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第15話 決着

もうちょっとだけ続くんじゃよ。

そして…

コレが本当のバトルだ‼︎

ーー私は、そこそこ裕福な家庭に産まれた。


「うぐッ…!」

「ん?」


歓声の中、気絶した筈のラギアンが呻き声をだした。それに気づくのはブルーただ一人。


ーー両親からの愛情を受け、私は育っていった。しかし


「ぐ…ォ‼︎」


うつ伏せから右手を地面につく。


ーー8歳の時、両親が何者かに殺害された。


「ォォ…」


左手も。


ーー両親を失った私は、誰にも引き取られる事なく、路頭に迷った。


「ォォォ…」

「オイオイ…」


腕立て伏せの様に体を浮かす。そんな光景にブルーは思わず声をもらしてしまう。


ーー幼い体ではなんの役にも立たず、雇われる事もない。だから子供と言う容姿を利用し、犯罪を犯し、生きる。


「ォォオ…」


右膝を前に出し、更に上体を起こす。


ーー幾つだったか、ギルドの存在を知り、直ぐに冒険者となった。そして腕を磨いた。両親を殺した奴を殺す為に、復讐の為に強くなろうとした。


「ォオオオ!」


左足を立て、その膝に左手を乗せる。


ーー我武者羅に自分を鍛えた、剣技、肉体、魔法だって勉強した。全ては自分をこんな惨めな状況に追い込んだヤツを殺す為。両親の復讐を果たす為。


「オオオ‼︎」


左手に力を入れ、右手で近くに転がっている剣を掴む。


ーー最早どこでどうやって集めたかも分からなくなるほど情報を集め、金を使い。遂にソイツを見つける。ソイツはランクSの冒険者だった。当時の私はD、いやCだったか、どちらにせよ勝てる筈も無い。だが、やらずにはいられなかった。


「ンガァァアアッ‼︎」


そして咆哮と共に、一気に立ち上がった。空を仰ぎ、直立している。


ーーそしてヤツと対面した。だが殺り合う前に一つだけ聞いておきたかった、何故自分の両親を殺したのか?と。その冒険者は答える「忘れた」と。ソイツは私の両親の事など覚えてすら居なかった。それを聞いて怒りを爆発させた私は、ソイツに襲いかかり……一撃で沈められた。


「フゥーーッ‼︎」

「マジかよ」


息を強く吐き、顔を前に向け、ブルーを睨む。

ブルーは少し目を見開き驚きを現にするが、すぐに鋭い目つきに変わる。


--情報収集の際、知った、私の両親は麻薬売買で収入を得ていたそうだ、よくよく考えれば可笑しかったんだ。私は両親の仕事をしているところすら見た覚えがない。両親は犯罪組織の幹部として殺されたんだ。何故誰にも引き取られなかったのか?それは犯罪者の子供だから。

Sランクに負けてから放心状態で考えた。

俺は何の為に育てられた?

将来犯罪の手伝いをさせる為か?

あの愛情は嘘だったのか?

そもそも本当に犯罪者の子供なのか?

アレは私の両親なのか?

分からない。

分からない!

でも、ただ一つ、確信を持って言える事がある。

あの人達が私にとっては両親だった!

私の親が犯罪者と言うならば!私は両親の分まで真っ当な人間になってやろう!

私を犯罪者の子供と蔑んだ奴等よりも、強く!優しく!真っ当に!

いつかSランクだって見返してやろう!

やけくそかも知れない、屁理屈かも知れない、それでも、そう、思っていた。

そう決めていた。

そうする筈だったのに…

私は亜人を救うことを躊躇った、周りの目を気にして躊躇した!

戦争など、種族などどうでもよかった筈なのに‼︎

自分の世間体を気にし、目の前で弱っていく者を見捨てたんだ‼︎

だがどうだろう?

気づけは亜人は救われていた。

どこからとも無く現れた、たった一人の人間に。

何故だ…

これだけの力がある私にもなにも出来なかったのに…分かっている、コレは復讐の為に身につけた力だ、人を助けられる訳がない。

これだけの思いがあっても助けられなかったのに…分かっている、まがい物の思いだ、助けられる筈もない。

何故だ⁉︎分かっている‼︎

それでも…分からない!

何故お前はそんなにも強い⁉︎

何故お前はそんなにも優しい⁉︎

何故お前はそんなにも!そんなにも!私が目指した物なんだッ‼︎

戦う理由を興味があると言った。

違う!

私はお前が羨ましかった!

嫉妬だ!

ただの嫉妬だ!

私はお前に嫉妬し、格下のお前をくだしたかったのだ!

なんて愚かな人間か、私はそんな事でお前に戦いを挑んだ。

なんて卑怯な人間か、私はお前に勝って、天狗になりたかったのだ。

そして負けた。

コレのどこが真っ当な人間だ!

コレのどこが強い人間か!

コレのどこが優しい人間だと言う!

なんて惨なんだ…

私の負け。

教えられたよ、私は強くも優しくも真っ当でもない。

お前こそがソレに当てはまるのだろうな。

だから…

だから試させてくれ。

例え復習の為だったとしても…例え屁理屈で作った理由だったとしても…例えまがい物の思いでも…

この思い!何処までお前に届く‼︎



「ブルゥゥアァルトリィヲォォォォオ‼︎」


-----------------


「マジかよ」


そんな言葉しか出なかった。

あんたスゲェよ、確実に肋骨折れてる筈なのになんで立てんだ?

もし俺が観客ならあんたが主人公に見えて応援してただろうなぁ。

でもさ、俺は当事者なんだよね。

あんたがどんな意志があって立ち上がったのかは知らない。

でも手放しで褒められる程に凄いと思う。

肋骨が折れた上体を動かすなんて普通無理だろ、それをやって除けてる。

あんたどんだけ強い信念持ってんだ?

俺にはあるだろうか?そんな物。

自由に生きる。

亜人の立場を守る。

それくらいしか思い浮かばない。

それで届くか?

あんたの信念に届くか?

自由に生きて、自由にやってきた。

そんな俺であんたの信念に立ち向かえるだろうか?

てかなんで俺は戦ってんだろ?

亜人を裏切らない為?

舐められたくなかったから?

ただ、格好付けたかっただけじゃないのか?

ただ、自分の力を試したかっただけじゃないのか?

そんな俺に、再度立ち上がったあんたを下せるだろうか?

こう言う事は初めてだが、分かる、アイツはもうちょっとやそっとじゃ倒れない。

そんなあんたを、強い思いも意志も信念もない、無い無い尽くしのこの俺に、もう一回沈められるだけの力があるか?

何が為に戦う?

もう十分じゃないか。

一度とは言えヤツを沈めた、真剣なら殺せた。

俺の勝ちじゃないか。

これ以上戦う意味がない。

いや、戦ったら俺はまだ勝っていないと言っている様な物だ。

戦う必要があるのか?

なんで戦う?

どうして?

何故?

自由の為?

自由と強さになんの関係がある?

そもそもなんで強くなんなきゃならん?

別にいいじゃないか、もうコレだけ強いんだ、今のアイツを超える必要がどこにある?

終わらせればいい。

お終いにすればいい。

何故戦おうとする?

なぁ俺よ?

なんで構えてんだ?

なんでヤツを睨むんだ?


『約束だよ?』

あぁ、約束だシルヴィア、兄ちゃんは必ず会いに行く。

『また会おう!親友‼︎』

あぁ、また会おうぜ、親友。


煩いんだよ。

日本人だった時の記憶が。

日本人として生きた魂が。

挨拶をしなさい。

謝りなさい。

お行儀よくしなさい。

困っている人を助けなさい。

親切にしなさい。

約束は守りなさい。

本当に煩いんだ。

そうだよ、偽善だよ!

困ってる人を無責任に助ける。その為には力が必要だ。

そうだよ、約束だよ!

俺の約束はクソ重い、それを成し遂げるにゃ強かなんねぇ。

そうだよ、俺は日本人だ!

記憶だけとは言え、あのクソ面倒臭い国で生きた!

ルールを守りなさい!

友達を大切にしなさい!

悪い事をしてはいけません!

誠意を持って答えなさい!

その糞食らえな精神が俺には、俺には!


堪らなく心地良かった‼︎


あの感覚を体現する。

それが俺の自由だ!

偽善だって構わない!

困ってる人を助ける!

約束を守る!

友達を大切にする!

親切にする!

全部俺の為だ!

コレが俺の自由だ!

これからも自由に生きてやる!

その為に先ずは目先の事だ。

誠意を持って答えるッ‼︎

次いで…

約束を守るッ‼︎

その為には力が欲しい!

こんな所で負けてられるかよ!

逃げられるかよ!

ふざけんな!

ぜってー勝つ‼︎

お前は俺には意志を見せた!

次は俺の番だ!

誠意を持って全力で答えさせて貰うぞォ‼︎


「ラァァギアンンラギレェスゥゥゥウウウ‼︎」


ーーーーーーーーーーーーーーーーー


衝撃が駆け抜けた。

二人の剣が合わさっただけだ。

それだけで、観客のところまで振動が伝わる。

見ればクレーター。

二人の姿は無い。

鈍い金属音が絶え間なく響き、最早一つの音が長い間鳴っているのではと思うほどの連撃。

まるでミキサー。今の二人に近づこう物なら、余波だけでたちまちミンチにされてしまうだろう。

殆ど観客は、置いてけぼりにされていた。


「凄いわね…」


臨む事の出来る一人、リュシィが関心した様子で


「Sが二人、戦ってるわ」


そう、言った。


---------------ーー


「ザァアッ‼︎」

(俺は魔法が使えない‼︎出来るのは強化と斬撃を飛ばすだけ!接近戦で決着をつけさせてもらう‼︎)

「ドォオッ‼︎」

(もはや魔法など無駄だ!どうせ当たらん‼︎全ての魔力を身に纏え‼︎)


二人は思考を巡らせ、剣を振るう。

横へ

縦へ

斜めへ

上へ

下へ

右へ

左へ

暴風を纏い剣を振るう。

体を強化し、剣を振るう。

縦横無尽に降り続ける。

そして一層大きな音と共に距離を取った。

静寂。

睨み合い。


(出し惜しみはしねぇ、出せる技も出せねぇ技も…全部出す‼︎)


ブルーの属性は0、使えるのは無属性のみ。そして無属性とは魔力そのもの、燃費も消費量も頗る悪い。そんな物で何が出来るか?

物に魔力を巡らせる”強化”

魔力の塊を打ち出す”魔投”

濃密な魔力で阻む”障壁”

精々この三点、活かせる物などでは無い。しかし、彼の真骨頂はそこにある。無属性しかない故に、魔力を全振り出来るのだ。

ブルーはより一層、限界まで肉体を強化し、この激闘へと臨む。


(ヤツは今まで魔法どころか属性すら見せていない!恐らくどの属性も使えないのだろう)


対するラギアンは、そんなブルーの動きにギリギリ縋る。だが、そのギリギリとは反比例して思考は冷静だった。

相手を見、解析。対策を立てる。


(しかし、速すぎる。魔法は当たらん、ならばどうする?風当てて私は加速、ヤツにも風を当て、減速させる?ダメだそんな物で止まってくれる手合いじゃない!もっと!もっと深く考えろ‼︎)


疾風のラギアン、その名の通り、彼の真骨頂は”風属性魔法”だ。追い風、向かい風、自由自在。軽く魔導師を超えるその技術は到底常人では太刀打ち出来ないだろう芸当。しかし、そんな”風属性魔法”を使っても、ブルーには届かない。

ならばどうするか?

雷?

いや違う、アレは必殺の為の物、風の様に自在に使える筈もない。ならブルーにダメージを与えられる事も無いだろう。

だから風をもっと上手く、強く利用しなければならない。

剣を幾度となく打ち合わせながら、考え、考え、考える。


(当てるのではない、受けるのではない…押し出す。そうだ!風を後ろに押し出す!コレしかない!風を後ろに押し出し、私を進ませる‼︎イケる!体が持つか分からんが、やるしか無いだろう‼︎)


「ゆくぞッ‼︎」


思いついたと同時に行動。無理矢理剣を弾かせ、再び距離を取る。

覚悟の声を叫んだラギアン。

答えるはブルー。


「応ッ‼︎」


次の瞬間、ラギアンが消えた。


(なッ⁉︎)


突風が左から右に向かって吹いている。その事によりブルーは反射的に右を向いた。

今までラギアンは自分の風を当て、加速していた、故に右を向いたのだ。

しかし、可笑しな事がある。

風はブルーから遠ざかっていた。


(…ッ⁉︎)


その事に気付いたのは何時だったか?

ブルーの視界の端、左方向に何かが”居た”。

また反射的にブルーは体を動かす。

限界まで強化した肉体で限界まで強化した剣を右から左へと、ほんのすこしの距離、全力で移動させる。

そして…


「ッオ゛…⁉︎」


両手で握ったロングソードから衝撃が迸り、耐えきれずに後方へと吹き飛んだ。


(マジかよアイツ⁉︎)


そして飛びながらラギアンを視界に入れる。


飛んでいた。


もはや地面など必要としていない。

風を後ろへ押し出し、代わりに自らが前へと入る。

恐ろしい程の加速。

ブルーも追うのがやっとだ。

足が地面につき、摩擦でスピードが落ちる。

当然ラギアンの迫る速度も早くなるが、ブルーは地面を滑りながらも剣を前に構えた。そして…


(試作だが、当たってくれよォ!)

「【斬波ざんぱ】ァ‼︎」


振り下ろすと同時に魔力で形成した斬撃を飛ばす。

”魔投”の応用、それは少し腕に覚えのある冒険者なら誰でも使える様な物だが、性質が違う。

刀を振った大きさしか無かったそれは、波紋の様に広がりながらラギアンに迫る。

コレがブルーの《六刀術》〈魔技〉。一般よりもずっと、大量な魔力を込め、無理矢理変形させた無属性魔法剣技。

そしてその刃は


空を斬って進んでいった。


(ダメか‼︎)


ラギアンは瞬時に風を押し出す方向を変え、今度は変則的な軌道を描き、ブルーに迫る。


(速すぎる‼︎)


もう距離はない。

間合いに入った。


(だがまだだ‼︎)

「フンッ‼︎」

「なッ‼︎」


と、同時にブルーが足に力を入れ、無理矢理停止。ラギアンは止まれない。

なんとか軌道を変え、すれ違い様に斬りつける。


(集…中‼︎)


しかし、ブルーは飛ばされる事なく流しきった。潰れた刃に左手をやり、しっかりと。

左手からは刃を潰しているにも関わらず出血。

ブルーはギリギリではあるがラギアンを追えている。


(もっとだ、集中‼︎)


そのばで足を開き、踏ん張る。


「ッエァァア‼︎」


ラギアンの声が聞こえる、超速で飛び回る彼の声は彼方此方からでも聞こえてきた。

そして声と同時に尋常ではない数の斬撃が繰り出される。

右から

左から

上から

前から

後ろから

それをブルーは

防ぐ

流す

受ける

はたまた


避ける。


ラギアンが目を見開いた。


(避けただと⁉︎)


ブルーの体はその場で殆ど見えなくなっていた。

明らかに異常なスピードだ、無属性しか使えない彼の何処にこんな力が?

答えは簡単。

ブルーは限界以上に自分の体を強化しているのだ。その状態で、全力で、体を動かす。

筋肉は悲鳴を上げ、関節はギチギチと可笑しな音を立てる。

目は「それで見えるのか?」と疑問に思う程グルグルと目まぐるしく動き回り、体は霞、最早地につけている足すらブレている。

それに向かいラギアンが攻撃を加えていたのだ。なんと言う光景か。

だが、それでも避けられるとは思っていなかった。


(見切られている?いや、この際それは重要な事ではないか)


ラギアンもそうだが、それ以上に、はたでも分かる程にブルーは無理をしている。

なら、このまま攻撃を加えれば?


(ヤツが先に根を上げる‼︎)

(俺が負ける‼︎)


二人の考えが一致し、ラギアンが攻め立てた。


(速い)


刃を潰した剣がブルーの薄皮を裂く。

ブルーはギリギリ、ラギアンを追えている。しかし、それ以上ではない。

今、耐えているのも本当に限界だ。

だが、悪い要素ばかりではない。


ラギアンの攻撃が雑になったいた。


まるで最初の裏返し。が、実態は違う。

ブルーは慢心による余裕。

ラギアンは別の物だ。


(あぁ、速ぇよ)


頭を少し後ろに下げた途端、髪が数本散る。

ラギアンは最初、ブルーを追うのでやっとだった。いくら打ち合いで慣れたとは言え、ブルーも追う事が難しい速度で動き回り、平気な筈がない。


(あんたは速い)


ブルーのロングソード、その切っ先がへし折れた。

一度ブルーの側を通り過ぎるのに、一回だけしか攻撃を加えられていない。

それも全てが横振り”右から左へ””左から右へ”もしくは”体を回転させる”しか動かせていない。体の向きで縦や斜めの変化を付けているだけ。

ラギアン自身、自分のスピードに追いつけていないのだ。

だからこそ、躱す事も出来た。

そして絶対たる確信もあった。

ラギアンは攻撃を


外す。


(だが…)


そしてブルーの眼前をロングソードが通り過ぎる。

防ぐ必要も流す必要も受ける必要もない。

つまり


その分攻撃に回せる。


(ただ速いだけだッ‼︎)

「【死突しとつ】ッ‼︎」


言うより速く腕が動いていた。

この状況でブルーが出せる最速の技。

踏ん張った状態からの突き。

それは真っ直ぐラギアンに向かいーー


「ギィッ…⁉︎‼︎」


ーー弾かれた。

しかし、ブルーは止まらない。


(まだまだぁ‼︎)

「【転刀てんとう】ッ‼︎」


超速で駆けるラギアンに少しでも長く近づくため、ラギアンの駆ける方へ体を倒す。

弾かれた剣はそのまま勢いを利用し、手首をクルリと回す。その剣は遠心力で更に加速し、ラギアンの後ろから迫った。


パキィ…


甲高い音。

それすらもラギアンは弾いたのだ。

とんでもない反射神経。ブルーの体は既に重力に捕まっている、もう踏ん張りは効かない、その体制からでは攻撃することが…


(3コンボだ‼︎)

「【剛断ごうだん】んん‼︎」


弾かれた剣を更に頭上で回し、明らかなに無理な体制からのフルスイング。

それはラギアンの剣に当たりーー


「ぬぉぅ⁉︎」


ーーあの推進力を超え、吹き飛ばした。

大した距離ではない。しかし、後ろへと飛んだ。

地面を数回バウンドし、ようやく止まる。

ラギアンが地に伏せた。

外見に傷は殆どない、内部がボロボロだった。あまりの加速で碌に息も吸えていない、酸欠だ。

同時にブルーも倒れる。

ブルーの腕は無理が祟り、衝撃で皮膚が裂けている。小さな傷も多く、全身軋み、強烈な痛みが襲う。

それでもーー


「ふんっクッ…‼︎」

「ガァッ…ッア‼︎」


ーー両者立ち上がる。

言うは分かりきっている事。


「次で終わらせる」

「OK来いよ、全力で答えてやる」

「ふっ」

「ハハッ」


二人とももう本当に限界だ。

一秒とかけず返答をし、そうしてお互い笑い合い


「カァァァァアアアッ‼︎」


ラギアンが動いた。

残る全ての魔力を使い、自分を前へ前へと動かす。


「〈突き〉奥義…」


ブルーは右手を引き、左手を前へ出す。

弓に矢を番える様なその構えは、明らかに〈突き〉だと分かる。

ブルーが見せる高速の〈突き〉その中でも”奥義”だと言った。

それがどう言った技かは分からない、だが、生半可な技ではないだろう。

それでもラギアンが止まる事はない。


(それすら超える‼︎)


寧ろ加速し、剣に雷を纏わせる。

チャンスはこれ最後。

二度目の必殺の一撃。

ブルーの突きすら凌駕し、斬り裂くつもりなのだ。

そして…


お互い間合いに入った。


「疾風迅雷ィッッ‼︎」


声など遅すぎる。

音を出そうとした時には剣が振り切られているのだから…


そう。


振り切られている。


ブルーは。


いない!


ラギアンの時が止まった。

いや、恐ろしくゆっくりと流れているのだ。

その刹那の中、ブルーを探し、視野を広げる。

すると下に何かあるではないか。

目線を下げるとそこにはーー


「【潜消せんしょうづき】ィイ!!!」


ーーブルーがいた。

しゃがみ込み、覗き見るように折れて平らになった切っ先を此方に向けている。

そう確認した瞬間


空を仰ぐ。


声を発したのはいつだっただろうか?

声が聞こえたのはいつだっただろうか?


遅れて

鳩尾

それら同時に衝撃が突き抜けた。


「あァ゛…」


視線は段々と低くなり、地面が見えたところで背中を打ち付ける。

バウンドした頭が一度、ブルーを写す。

ブルーは勝ち誇るように剣で天を突いていた。

そして視線がもう一度空を見上げる。

晴天だ。


「結局…」


朦朧とする意識の中、闇に沈む直前、呟いく。


「届きませんでしたか…」


ラギアンは倒れ、ブルーは立っている。

ここに決闘の勝敗が決まった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーー


届いたよ。

十二分に届いた。

もう限界だ。

腕も

足も

首すら動きやしねぇ。

たったまま、腕を掲げたまま止まってやがる。

魔力を使って限界以上に体を動かしたのがいけなかったんだろうな。

皆の歓声だけが聞こえるけど、もう視界もヤバイ。

無理し過ぎた。

筋肉痛じゃ済まなそうだな、ははっ…

脳みそが命令飛ばすの拒否ってやがる。

もう無理ってさ。

このまま死んだら立ったままになりそうだ。

あぁ、弁慶さんこんな具合だったのかねぇ?

あぁ、もうダメだ…視界が…俺、死んじゃう…

アレ?

あったけぇ。

誰かの治癒魔法か?

あぁダメだ、今そんなことされらダメだ。

心地良すぎて…

寝る……



お休み。

第一回戦闘シーンはコレにて終了。主人公はバトルによって色々考える感じで、これからこの物語に意味を持たせていくつもりです。

ですので「訳わかんね〜」と思わず付き合ってくれると嬉しいです。

では技説明。

斬波ざんぱ

〈魔技〉の一つ。刀の刃に魔力を込め、振ると同時に放ち、斬撃を飛ばす。その斬撃は、波紋の様に広がり、大きくなって行く(大きさと比例して威力は下がっていき、いずれ消滅する)

死突しとつ

〈突き〉の一つ。まるでフェンシングの様な突き。間合いに入る者へ繰り出される《六刀術》の中で最速の”技”

剛断ごうだん

〈抜身〉の一つ。全力フルスイングでの刀にあるまじき叩き切る攻撃、ゴリ押し。

潜消せんしょうつき

〈突き〉奥義。”潜”り込み”消”えると、立ち上がりざまに、心臓、喉、額の”三ヶ”所へ”突”きを入れる離れ技。


ラギアンさんへ使った時は、殺し合いでは無く、且つ、剣先が折れていたので、狙う場所を変えて使いました。技としては、潜って消えて三ヶ所に突きを入れれば成立するので、アレも【潜消せんしょうつき】です。

それと、ヶの上に文字が入らなかったので補足。

(せんしょう・みかづき)です。言葉遊び意識しました(キリッ!)

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