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第24話 思い

遅れた…きっと文字数が多いからだ…(白目

『ヴァッシュ!ヴァッシュはいるかい!』


あ?なんだこれ?


『何ですか父さん?』


どっかで見た光景だ。こりゃたしか…


『おお!そこにいたか。聞いてくれ、先程大きな商談が入ってな、上手く行けばもっと豊かな生活が出来るかも知れないんだ!』

『本当ですか⁉︎』

『あぁとも!下級貴族の生活もとコレでおさらばだ!お前達にもっと楽をさせられるぞ〜』

『あらあら、あなたったらそんなにはしゃいじゃって。ふふふ、ヴァッシュはまだ幼いのだから分からないでしょう?』

『む、むぅ。すまん』


あぁ、夢だなコレ…もう何年も前の事じゃねぇか。


『でも、父さんが嬉しいなら僕も嬉しいですよ!』

『おお!そう言ってくれるか!』

『ふふふ、ヴァッシュは優しいわね』


見たくもない…夢だな…。


「…さん…」


ん?なんだ?これは誰の声だ?


『クソッ‼︎やられた‼︎騙された‼︎』


ぐっ…なんで飛ぶんだよ!


『あ、あなた!落ち着いて!』

『コレが落ち着いていられるか!このままでは…』

『父さん?母さん?』

『…ヴァッシュ…』

『どうしたん、ですか?』

『な、なんでも無いさ、お前は何も心配しなくていいんだよ』


やめてくれ!見たくない!


「おー…ッシュさーん…きないぞ…どうするかな…」


誰だ?誰なんだこの声は?


『ねぇ、どうしてお父さんは一緒じゃ無いの?どこに行くの?』


またか!どんどん近づいていやがる!夢なら覚めろよ!クソッ!


『大丈夫よ、お父さんも…直ぐ、来るから』

『お母さん?なんで泣いてるの?』


「ヴァッ…さん…ないと、なぐ…すよ〜」


だから誰なんだよこの声は!いや、最近聞いた事がある声だ、確か…あの青髪の…


『お父さん!会いたくてお母さんの所抜け出しちゃったよ!お父さん?どこにいるの?』


⁉︎止めろ!それ以上進むな!


「ヴァッシュさん!」


いるなら起こせ!早く俺を起こせ!頼む!


『おと…う、さん…?』


止めろぉぉぉおおお‼︎


「起きろぉい‼︎」

「ぶぐほぉッ⁉︎」


激痛で目を覚ます。見ればブルーが拳を握っていやがった…コイツ、腹を殴りやがったな…


「ぐぉぉお…なに、しやがる…」

「いやぁもうすぐ出発の時間なのに全然起きないもんで、強行手段をとらせてもらいましたっと」

「あー、もうそんな時間か…」


なんだ、思いの外馬鹿みてぇに寝ちまったな…疲れてんのか、それとも緊張してんのか。


「よく寝てましたね〜。なんかいい夢でも観れたんすか?」

「いや…別に…それよりもう直ぐ出発なんだろ?なら早く行こうぜ」

「は〜い」


この話題は話したくない。さっさと切って、元々纏めてある荷物を持ち、部屋の外へと向かう。

ブルーもそれに続くが、ちょっと言わなきゃいけない事思い出したから足を止める。


「?どうしました?」


まぁ、当然の疑問だなぁ。だけど訳わかんなくていいんだよ、ただ、一言。


「…起こしてくれて、ありがとよ…」


悪夢から覚まさせてくれた礼だ。


「は、はぁ?」


困惑するブルーを余所目に俺は部屋の外に出る。

と、思ったんだが、固まってらぁアイツ…声くらいかけておくか。


「オラ、行くぞ」

「あ、え?ちょ、ちょっとまって下さいよ!」


もう二度と…あんな苦しみ味わってたまるかよ!その為にも、この依頼、ぜってー成功させる…

俺はより一層気を引き締めて外へ向かった。


-----------------


ガラガラと馬車が走る。御者はヴァッシュさん、そして俺は馬車の上。相変わらず街道と草原と森ばっかの風景を眺めてる。

暇だな〜昼寝でもするかな〜そん位のスペースはあるだろコレ。って事で寝転がり、空を見る。快晴だ。

ん?コレ、雨降って来たらどうすんねん…

とか考えてたら矢が降ってきた、ふざけんな。


「ほっ、と」


1日ぶりの襲撃、とりあえず矢は掴んどく。ふと思ったんだが、その内銃弾とかも掴める様になんじゃね?まぁ、銃ないけどさこの世界。

にしても…単騎か?矢の数が少なすぎるぞ、無茶すんなぁ。

だけど周りに人影が見えない。


「ブルー、右だ。林の中」

「ああ、そっちか。中々の腕ですね」


言われるがまま見れば確かに林がある、でも距離も結構あるんだよコレが。軽く1キロはあるな。

あそこから動いてる馬車、しかもピンポイントで当ててる。だけど、それだけじゃない。


「だな」


って言ってヴァッシュさんが腕を上げれば、その手には矢が握られている。

キロ上回る距離、速射スピード、そしてこの正確さ。相手の技量が如何に高いかよく分かる。

強いぞC…多く見積もってBだ。

ここは一旦指示をあおごう。


「ボーグさん!追撃しますか?それとも様子見にします?逃げる可能性ありますけど」

「いえ、その必要はありません。向こうからお出ましの様です…」


その言葉を聞いてもう一度向こうを見てみれば、林の前に誰かが立ってる。

素でもどっかの民族並みに目はいいが、さらに視覚強化を使い、相手を臨む。

多分男だ。背は俺よか高いくらい、全身を黒くてボロいローブの様なもので覆い、頭には黒い布が巻きついていて、その顔を見る事は叶わない。手には長弓、それを此方へ向けている…って事はまぁ、撃ちますよねぇ〜。


「よし、ちょっと行ってきます」

「おい、ちょっと待…」


ヴァッシュさんの待ったを無視。何でもない斬撃を飛ばし、矢を落としつつ馬車から飛び降りる。

その間にも相手はバンバン撃ってきてるので、斬撃と刀で応戦。全て叩き落とす。

だいぶ近くまで来たけど…と、ここで相手が弓に矢を3本番えた。

ゲームかよ…

さて、どうするかな?放たれた三本の矢は1本俺、残り2本は俺を避けるように飛んでいる。多分アレ魔法がかかってるんだろな、起動がおかしい。俺を避けて馬車を狙う気か。まぁ、あの馬車に集中してる戦力の方がおかしいから大丈夫だろうけ…

『ヴァッシュさんの目的が誘導で、誘導先が俺等の軌道と重なってたら?』

『この先、何かが起こる…』

もし、ヴァッシュさんがこのタイミングで皆攻撃したらどうなる?あの人はAランクだ、いくら皆が強いったって、あの狭い空間じゃ行動に制限がかかる。

この襲撃者もグルだったら?

もっと力を隠し持っていたら?

全部仕組まれた事だったら?


「ッ⁉︎」


俺は、斬撃で容赦なく3本とも叩き落とすと、急いで振り返った。

するとそこにはーー


「何してやがる馬鹿が!敵を見ろ!」


ーー此方へ走って来るヴァッシュさんの姿があった。

馬車は止まっているが、ハングさんが手綱を握っており、エティアとカルも外へ出て警戒に当たっている。

ヴァッシュさんは、そのまま俺とすれ違い、敵へ向かう。武器は腰に付けていた2本の短剣。それを両手に握り、内左は逆手にしてある。


あぁ、全く…


相手さんも即座に弓で応戦。しかし全て叩き落とされ、あっという間に近づかれる。急いで剣に持ち替えたけど、もう遅い。


なにやってんだかなぁ俺は?


ヴァッシュさんは、瞬時に相手の剣を狙い、刃を交差させる。剣身が宙に舞う。それが地面に刺さった時にはヴァッシュさんの後ろ回し蹴りが綺麗に顎を撃ち抜いていた。


今すぐヴァッシュさんに土下座したい気分だ…すれ違った時ハッキリ顔が見えたけど、ありゃ演技だの演出なんて物じゃぁない。

本気だ。

それを俺は疑って怪しんで…やになっちまうや…

しかも、まだヴァッシュさんの依頼が完遂してないから謝れないってのも嫌になる…ほぼ確信的に悪い人じゃないって分かったのに、まだ疑わなきゃならんのか。疑われてるって知ったら、ヴァッシュさんはどう思うんだろう?


「おいブルー!ちょっと来い!」

「ヒイッ⁉︎ごめんなさい‼︎」

「はぁ?何言ってんだお前?いいからコレを見ろ」

「へ?」


最近、思考読まれまくってた(主にディアナちゃん)からバレたかと思った。

しかし、なんだろう?見ろってそれさっきの襲撃しゃ…

マジ…か…?


「エルフだ」


そんな事は分かってる。

ヴァッシュさんの声が耳に入るが、俺はそれどころじゃない。

なんでエルフがディアナちゃんを狙う?盗賊に成り果てた亜人が外見だけで判断したのか?いや、それなら矢を掴まれた時点で逃げるだろ…どんなに粘っても俺が近づいた時には逃げ出す筈だ。

つまりコイツは明確な目的があって馬車を狙った?

それはなんだ?亜人が亜人の姫を狙う理由ってのは一体…


「そんなに信じられねぇか?」

「あ、え?」

「訳ワカンねぇって顔してんぞ」

「…はい」


いや、嘘だ…大体の予想はついてるさ、その位は考えられる。ただ、信じたくないだけだ。


「まぁ、大方検討はついてっけど…そんなら起こしてみるか」


そう言うとヴァッシュさんは、エルフの男の背中を叩く。かなり強くやったのか、咳き込むが男は起きた。ハッと我に帰り、直様距離を取ろうとするけどヴァッシュさんに抑えられているから意味がない。


「クソッ…!離せ!人間が!」


見た目は普通だ、エルフらしく整った顔に金髪。でも、目が、なんと言うか、マトモじゃない。

アレは、憎悪…だろうか?


「はいはい人間様ですよ〜っと。ったく…暴れんな、やかましい。で?何故あの馬車を狙った?中に誰がいるかは分かってんのか?」

「当たり前だ‼︎俺はあのガキを殺す為にここへ来たんだ‼︎」


あぁ、イヤだ…エティア達に人間は憎いかと聞いた時と同じ感覚。あの時は驚く程発送の違いがあったけど、今回はそうじゃないんだろうな。たった2日しか経ってないのに、またこの件について聞かされるとは思わなかったぞ。


「あぁ?亜人のテメェが亜人の姫を?おかしな話だな」

「何がおかしい物か‼︎貴様も人間ならヤツが、ヴァリエンテが何をしたか知っているだろう‼︎」


ヴァン、俺はお前に、本当に余計な事を言ったのかも知れない。あの時俺が死んでいたら、こんな風にはならなかったのかも知れない…


「何が友好条約だ‼︎ふざけるな‼︎俺達が一体どんな気持ちで戦って来たと思っている⁉︎同族が死に!友が死に!仲間が死に!それでも家族の為、王の為、国の為にと戦って来たんだぞ!それがなんだこの有様は⁉︎」


ラシュフォンドは勝利目前だった、そんな折り、俺が現れた。結果停戦、友好条約に発展するものの、今の所コレといった成果は無し。そのままもう6年以上が過ぎてる。


「俺は男だからよかったさ!成人もしてた!耐えられた!だが捕らえられた女子供はどんな仕打ちを受けたと思う⁉︎それでも生きて来れたのは助けが来ると、ラシュフォンドが勝つと、そう信じていたからだ‼︎だが現状はどうだ!」


リース君が魔法使いやってるのは、少しだが体に障害があるからだ。まぁ、それが型にハマったから良かったかも知れないが、他にもダンの様に奴隷として生まれたヤツだっている、ハーフでだ。それが何を意味しているかは分かるだろう。


「一体何人死んだ⁉︎この先何人殺せば気が済む⁉︎何が亜人王だ‼︎何が平和だッ‼︎少しでも苦しみを味わなければ分からないんだよ!この暴君が‼︎いいや魔王‼︎魔王ヴァリエンテぇッ‼︎」


十人十色…か…


「おおぅ…コイツ逃げらんねぇって分かった途端爆発しやがった…」

「ヴァッシュさん、離してやって下さい」

「あ?いいのかよ?」

「はい、どうせ殺しはしませんし」

「後々障害になる可能性だってあるんだぞ?」

「それならそん時考えますよ、だから逃がしてやって下さい」

「あっそ、どうせ俺にゃ関係ねぇからいいけどよ。ホラ、どっかいきな」


ヴァッシュさんがエルフの男を離す。


「…ッチ、人間が我々亜人に情けをかけるか!感謝されるなどと思うなよ!この恨み、消えはせん!」

「思わねぇよ。だけどあんたも…あんたの考えだけが正しいなんて思うなよ?ヴァンは、ヴァリエンテ王は、あいつなりに色々悩んでんだ…」

「…何を今更…遅すぎるんだ…」


それだけ言い残し、エルフの男は去って行った。

空を見上げる。

青く、高い。

異世界に来ても空は変わらないなぁ。環境は、こんなにも変わってしまったのに。

濃い。

生まれてからの10年よりも、王宮にいた6年よりも、エインドにいた2年間よりも、この3日間の方が、ずっと濃い。

たった3日でこんなにも考えさせられるなんてな…俺の知らない世界は、こんなにも生々しい思いで溢れてんのか。

空を見上げながら、そんな事を考えていた。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「お兄様…」

「ん?なんだ?」


宿に着いたので、そこらにあった休憩室みたいので ボーッとしてたら声をかけられた。一応言っとくと、当然マネーのかかる高い宿だぞ、ディアナちゃんは姫様だしな。


「考え事ですか?」

「あぁ…まぁ」


そう、考え事だ、色々と。


「色々ありましたものね」

「あったなぁ、マジで」


本当、色々と。

しっかし、ディアナちゃんもディアナちゃんで、何があったのかくらいは察してるみたいだな。出来れば何も知らない真っさらなディアナちゃんでいて欲しいけど、そうも行かないか。


「私を殺しに人間の人が来たり、怪しい冒険者が加わって会議になったり、今日に至ってはエルフでした。しかも、お父様に恨みたっぷりの」

「そうだなぁ……え?」


アレ?おかしいな。察してるどころか筒抜けじゃね?


「あの〜。もしかして全部…」

「聞こえてましたわ。私、物凄く耳がいいんですの、まぁ、聴力強化も行いましたが…」


マジか〜…あんな悍ましい人の心の声をディアナちゃんは最初っから聞いてたのか…


「その、大丈夫…なのか?」

「えぇ、大丈夫ですわ。私だって王族、これくらい覚悟の上です。それにエティアさんやツァイさんの話だって聞きましたもの、私も習わなくっちゃと思いましたの」

「そうかぁ。ディアナちゃんは、強いな」

「お兄様には負けますわよ」

「心が、だよ。心。俺が強いのは体だけだ」


本当、まだ14だってのにな。俺なんか体ばっか強くなって、精神は前世のままストップしてやがるぜ。

成長すんのか?コレ、一回死んでるし。


「では、強者として助言を差し上げますわ!お兄様が何を考えているのか、話しみて下さいまし!」


・・・。


「な、なんですの?ポカーンとして?」

「…ふふ、はっはっはっ!これは面食らったわ!はははっ!まさかディアナちゃんに助言される日が来るなんて……ぶふっ」

「わ、笑わないで下さいまし!」

「わるいわるい…。まぁ、そうだなぁ、なら少し、お願いしようかな」


思えば、こうやって悩みを持ったのも初めてか。

話そう、溜め込んだって何ににもなりやしない。


「俺さぁ、前世はフツーの人間だったんだよ。んで事故死しただろ?気づいたら異世界、今世だ。」

「はい」

「やる事も無くてさぁ、馬鹿みたいに身体鍛えてた、毎日毎日飽きもせずに。そんなこんなでヴァンに会って、ラシュフォンドに渡った」

「ですわね」

「ラシュフォンドでも面白おかしくやってさ、イーシャ大陸に戻ってきた。そこで亜人の保護とか始めてさ、冒険団なんて作った。でもディアナちゃん達とエインド出てから思ったんだよ、俺って、この世界の事全然知らねぇんだな、って」

「そう、ですの」

「エインドにから出るまでは知ってるつもりだった。でも実際にはさ、この世界には2つの大陸があって、戦争してて、魔法があって、人がイカレた程強くなれる…そんな程度しか知らないんだよ。生まれてからの10年は外との関わりがなかったから人の心になんて触れなかった。ラシュフォンドでの6年でも、ヴァンやディアナちゃん、レインネルさんとは話ししたけど、他は全然、何にも知らないまま。イーシャ大陸に戻ってきたこの2年も、人の心に触れたのは多くない」


エインドは位置的にはラシュフォンドに一番近いが、なんの要塞もありゃしない、放棄された様な場所だ。亜人達はそんな無力なエインドを襲う事はせず、わざわざ遠回りしてイーシャ大陸へ攻め込んでいたそうだ。

まぁ、ヴァンがあの性格だし、亜人は基本、曲がった事が嫌いだ。力無いものから奪う事はしなかったんだろうさ。

そのお陰かなんか、亜人保護をしても冒険団つくっても、今回みたいに集団で襲ってくるなんて事は無かった。団員のみんなも、俺に気を使ったのか人間の悪口を言う事は殆ど無かった。俺も俺で、そんなアイツ等に深入りする事は無かった。

皆俺を慕ってくれる。俺はただ、ただ助けただけだってのに、その力があったからやっただけだってのに…俺は、何にも知らないのに…


「でもこの3日は、本当に色々あった。エティアとツァイの話を聞いた時は、とても尊敬出来る考え方だとそう思ったし、そう言う考え方が出来る世界なんだとも感じた。の、直後にあの襲撃、結局考え方なんて変わらない、どこの世界に行ったって人は人、恨むし憎むし苦しむ。でも、そんな感情すら、馬鹿みたいに平和の中で生きていた俺には分からないんだよ」


そう、全然分からない。自分がそうなった事もないし、そんな人間が近くにいた事もない。

結局何にも分からないんだ。


「それからヴァッシュさんに会って、疑いかけた。コッチに来てから始めて人を疑ったよ、軽い嘘だとかそんなんじゃない、殺すか殺さらるかでた。んで、終いにはあのエルフ。アイツの意見に、俺は碌な反論出来なかった」

「…」

「俺は…どうすれば良かったんだろうな?ずっとそれを考えていた。もし、もっと団員の皆とコミュニケーションをとっていれば、あのエルフに何か言ってやれたんじゃないだろうか?もし、もっとエインドの人達と関わっていれば、あの人々に何か出来たんじゃないだろうか?そもそも、俺があの日死んでいれば、こんな事には…」

「お兄様!」

「……」

「それは、考えすぎですわ」


だって、そうじゃないか…

何も知らないくせに、ヴァンにふざけた助言して。エインドに来てからも、中途半端に助けるだけ助けて、必要以上に関わろうとはしなかった。

確かに戦争が終わってよかったと思う。

確かに団員の皆の事は大切な仲間だと思ってる。

でも、それだけなんだよ。その向こう側を、俺は見ようとしなかった。

戦争が終わればどうなる?そんな事考えもせずヴァンに色々いった。団員達は何を思って今日を生きている?俺は踏み込もうとしなかった。

でも、俺がいなかったらどうなっていた?ラシュフォンドが戦争に勝ち、亜人達があんなにも苦しい思いをする事は無かっただろう。ヴァンの性格だ、例え勝っても人間皆殺しなんて事はしなかったはず。今よりマシ状況になってたんじゃないだろうか?

俺がいたばっかりにおかしな終戦を迎え、おかしな関係が出来上がった。

俺がいたばっかりに…


「お兄様には、この3日間が大冒険になってしまわれたのですね…」

「そうだね…」


正に大冒険だな、この3日間だけで色々詰め込まれ過ぎたよ…人々の考え方が、違う考えがダイレクトに伝わってくる。

訳ワカンねぇ…

皆はあんなにも必死な思いを持ってるってのに、俺はなんだ?

自由?

日本人を体現?

馬鹿じゃねぇの。


「いいじゃありませんか、今のままで」

「は?何がいいんだ?」

「今のままで、ですわ」

「…どう言う意味?」

「そのまま。お兄様は今のままでいいんですの。誰の所為とか、何すればよかったのかとか。考えなくてもいいではありませんか」

「…」

「例えば、お兄様が前世の記憶を持っていなかったら?例えば、お兄様が一般家庭で普通に暮らしていたら?今、こんな事を考えていたと思います?考えて見てくださいまし」

「…いや、ないな」


そりゃそうだ、そんな風に生まれてたら、ヴァンにすらあわなかっただろ。

今ここにいる事なんて無かった。でもそんな事考えたところで…


「お兄様が考えているのはそれと同じことです。全てもう終わってしまった事、ならば意味はありません。これから知っていけばいいではありませんか。世界の事、人の事、そして変えられるのなら、それから変えていけばいいではありませんか」

「…」

「お兄様、仰ってましたわよね?『俺が強いのは体だけだ』と。しかし、だからと言って、今直ぐ精神まであわせる必要がありますの?そんな事をしても無理をしているのと変わりません。強いからと言って、周囲の事全てを考えなくてはいけないんですの?そんな事は、お父様の様な偉い人に任せておけばいいんです」

「…でも、俺には力があるんだ。強い者は、弱い者を守らないといけない」


当たり前の話だろう、俺には力がある。知ったのは最近だ、俺は俺が思ってた以上に強かった。だから守らないといけない。

弱きを助け、強きを挫く。

テレビのヒーローだってやってる当たり前の事。

当たり前の事なんだ。


「お兄様は、弱いではありませんか」

「…え?」

「『強いのは体だけ』なんでしょう?」

「…あ」

「『強い者は、弱い者を守らないといけない』なら、私がお兄様の心を守って、支えてあげますわ」


少し頬を染めながら、ディアナちゃんがそう言った。

恥ずかしいのか?まぁ、告白じみてるからなぁ。今のセリフ。

本当、強いなぁこの娘は…

そうか、俺、弱かったんだな。

過剰評価し過ぎてたんだな…調子に乗ったか。これこそ馬鹿らしいや。


「ありがとう、ディアナちゃん」


言いながらディアナちゃんの頭に手を置いて、乱暴に撫でる。


「ちょ、お兄様⁉︎」

「元気、出た」


少しずつだ、少しずつ強くなって行こう…体だってそうやって強くしたんだ。

恥ずかしがるディアナちゃんを撫でくり回しながら、俺はそう決める。


ブルーがブルーになってますw

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