ、きっと。
なんて考えてたらポツリと上から水滴が落ちてきた。
コレは…
「お兄様、雨が降って来ましたわ」
「みたいだな〜…」
「しくったな、雨が凌げる装備持って来てねぇぞ…」
「俺もだわ…」
「一旦、何処かで休みますか?」
その時だった。
「ダメだ‼︎」
「「…!」」
ヴァッシュさんが、大きな声を出した。 それは会ってから初めて聞く声色で、俺もディアナちゃんも目を見開く。
「ここで休憩を挟めば次の街へつくのは夜遅くになる…暗い中で行動するなら時間は短い方がいい…」
なんだ?ここで休むと都合の悪い事でもあるのか?
「…………ならば、馬車の後ろに組み立て式の屋根の部品と、雨合羽があるので、使って下さい」
ボーグさん…そう言う事は早く言おうよ…
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
雨が続く…
やだなぁ、合羽ってコレ布やんけ…いや皮か、なんか水弾いてるけど、顔面もろ当たりだし。
つか、馬車ん中入れてくれてもよくね?片側詰めればギリギリ入れるよね?何?イジメ?
はぁ〜もう夜だっての…もう直ぐつくはずなんだけどなぁ〜。
とか言ってたら見えて来たぞ。
「おーし、もう直ぐ着くぞー!」
うん、ヴァッシュさんも見えてるし幻覚とかじゃない。
しっかし、毎回毎回コレだと旅感がぜんぜんないな…とりあえず見張りの兵に許可貰って街に入…
「待て!」
「ん?どうしましたハングさん?」
「この街、おかしいぞ…人がいない‼︎」
「は?」
どう言う事だ?人がいない?カルさんも感じているのか?気配を未だに読めない俺にはわからないが、こんな嘘言う筈ない…
「嫌な予感がします…ブルーさんはその冒険者を…」
「ッチ‼︎死ねぇ!」
ボーグさんが何かを言いかけた時、街の入り口にいた兵が斬りかかって来やがった!
罠か⁉︎
マジかよ!人が払われてるって事は、街ぐるみだってのか⁉︎それとも何か情報を流された?
いや、今はそれどころじゃない。
「掛かれェッ‼︎」
至る所から兵が出て来やがった‼︎
「バカな⁉︎気配は完全に無かった筈だぞ⁉︎」
気配が無かった?そんな事あるのか?
なんだ?なんだ⁉︎状況が目まぐるしく変わって行く…何が起きてる?
クソが‼︎
またディアナちゃん狙いなのか⁉︎兎に角この状況はマズイ!離れないと!
「一旦街から出よう!戻って迂回す…」
言いかけ、後ろを見て目を疑った。後ろにある街道、そこにはーー
「「ォォォォオオオ‼︎」」
ーー街道を埋め尽くす程の騎兵がいた。
は?一体何処から?さっきまで誰もいなかった筈だ⁉︎
完全に囲まれた、もう馬車は使えない。同じ事を思ったのだろう、全員が馬車から出る。
「英雄様!姫を頼みます!後ろから援護しますので、どうにか抜けましょうぞ!」
「分かった!エティア!ツァイ!後ろを頼む!」
「了解した!」
「はいよ〜!あはは、凄い事になったね…!」
「ハングさんとボーグさんは…」
言いかけた時、
「早く行けェ‼︎ここは俺がどうにかする‼︎」
ヴァッシュさんがそう言って襲い掛かろうとしていた数人を蹴りの一撃で吹き飛ばし、そのまま大袈裟な動きをしながら敵へと向かっていく。
囮⁉︎マジかアンタ⁉︎流石のAランクでもコレはキツイぞ!軽く百はいやがる上に囲まれてんだ、下手したら…死ぬ!
「俺も残ろう!道を作るぞ!ボーグ殿!後を頼みます!」
ハングさんも残るつもりか!どうする⁉︎
「分かりました!見た所相手は一般兵、二人で十分の筈です!では先に行きましょう!」
クソッ!こう言うのは実戦経験してるボーグさんの方が的確な指示を出せる。従うしかないな…
悪いヴァッシュさん、後で絶対土下座する!
「ディアナちゃんつかまって!」
「はい!」
直様肉体強化をかけると、ディアナちゃんを抱えて跳ぶ。屋根を伝って逃げるつもりだ。
ヴァッシュさんとハングさんが心配だが、仕方ない。急に兵が現れたんだ、急に増援が来る可能性だってある。今はディアナちゃんを安全地帯まで送るのを優先させよう…
翼のあるボーグさんが先行し、残りの皆が後を追う形になる。
だけど状況は悪くなるばかりだった。
「くッ…何故こんなにも兵が⁉︎」
街中に兵士がいる。中には騎士まで混じっていて、その数は驚く程多い。どうやってこんな数用意したのか不思議な程だ。
何処から湧いてる?狙いは十中八九ディアナちゃんだろうけど、何で場所が割れた?山を張ってたってか⁉︎
王都へのルートで何処を通るかは誰も知らない筈だ、知っていたとしてもいつ通るかだって分からない、なのに何でこんなにも兵が⁉︎シルトン王国がラシュフォンドを裏切った?いや、あり得ない、数は多いが、王国が殺りに来てるとしたら戦力が塩っぱ過ぎる…
どうなってんだよ畜生!急展開も過ぎるぞ‼︎
「面倒だね!団長!先行って!私はここでコイツ等と遊んどくから!」
「ツァイ!一人では危険だ、私も残ろう!」
「お前等!」
「足を止めてはいけません‼︎」
「だけど‼︎」
「大丈夫だよ団長!ここは屋根の上」
「雑兵は登るのも一苦労だろうな…だが、私達は攻撃出来るぞ!」
「実は投擲も結構得意なんだよね〜」
「そう言う事です、早く行きましょう!」
「ったく!分かった!無理すんなよ!」
「エティアさん!ツァイさん!どうかご無事で!」
戦力的にはエティアやツァイの方が上の筈、幸い、敵兵は剣や槍が多い、ちらほら弓兵も見えるが、二人に当たるとは考え難いな。やはりこの2人を足場の悪い屋根の上で倒すなら、魔法使いが必要だろう。
待てよ?なんで魔法使いがいないんだ?
湧き出る敵。
見当たらない魔法使い。
コレってもしかして…
「ボーグさん!魔法使いがいません!」
「えぇ、私も気になっていたところです…となるとコレの現象は新魔法?一体何をしたと言うんだ…気配を消す魔法?姿を見えなくしたのか?なら何故今は分かる?条件つき?」
「転移魔法ってヤツじゃないですか⁉︎」
「転移…魔法⁉︎」
そう、ゲームとかに良く出てくるアレだ、瞬間移動を魔法でやるあの転移魔法。
魔法のあるこの世界だ、あり得ない話じゃないだろう。
でも、もしそうならとんでも無く厄介だぞ!相手は何処から俺等を見てる?何処まで逃げればいい?転移魔法の範囲は?敵の数は?そもそも逃げ切れるのか?
不安要素ばかり頭に浮かぶ…クソ、本気でどうなってんだよコレは…もう少しで街の反対側まで抜ける、だけど広い場所に出て大丈夫なのか⁉︎
「君は中々頭がいいね」
「ッ⁉︎」
そう、声が聞こえた時、俺は反射的に跳んだ。
直後ーー
「ぐぁッ⁉︎」
「ぐ…‼︎」
「なっ⁉︎」
「きゃっ!」
ーー爆発。
俺は咄嗟に魔法障壁を張ったが、魔法に疎い俺の障壁なぞたかが知れてる。当然の如く一瞬で破られた。
幸い、ディアナちゃんを庇う形で、爆風を受けたのは俺だったが、そのまま吹っ飛ばされてしまう。
お陰でグルグルと回りながら地面へ向かうハメになった。
だが大丈夫!伊達にスピード勝負な鍛え方はしていない!このくらいなら余裕で追いつくさ!
俺は体を捻って強制的に足を地面へ向け、そのまま着地。地面を削りながら後退した。
「お兄様…背中が…」
「あぁ、超痛ぇ…でも耐えれん程でもねぇし大丈夫。それより…ちょっと激しく動くけど勘弁してくれよ?」
「へ?」
だって、目の前にその魔法使い…いや、魔法戦士がいるんだからさ。背中焦げたくらいで騒いでられんぞ…
「敵にして置くのが勿体無いくらいだ!ブルー・アルトリオ君?」
長めの茶髪に紫の目、身長は170手前くらいだろう。顔立ちは良く、体格もそこそこいい。そんな男が目の前に立っていた。
鎧を身につけ、戦士っつーより騎士か、それも上等なヤツ。鎧が他のと全く違う、オーダーメイドなのか?よくよく見れば体格がいいんじゃない、そのゴテゴテした銀色の鎧の所為で良く見えているだけだ。
コイツが指揮官か…
「誰だテメェ?」
「ふふふ…いいよ、教えてあげようじゃぁないか!俺はアドニス・ホート!ホート伯爵家が長男!アドニス・ホート!世界を変える男だッ‼︎」
……。
なんだ?この二重の意味でヤバそうなヤツは…つかなんで二回言った…
って、そんな場合じゃねえんだよ!
いや、でも本気でヤバイのかも知れん。カルさんとボーグさんが見当たらない…何かされたか?いや…強いヤツをわざと残して置いて、向こうにぶつけたのか!
いや、固まって考えるより、兎に角…
「逃げるのが優先だ!」
「え?ちょ!」
ディアナちゃんを左脇に抱えた状態で思い切り地面を蹴り、近くの家の壁へと向かう。更にその壁を蹴り、アドニスとか言うヤツの後ろへと抜けるが、どうやら大したヤツじゃ無かったらしい、追えていない…ん?アドニス?どっかで聞いたような?
「クッ!逃げられると思うなよ!」
なんか言ってる、逃げよう…
よくよく考えれば、そんな強いヤツ残しとくくらいならディアナちゃん抱えてる俺の方に回すだろうし、何かしらの足止めはあったとして、あの人達がヤバイって事は早々ないだろう。
もう直線上に門が見えてきてる。反対側まで来たみたいだ。
このまま一気に街を出る!
そうして門を蹴り破るとーー
「嘘…だろ?」
ーー兵団が待ち構えていた。
その数1000はくだらないだろう。中には魔法使いらしき服装の者も混じっている。
冗談じゃないぞ…まだこんな戦力が残ってたってのか?もしかして皆やられちまったのか?俺はまた楽観視してたのか?
じゃぁディアナちゃんはどうなる?
俺はどうする?
クソッ!
クソッ!
なんなんだよコレ!巫山戯んなよ!
頭が回らない!焦る一方だ!それすら分かっているのに落ち着けない!
ディアナちゃんを見れば、怯えてはいない。真剣な表情で此方を見返している。強い娘だ…自分の立場が分かっているんだろう。
こんな事が前にもあった気がする…そうだ、シルヴィアの時だ。ヴァンに会った時でもある。
あの時はどうした?そうだ、時間稼ぎだ。
「テメェ等の目的は一体なんなんだ!」
でも、稼いでどうするよ?あの時とは何もかもが違う。
守るべき対象は敵に見つかっているし、逃げ場もない。
「簡単な事だ!魔王の娘を殺す‼︎それ以外何がある?」
「なっ…!」
「言っただろう?逃げられると思うなって」
アドニス・ホート…なんで俺の行く先にいんだよ。そういや俺の事「頭がいい」とか言ってたな、じゃぁ、転移魔法ってのは当たりかよ…
最悪だ。
どうやって切り抜ける?
皆はどうする?
助けるのか?
助けられるのか?
そもそも生きてるのか?
あんな事言ったってのにこの状況ーー
『俺が強いのは体だけだ』
何が体だけだよ…
『強い者は、弱い者を守らないといけない』
何が守るだよ…
ーー切り抜けられる気がしないんだ…
「…そんなに亜人が憎いのか…!」
でもまだ諦められない…ディアナちゃんがいるんだ。諦めてたまるか!
それで何とか繋ごうとして出た言葉がコレだ…この問い、エティアとツァイにした…
『人間が、憎くはないのか?』
「憎いかだって?」
『憎いさ』
『うん、憎いね』
「憎い訳ないじゃないか!」
『確かに憎いが、それだけだ』
「俺は貴族!それも長男だ!死んだら困るからってね、戦争になんぞ出ていないのさ!だけど戦争に出たヤツ等は随分魔族を恨んでるみたいでね!魔族を滅ぼすのを手伝ってくれと、ちょっと声をかけたらこの通り!ははは!馬鹿みたいだよねぇ!利用されてるって分かってるのに、俺への怒りより君達魔族への恨みが勝ってる!だから誰も引かない裏切らない!目的の合致した軍隊!そこに転移魔法が加わって最強だ!いきなり現れる敵にどうやったら対策できるのかなぁ?出来ないよねぇ!俺は世界を変える…魔族を滅ぼす!そして英雄になってやりたい放題やりながら暮らすんだよ!コイツ等は利用されてても魔族が殺せればそれで満足なんだ!アッハッハッハッ!」
最悪だ…
最悪だ…
なんだその回答?
真逆。尊敬も誇れもしない…クソ以下な考えだ!
巫山戯てんのか?オイ…
焦りが怒りへと上書きされていくのが分かる。
「お兄様…もうダメそうですわね。私を置いてに…」
「それ以上言うな。自分が死んではいけないって理解してるから今まで言わなかったんだろ?優しいディアナちゃんの事だ、本当なら真っ先にそう言いたかったに違いない…それをここまで我慢してたんだから、最後まで諦めるな」
「…しかし、この状況をどうしますの?お兄様一人ならまだしも、私と言うお荷物があっては…」
「いいから…諦めるな」
恨みでもない…怒りでもない…ただの欲じゃねぇか。
あの兵士達もそうだ、利用されてるって分かっているだ?ならなんで味方してんだよ?魔族を殺せればそれで満足?やってる事可笑しいだろ、それじゃ同じ、いや、大切なものを奪ったヤツ以下じゃないのか⁉︎
「……分かりました。では、せめて下ろして下さいまし、私だって王家の娘、戦えます」
「ダメだ…もしもの事があったら洒落にならない」
「でも!」
「良いから!体だけ強くなったんだ…守らせてくれよ…」
「…!…ハイ…」
構える。
抜刀の構えだ。
多分何人…いや、かなり殺す事になるだろう。それが仕方ない事だなんて思わない。
でも
「お?ヤル気かな?」
殺るしかない!
「じゃぁ頼んだよヘイラー君!」
ヘイラー?何処かで聞いた名前だ?どこだ?
いや聞いたんじゃない、見たんだ。
『ブルーさん、ギルドカードについては詳しくありません、本物か確認を』
「ッタク…自分でやれってーの」
兵士の間から真っ黒なローブを着た男が歩み出る。その顔は見えないが、聞いた事のある声だ…
『何してやがる馬鹿が!敵を見ろ!』
十人十色。この旅で何度も思い浮かんだ熟語だ。
アドニス見たいなクソ野郎もいれば、エティアやツァイの様に尊敬出来る人間もいる。皆違って、同じ人なんて一人もいない、その考え方も違う。だったらーー
「嘘だろ…」
「いくぞオラ」
ローブ内側から取り出されたのはひし形の刃物、持ち手はなく全てが刃で、完全に投擲用の暗器かなんかだろう。それを3本一気になげてきた。
「ぐッ‼︎【横断】!」
横一閃の一撃。それで3本全てを叩き落とすが、ローブは目の前まで迫っていた。
「なんでアンタが…」
「フハッ‼︎」
軽快な笑い声と共にその両腕が突き出される。その過程で手の甲を伝い、袖から刃物が飛び出してくるのが分かった。
普段なら余裕で一撃浴びせられる様なスピードだったが、この時ばかりは躊躇ってしまった。
俺は刀を縦にし、ローブは袖から出てきたパタの様な武器を交差させ、鍔迫り合いとなる。
瞬間、ローブの中の顔が見えた。
ーーアンタの思いってなんだよーー
「よぉ?さっき振りだなぁ?ブルー・アルトリオ」
ーーアンタの考えってなんだよ!ーー
「ヴァッシュ・ヘイラー!」
ーーヴァッシュ・ヘイラー!
急・展・開!
どうしても自然な感じでヤバイ方向に向かえませんでした(文章力ナッシング)表現とかも使い回しが多くて気に食わなく、何回か直したんですが、それでも多いです…読み難いです…申し訳ない。
それと、今後の展開やストーリー作成について考えていたんですが、その過程で「頭の中にあるもう一つの作品」の方へ思考が全力疾走しまして…ようは気が散って書けませんでした。申し訳ない。
次回からは得意(笑)な戦闘シーンになるので、期待してて下さい(自らハードルを上げる)




