第14話 決闘
バトルだ!ヒャッハー‼︎なテンションで書いたので、分かりにくかったら申し訳ありません…後長いです。すみません。
決!
戦!
当!
日!
はい、もう一週間経ちました。
え?早い?
まぁ、過ぎれば早いもんさ!
いや〜、あの後大変だったんだぜ?なんか団員皆が泣きそうな顔で決闘止めろって言ってくるんだもん。なんかラギアンさん魔物の侵攻があった時相当暴れてたらしい。
俺の方にはリュシィさんがいたからそれどころじゃなかったけども…
とにかくスゴかったそうで、皆もスゴイ顔で止めてきた。死ぬだの殺されるだの…あんまり俺の恐怖心煽らんといて…
それでも途中でやっぱ止めますとは言えないし、申請しちゃったし、俺は止める気なかった。
するとリュシィさんが援護をしてくれて「決闘での殺害行為は禁止されている」との事です。それでなんとか皆も納得してくれて今日を迎えた。
ちなみに俺の《六刀術》の完成度は70%って所かね?コレ結構な進歩なんだ。今の《六刀術》を駆使すれば必ず勝てるね!うん勝てる!きっと勝てる!多分勝てる!
なのに…
「団長殿、無理だけはするな、早めにやられろ」
「そうだ、抵抗するな」
「痛いのは一瞬だけだよ〜」
「なんっで既に負けムードなんだよッ‼︎大丈夫だっつってんだろッ‼︎」
そんなに信用ないのか俺⁉︎
ギャーギャー騒いでいると、決闘の場へと着いた。
街の南側にある平地だ、何故か草も生えてない。ファンタジー特有の謎荒野って事にしとこう。
ま、戦うには丁度いい場所だ。
でも…
「来たぞ」「度胸あんな」「馬鹿なんじゃねえか?」「こりゃ面白くなってきたぞ」「早く始めろよなぁ」「賭けでもしようぜ!」
めっちゃ野次馬おるー!
緊張すんだろ!
止めて!見ないで!
「フリー冒険団、団長、ブルー・アルトリオさんですね?」
「そうだね」
ギルド員だろう人物が俺に声をかけてくる。今回の決闘、実は試合と言ったほうが近い、審判的なギルド員がいて、終始見張ってる。殺しとアイテムは禁止、明らかに反則じみた事をしても負けになる。例えば目潰しとか、アレを玉砕するとかだな。と言っても、ラギアンさんレベルになると狙って出来るものじゃないだろうし、そんな事出来る隙があるなら普通に攻撃するから誰もやらないけどね。
「じゃ、行ってくるわ!」
「待ってブルー」
「ん?なんじゃらほい?」
なんかリュシィさんに止められた、なんだろ?
「装備、預かるわよ」
「はい?」
「だから装備…貴方もしかして、知らなかったの?決闘は公平を期す為に、防具無し、真剣じゃなくて刃を潰した武器で行うのよ?」
「ヱ?」
う、嘘やろ?そんなんきぃてへんぞ…⁉︎
「呆れた。よくそんな事も知らずに決闘しようなんて思ったわね、その様子じゃ武器の申請もしてないんでしょう?」
「ぶ、武器の申請ってなんスか⁉︎」
「はぁ…決闘を行う為に、特殊な武器を使う人はなるべく似せた武器を使わせて貰えるよう申請を出すのよ、申請してないならただのロングソードよ」
申請してないならただのロングソードよ。
申請してないならただのロングソードよ…
申請してないならただの…
マジでかぁぁぁあああ‼︎⁉︎
早速《六刀術》封じられたぞォォォオ‼︎
クソッタレ!俺のバカ‼︎技磨くのに熱中し過ぎて決闘のルールなんて全っ然調べてなかったぁぁぁあ‼︎
なんの縛りプレイだよ⁉︎‼︎
アカン。
マズイ。
ヤバイ。
ワロタ。
ど、どどどど、ドドドドドドドド‼︎
じゃなくて!
どどどどうする⁉︎
いやまだだ!《六刀術》をロングソードに見立てれば!〈抜刀〉以外は使えるんじゃないか?勝手は違うけどそこそこ出来そうだ!
よし大丈夫!切り札1つと技3つ減っただけだ!
大丈夫じゃねぇよ!致命傷だよッ‼︎
「まぁ、貴方なら大丈夫でしょ、はい、預かるから程々に頑張ってね」
リュシィさんに刀没収されました〜、これぞ刀狩り!やかましいわ‼︎
仕方ねぇ、もう後戻りは出来ねぇんだ、腹括ろう。
「こちらが今回貸し出される武器となっています」
そう言って抜き身のロングソードを渡された。
抜き身で。
「え?鞘は?」
「ありませんよ?そんなもの」
そんな物だと‼︎この野郎‼︎なめてんのか‼︎
あ、そうか、この世界の剣技って大体抜き身の状態でやるもんで、鞘は腰に下げてるか、ぶん投げて捨てるもんな。そりゃいらねぇかぁ!あっはっはっ!
マジですか……
〈抜刀〉に続いて〈納刀〉まで封じられた……しかも完全に。
終わったかもしれない。
白目を剥きながらロングソードを受け取…軽くね?
そうか!ヴァンから貰ったあの刀が異常に重かったんだ!すっかり忘れてたな。
これなら〈早技〉がかなり使えそう。
「よく、逃げませんでしたね」
ラギアンさんに近づいたらそう言われた。
はい〜、お決まりのセリフいただきました〜。
今は野次馬から少し離れた場所で向かい合っている。こう言うところ不毛の地?って言うんだっけ?まぁ、そんなところに二人で立ってる。
野次馬は街の方に簡単な柵一枚挟んで沢山いて、良くある円形に囲まれる的な事にはなってない。
「まぁ、逃げれませんからねぇ…それにまだ、負けが決まった訳じゃないでしょう?」
オラァ!良くあるやりとりみたいにしてやったぜぇ!
「フフッ、それもそうですね」
あら〜、流されちったよ、まぁいいか、コッチも質問だ!
「俺からも質問いいかい?」
「えぇ。構いませんよ」
「じゃ。そんなに亜人が嫌いか?」
「亜人?あぁ!違いますよ、私は亜人の事はぶっちゃけて、どうでもいいんです」
あら?てっきり恨みとか憎しみ…
「亜人には恨みも憎しみもありません、どちらかと言えば人間の方が汚い生き物だと思ってるくらいです」
思考を先読みされたッ⁉︎ってんな訳ないか。
「じゃぁなんで今回の決闘を?まさか本気で団員の為に弱者をイジメるとか言いませんよね?」
「何故、ですか。う〜ん、難しい質問ですねぇ。強いて言えば、気になったから、ですかね」
「気になった?何を?」
「貴方ですよブルー・アルトリオさん、貴方は…優しすぎる」
つまりこの人は亜人助けてる俺に興味がわいたと。
あ〜、そりゃ俺が日本人だからだわ、困ってる人ほっとけないのよね、助けられるなら尚更のこと。
でも決闘全然関係ねぇじゃねぇかぁぁあ‼︎普通に対話でいいだろコンチクショウ‼︎
「さぁ賭けた賭けた!この勝負どっちが勝つかな〜?」「んなもんラギアンに決まってんだろ!」「賭けても儲からねえよ」「あっ!じゃぁ俺は敢えてあの変人にかけてみるわ!」「金の無駄だぞ〜」
おぉい!観客!何賭けやってんだよ!
つか俺ボロクソだな!泣くぞ!
「双方、もういいかな?」
審判が急かす。
俺はそれを一旦無視すると、最後に言ってやる。
「俺は優しくなんかないぞ?やりたい事やってるだけだ!」
思いっきり格好つけて構えを取る。
「では…始め‼︎」
さぁ!集中だ‼︎
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「なんだ?」「どうしたんだ?」
試合開始から数秒。
決闘を見に来た者達はざわめきで溢れていた。
ブルーは足を開き、腰を下ろし、両手で握ったロングソードの切っ先がラギアンに向かうよう頭の右側に構えている。
対するラギアンは、足を少し開き、少し曲げ、左手をロングソード這わせる様にして佇んでいる。
両者少しも動かない。
「なんで動かないんだ?」
思わずダンキが言う。それはただの独り言だったが、返答が返ってきた。
「違うわ」
リュシィだ。
「何が違うんですか?」
ツァイの率直な質問、それはその場にいた者全員の質問でもあったため、皆がリュシィの回答に耳を傾ける。
「あれは”動かない”んじゃない”動けない”のよ。あのAランクがね」
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(どこがだ!)
ゾゾゾ……
(コレのどこが…)
ゾゾゾゾ
(コレのどこがCランクだと言う‼︎)
ゾゾゾゾゾゾゾ‼︎
(いや、コイツは本当に人間かッ⁉︎)
ラギアンの前。彼ならばたった数回地面を蹴れば間合いに入れられる程の距離だ。
そこにブルーは佇んでいた。
(集中)
そう佇んでいた。
(集中…)
ただ構え、ただ佇んでいた。
(集中ッ‼︎)
(グゥ……⁉︎)
一片の隙もない構え、立ち昇る魔力、見通す眼光。
全てが異常だった、超人と言っても差し支えないラギアンですら臆する程の気迫。
いやそれだけではない。
(私は既に間合いに入っている。下手に動けば…斬られる‼︎)
そうラギアンは確信する。
動かずして、剣を合わせる事もなく、ただ立ち合った。それだけの事で既にラギアンは追い詰められていた。
(どうする…)
追い詰められたラギアンの感情が動いていく。
目の前にある異常への恐怖、それは焦りを生む。
(打って出るか?いやダメだ!斬られる)
ギルド判定へあった少しの怒りが消え、焦りへ。
(様子を見る?ダメだ、斬られる!)
戦闘への集中が薄れ、焦りへ。
(どうする‼︎)
焦り、焦り、焦る。
(どうすればいい⁉︎)
そうしてラギアンは奇妙な行動を取った。
何故そうしようとしたのかは自分でも分からなかっただろう。
跳んだ。
上へ。
ただのジャンプだ。
と言ってもラギアンはAランク、身体能力を強化したそれは、軽く家を飛び越える程度の高さは跳べる。
だがそれだけの事。
ただのジャンプ。
そしてその戦いを見に来た観客達は全員目を疑った。
「【殺突】…」
その声が聞こえた時には既に、ブルーがラギアンに突きを入れていた。
「はや…」
観客の誰かが言い切る前に、次の事が起きる。
ラギアンが爆発した。
いや違う。
二人の動きが速過ぎて、常人はおろか冒険者にすら追えていないのだ。
ラギアンは迷いに迷い、上へ跳ぶ。跳ぶ瞬間、足を畳んだ時にブルーが動く。
ブルーはラギアンとの距離を”一歩”で埋め、神速の突きを放った。
しかしそれは一瞬遅く、ラギアンは飛び上がっていた。
今度はラギアンの攻撃だ。飛び上がって直ぐ、反射とも言えるスピードで風属性魔法の暴風を打ち出す。
そして着弾。暴風が爆発し、現在に至る。
(っ痛ぇ‼︎コレだから魔法は‼︎)
ブルーはその暴風を掠らせながらも横に転がり、躱していた。
(今だ!今しか無い‼︎)
それを見据えるはラギアン。ギリギリにしか捉えられない動きをしたブルーへと果敢に向かう。
飛び上がる体に魔力で作り出した風を浴びせ、無理矢理急降下を始める。
「ッツァア‼︎」
魔力で強化した体で魔力で強化した剣を握り、魔力で生み出した風の刃を纏わせた一撃を振り下ろす。
それはブルーの剣と合わさり爆発音のような轟音を鳴り響かせる。
「ッグ…」
「チィイ‼︎」
右足を後ろにし、仰け反る様にして踏ん張るブルー。
その眼前で横にされた剣に振り下ろされた一撃。
地面は小さなクレーターを形成している。
しかし、動きは止まっていた。
反動でラギアンは今だ宙に浮いている。
(損ねた‼︎)
舌打ちどころではない大きな声を出しながらそう思った瞬間、ブルーが動き始める。
剣の刃先を倒し、自らは右へと滑る様に動いていく。
(速い‼︎)
ラギアンは自分の刃と、ブルーの刃が離れてしまう前にわざと剣を弾かせ、風を浴び、地面を滑る様に後退する。
直後、切っ先がラギアンの眼前を通り過ぎていったが、ギリギリ当たらない。
そして、距離をとった2人は、二度目の対立を果たした。
----------------ー
やっぱ剣が軽くなったからって速くなるもんじゃないわ。
最初の【殺突】とか絶対決まったと思ったのに…
あぁ【殺突】って言うのはね。
ただの突き‼︎
ネーミングの事は言わないお約束でお願いします。
まぁ、具体的に言うと突進の勢いに上乗せする形で繰り出すのが【殺突】だ。
俺にとって最速の技ってのは突きに他ならない。確かに抜刀術も高速ではあるが突きには勝てないと思う。
だって抜刀術は構えてから”刀を抜く”と言う動と”斬る”と言う動作が一体となっている、でも結局は二動作だ。
だけど突きは”突く”と言う動作しかない。
しかも抜刀は腕を振るが、突きは伸ばすだけの単純な動き、パンチだってジャブとフックならジャブの方が速いだろう?
っていう突き、しかも俺の匙加減ではあるけど技として完成した物を放ったんだ。
だけど避けられた。
もう驚きだよ。
動くと同時にかましてやったのに…
いつ気づいたのか知らんけど、しゃがんだ体制からジャンプに切り替えて避けるなんて、オマケに風魔法まで飛ばしてきたし。
しかも振り下ろしクソ重い、魔法で風の刃まで形成してたぞ。一回の振り下ろしでガガガっていうんだぜ?ガガガって!
当たってたらズタズタにされてたな。
魔法といい今の振り下ろしといい、あの人、俺のこと殺す気じゃね?
死ぬっつーの!
もしかしてコレで手加減してんのか?
流石Aランク、強ぇ…
対立したけどどうすっかな、とりあえず睨んどこ。
う〜ん【殺突】は見破られたし、技は温存した方がいいかもしれない。
よし!何度か打ち合うか!さっきも魔法からの剣技を一回とは言え防いだ、瞬殺されるって事はないだろう。
多分…
さて、方針は決まった。行くか!
集中‼︎
俺は駆け出し、間合い入る前に振りかぶっておく、そして入ると同時に、振る!
ブォンと切っ先が空を斬った。
ッチ、しゃがんで避けられたか!
元々軽めに踏み込んで置いたんだ、カウンターが来る前に下がろう。
あれ?
動かなくね?
もっ発いけるか?
いや罠だろ!
止めとこ。
俺は下がる。
でもなんか…ラギアンさんの必死そうな顔が凄いんだが。
誘ってんのか?
と思ったら来たぞ!
・・・
遅くね?疾風って言う割には普通に目で追えるんだが…
ラギアンさんも横振りか、とりあえず防いどこ。
さっき程じゃない、軽い。
なんだ?
俺は蹴りを放つ。
なんでこんなに?
ラギアンさんが吹っ飛んでく。
遅い…?
後を追う。
いや、わざとか?
地面を滑るラギアンに剣を振るう。
にしてはやっぱり…
受け止められたけど、それで剣を大きく弾かせてる。
必死だ。
そこに剣を叩き込む。
なんだ?
ギリギリ柄で受け止められた。
なんなんだ?
『それだけ強いのだから、公にしてしまえばあのラギアンとか言う冒険者も諦めるかも知れないわよ?』
『貴方もしかして自分の強さを自覚してないのかしら?』
『正確には言えないけど、確実にAランク程度の力はあると言えるわ』
『今の突きは結構本気だったのよ?そこらの冒険者じゃ反応もできない。それを貴方は正確に柄だけで逸らしている、コレが弱いもんですか』
あ。
あぁ。
あぁ!そうか!
俺って、強かったんだ!
-----------------
「ぐぉおォ…」
観客達は唖然としていた。
それだけ目の前で繰り広げられている光景に理解が追いつかない。
Aランク冒険者、ラギアンが一方的に攻め立てられている。
まるで嘘の様なその光景に観客達は只々唖然とする。
尋常ではないスピードで連撃を繰り出すのはブルー。
その切っ先を追える者は殆どいない。
それを必死に受け、流すラギアン。
避ける事すら許されない。
絶え間なく響く金属音。それは機械が高速で金属を叩いてるのでは無いかと思うほど早く、重い。
全てが予想だにしない光景だった、仮に攻め立てているのがラギアンだったなら、観客達はブルーの健闘を称えただろう。
しかしこれはどうした事か。
ラギアンが弾き飛ばされた。
どう考えても無理な距離をブルーが一歩で詰める。
「ありゃぁ…人間か?」
そんな声がちらほら聞こえてくる。
もはやラギアンに金を賭けた事など忘れている。
ただその状況を呆然と見るしかないのだ。
だが…
「ふふふ…あっははは!」
リュシィただ一人は愉快そうに笑っていた。
-----------------
(クソッ‼︎急に攻めて来た⁉︎)
ブルーの横薙ぎが迫る。
ギリギリで剣を出し、上へと逃した。
瞬間、物凄い速度で返す刀が迫る。
剣を左から右へ移動させるのが限界、それで受ける。
ラギアンは終始一杯一杯だった。
ブルーが突然攻めだしてからと言うもの、それについて行くのも難しい。
自分が攻める隙などありはしない。
とにかく
防ぎ
流す
防ぎ
流す
それだけしか出来ない。
(このままでは負ける‼︎)
今は最小限の動きだけで何とかカバー出来ている物の、ブルーの剣技は凄まじい。防ぎ難い所を正確に突いてくる。
ジリ貧だ。
(最早魔力温存などと言ってられるか!)
決めた瞬間、ラギアンは魔力を解放する。これでもかと肉体を強化し、追い風を作り出し加速。
「うぉぉぉおお‼︎」
流れが変わった。
「なっ⁉︎」
ブルーが驚きの声を上げる。
一方的な攻めに受けが加わったからだ。
ブルーの振り下ろしを弾き、横薙ぎを放つ。
しかし受け止められ、弾かれる。
お返しとばかりに横薙ぎ。
剣を戻し防ぐ。
そんなやりとりが始まったのだ。
(ダメだ‼︎)
それでもラギアンは驚愕した。
確かに流れは変わった、だが、それだけ。
コレは拮抗。結果は変わらない。
ブルーがどれ程の肉体強化を行っているかは分からないが、現在までそれでいて異常も見られないと言うことは、そういう事なのだろう。
アレがブルーの当たり前。
ラギアンはそれと拮抗したに過ぎない。
コレでは意味が無いのだ。
寧ろ悪い。
魔力を多く使う分、自分の負けが早まった。
(何か無いのか⁉︎)
ラギアンは必死に思考を巡らせる。
(何か!何でもいい!この逆境を乗り越えられるだけの何かが!)
考える間も腕をうごかす。
ブルーは休ませてくれない。
(何か…‼︎)
そして気づいた。
ブルーの攻撃が雑になってきている。
その動きをラギアンは知っていた。
アレは余裕だ。
どんな人物も最初は弱い、当然ラギアンもそうだ。そうして弱かった時、高ランクの冒険者と訓練で何度も立ち会った。
アレはその時よく目にした物と同じ。
強者と弱者の間に生まれる慢心。
まさかこれ程の力を持ちながらこんな初歩的なミスを犯すとは思わず、ラギアンは何度目か分からないが、今までとは違う驚きを見せる。
彼は知らないが、ブルーは対人経験が少ない、だからこそのミス。強者として当然の慢心。
故にラギアンは頬を釣り上げた。
(ヤツは調子に乗っている!ならば…その姿勢、利用せて貰おう!)
ブルーが袈裟斬りを行った時、ソレは起こった。
「え…?」
甲高い音、間の抜けた声、それらと共にブルーの剣は一層大きく弾かれたのだ。
(勝った!)
-----------------
「え…?」
ヤバイ。
調子に乗った。
いや、ラギアンさんが今まで遊んでた?
分からない。
こう言う状況が初めてだからよく分からん。
とりあえず分かる事は一つ。
このままだと斬られる。
刃は潰してあるから引っ叩かれるって所か?
どっちでもいいけどソレは不味いよね。負ける。
どうする?技が無いことでは無いが、今からじゃちょっと出来るか分からん
でも、やるしか無いだろう。
俺だって遊びに来た訳じゃない、勝ちに来たんだ。
出来なくても、やる!
「【転刀】ッ‼︎」
俺は弾かれた剣と、その腕の勢いを利用し、繰り出した時とは真逆の方へと向かわせる。
【転刀】は弾かれた瞬間に使うカウンター技だ、本来はコッチから弾かせてクルッと回す様にやるんだが、こう言った時にも使える便利技でもある。
腕を大きく後ろへ回し、遠心力と弾かれた時の反動で加速させ、そして逆袈裟斬りをお見舞いだぜ!
ラギアンさんが目を見開いてるけど、ゴメンよ、俺も負ける訳には行かないんだ。
俺の剣がラギアンさんの胴に…
「いっ⁉︎」
入らない⁉︎
切っ先を上にして防いでる。
うっそーん!あんた上段に構えてましたやんけ!
やっぱ遊んでたのか⁉︎
「惜しかったな!」
本当だよ!
鍔迫り合いか!しっかしどうする?
って、うぉい‼︎
あっぶねぇ!風の刃飛ばしてきやがったぞ!
思わず下がっちゃったよ、あれ?マズくね?俺魔法使えないやん。
どうすっかな、斬撃は飛ばせるけど、連撃となると魔力消費量が…
んじゃ攻めるか?
いや、拮抗するだけだし。なんか決め手が欲しいぞ。
上手くやらんと逆に決められるぞ…
なんか〜なんか〜ないか?そうだ!”アレ”があったな…
だけどいつ出す?やるとしたなら相手を確実に倒せるタイミングがいい、それは何時だ?
同じく相手が決め手を出した時だろう。
でも、それがどんなものかも分からないってのにやるか?もし魔法だったら?予想を超えるような剣技だったら?
負けるのは俺だろう。
なら他にどうする?別の技を出すか?力押し?結局拮抗するなら勝率は大して変わらないだろう。
やっぱ、やるしか無い。
決めた、やる。
同じ事をしよう。
同じ事を繰り返そう。
何も考えず剣を振おう。
ヤツが決め手を出すまで。
-----------------
(やはりアレはわざとではなかったか)
剣を打ち合わせながらラギアンは考えていた。
ブルーの使った【転刀】は予想外で、まさか誘われたかと疑ったが、こうして再び剣を交えるとそれも吹き飛んだ。
同じ事を繰り返す。
(彼は対人経験が少ないのだろう)
ラギアンにはこの二度の打ち合いだけでそれだけの事が分かった。
それは今まで培った感覚、最大の武器。
そして時を待つ。
(決まる、決める、決めてやる‼︎)
ラギアンは決定打を打とうとしていた。それで終わらせるつもりなのだ。
機会を窺う。
振り下ろし。
これはダメだ。
横薙ぎ。
違う。
袈裟斬り。
送れ。
逆袈裟斬り。
流せ。
振り上げ。
無視だ。
からの横薙ぎ。
(コレだ‼︎)
振り払い、ブルーの剣を弾く。
ブルーは予想程弾けなかった、学んでいたのだろう。
しかし、彼にとっては十分だ。
(防げる物なら防いでみろ‼︎)
魔力で風と”雷”を作り出し、剣に纏わせる。
これが彼の、ラギアンの切り札、雷属性魔法。
”疾風”のラギアンがずっと隠し通していた物。まさかこんな大衆が見ているところで使う羽目になるとは思っても居なかったが、この際どうでもいい。
命がかかっている訳でもない。
勝たなければならない理由がある訳でもない。
だが。
負けたくなかった。
ラギアンはただ、負けたくなかったのだ。
だから使う。切り札を、必殺技を、隠し球を。
(喰らえ‼︎)
「疾風迅雷ッ‼︎」
技名を叫び、渾身の横薙ぎを放つ。
ブルーは剣を弾かれているし、仮に戻って来たところで、受けさせるつもりも避けさせるつもりもない。
本気の横薙ぎだ。
それは正に疾風迅雷、唸りを上げながら風と雷の刃がブルーに迫る。
万が一受けよう物なら剣ごと叩き斬るだろう一撃。
コレが当たればブルーは死んでしまうかも知れない。
しかし、そうでもしないと勝てないとラギアンは悟っていた。
故の一撃。
その一撃はーー
「【刃渡】…」
ーーどうしたものか、両手持ちから左手に剣を持ち替えたブルー、その斜めに倒されたロングソードの刃を撫でる様にして流されてしまった。
「なん…」
なんだと?
そう言おうとしたが声が出ない。
ブルーの剣がラギアンの脇腹にめり込んでいる。単純な話だ、ラギアンの剣を流した後、両手に持ち替えて隙だらけの肋に叩き込んだだけの話。
「っか゛ッ…⁉︎」
言葉の代わりにそんなくぐもった声を漏らし、ラギアンは沈んだのだった。
技紹介!
【殺突】
〈突き〉の一つ。一歩内が全て間合いとなる技。一歩で距離を詰め、突進の勢いに上乗せして高速のつきを放つ。
【転刀】
〈早技〉の一つ。相手に弾かれた、あるいは弾かせた威力を利用し、手首や腕全体を使って逆方向から一瞬で攻める技。
【刃渡】
〈抜身〉の一つ。傾けた刀、その刃をなぞらせる様、威力を落とさず渡り切らせ、カウンターへ繋げる。




