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普段高校生ゲーム実況者として活動している俺だが、最近仲良くなりつつあるVTuberが3人とも幼馴染だった件について。  作者: 水鳥川倫理
第2章

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第33話、全力で自分を推していくスタイル。

――そして、翌朝。


「……朝か」


けたたましい目覚まし時計の音に叩き起こされる。

睡眠時間は四時間弱。昨日の「目覚めの良さ」はどこへやら、今日は鉛のように体が重い。

ふらつく足取りでリビングへ降り、トーストを口に詰め込み、コーヒーで強引に脳を覚醒させる。


「行ってきます……」


誰にともなく呟き、家を出る。

朝日が眩しい。目が痛い。


門を出て数歩進んだところで、同じくゾンビのような足取りで歩く人物と遭遇した。


「……あ、碧。おはよぉ……」


隣の家から出てきたのは、髪の毛が少し跳ねたままの七瀬だった。

いつもの元気印はどこへやら、目の下には薄っすらとクマがあり、今にも道端で寝落ちしそうだ。


「……おはよう、七瀬。お前、すげぇ顔してるぞ。昨日何時に寝たんだ?」

「んー……わかんない。なんか、興奮して眠れなくて……あふぅ」


大あくびをする七瀬。


「奇遇ですね……わたしも、少々寝不足です」 「……私も。……眠い」


反対側の家から椎名が、向かいの家から美波が現れる。

二人とも、完璧な制服の着こなしとは裏腹に、顔色が少し悪い。


「お前ら全員、夜更かし組かよ。何してたんだ? また三人でゲームか?」


俺が何気なく聞くと、三人の身体がビクッと跳ねた。


「えっ!? あ、いや、その! 違うよ! テスト勉強! そう、勉強してたの!」

「そ、そうです! わたくしも生徒会の資料作成が長引いてしまって……決して、朝までFPSの動画を見返してニヤニヤしていたわけではありませんわ!」

「……ん。……動画編集。……じゃなくて、読書」


三人の挙動不審さが半端ではない。

目が泳ぎまくっている。


「ふーん? まぁいいけど。無理すんなよ」


俺はあくびを噛み殺しながら歩き出す。

三人は顔を見合わせ、安堵の息を吐き、俺の後ろをついてきた。


「ねぇねぇ碧! そういえば見た!? 今朝のニュース!」


七瀬が話題を逸らすように、少しテンションを上げて話しかけてきた。


「ニュース?」

「ゲームの大会のやつ! ほら、椎崎さんのチームメンバーが決まったって!」

「あー……うん。見たよ」


見たも何も、当事者だ。


「すごいよねー! あの『神志名鈴香』ちゃんと組むなんて! 私、鈴香ちゃんの大ファンなんだよねー! 可愛いし、歌うまいし、ゲームも上手いし!」


七瀬が自分のことを「大ファン」と言って褒めちぎる。

傍から見ればただのファンだが、正体を知った後だと、とてつもない自画自賛に見えるかもしれない。まあ、俺は知らないのだが。


「神楽坂遥様も素敵ですね。あのような気品ある振る舞い、憧れてしまいます」


椎名も負けじと自分を褒める。


「……雲雀川美桜。……最強。……推せる」


美波に至っては、真顔で自分を「最強」と言い切った。


「お前ら、それぞれの推しがブレないな」


俺は苦笑するしかない。

まさか彼女たちが、昨晩俺と一緒に戦場を駆け巡った戦友だとは微塵も思わず、俺は適当に相槌を打った。


「でもさ、リーダーの『椎崎』って人、どんな人なんだろうね?」


七瀬が上目遣いで俺を見てくる。

その瞳の奥に、探るような光が見えた気がして、俺はドキリとした。


「さ、さぁな。ただのゲームオタクじゃないか? 根暗で、友達もいなくて、一日中モニターにかじりついてるような」


俺はわざと自分を卑下するように言った。

正体がバレないためのカモフラージュだ。


すると、三人の表情が一変した。


「そんなことないよ!!」

「そうです! 彼はきっと、知的で冷静で、素敵な殿方です!」

「……訂正しろ。……椎崎は、かっこいい」


三人が猛烈な勢いで食いついてきた。

朝の住宅街に響き渡る怒声に近い反論。

俺はタジタジと後ずさる。


「お、おう……悪かったよ。そんなに怒るなよ」

「もう! 碧は分かってないなぁ。あの采配、あの声! 絶対にイケメンだって!」

「声には人柄が出ますもの。彼はきっと、優しくて包容力のある方です」

「……背中を任せられる男。……貴重」


三人の熱弁は学校に着くまで続いた。

俺は嬉しいやら恥ずかしいやらで、耳が熱くなるのを隠すのに必死だった。

自分のことを目の前で褒めちぎられる(しかも別名義で)というのは、なんともこそばゆい拷問だ。


教室に入ると、案の定、田中が待ち構えていた。


「碧ーーッ!! お前見たかァァァッ!!」


「うるさい。朝から鼓膜破る気か」

「Team D! 神志名鈴香! 神楽坂遥! 雲雀川美桜! そして椎崎! なんだこのドリームチームは! 俺は悔しいぞ! 椎崎、そこ代われぇぇぇ!!」


田中は机に突っ伏して慟哭している。 クラスの男子たちも、「椎崎は神だろ」「元プロか?」「いや、登録者160万人もいる神ストリーマーだぞ」と噂話に花を咲かせている。


俺は鞄を置きながら、内心で冷や汗を拭った。

(……バレてない。俺はただの目黒碧だ。椎崎じゃない)


授業中も、俺の頭の中は昨日のリプレイでいっぱいだった。

あそこはもっと早く詰められたな。

あの場面、神楽坂さんの射線を塞いでしまったかもしれない。

神志名さんの突撃癖、どうやってコントロールするか……。


ノートに走り書きするのは、数式ではなく戦術マップ。

教師の説教よりも、次の練習のオーダーの方が重要だ。


昼休み。

いつものように屋上へ連行された俺は、三人とお弁当を広げていた。


「ねぇ、碧。今度の週末、空いてる?」


唐揚げを頬張りながら、七瀬が聞いてきた。


「週末? 特に予定はないけど……」


強いて言えば、大会に向けての自主練か動画研究をするつもりだったが。


「じゃあさ、買い物付き合ってよ! 秋葉原!」

「またか? 先週行ったばっかりだろ」

「いいじゃーん! ちょっと買いたいものがあるんだよねー。マイクとか、吸音材とか!」


「マイク? 吸音材?」


俺は箸を止めた。

ゲーマーならともかく、普通の女子高生が吸音材を欲しがるか?


「あ、いや、その! 最近、カラオケアプリにハマってて! 家で歌の練習しようかなって!」

「そ、そうです! わたしも朗読の練習をしたくて、防音設備には興味があります」

「……私も。……実況……じゃなくて、通話の音質上げたい」


三人が慌てて言い訳を重ねる。

怪しい。明らかに怪しい。

だが、俺は深く追求しなかった。


「ふーん。ま、いいけど。俺で役立つなら」

「やった! さすが碧! 愛してるー!」


七瀬が抱きついてこようとするのを、俺は片手で制した。

その時、椎名がポツリと漏らした。


「それにしても……昨晩の『エリア収縮』、厳しかったですね」


「ん? エリア収縮?」


俺が聞き返すと、椎名はハッとして口を押さえた。


「あ、いいえ! 天気の話ですわ! 低気圧の収縮が……頭痛がしましてよ!」

「そ、そうそう! 天気図の話だよね! 椎名ちゃん、気象予報士目指してるもんね!」

「……無理がある」


美波がボソッと突っ込む。

どうも今日のこいつらは、いつも以上に様子がおかしい。

何か隠し事をしているのは明白だが、それが「俺と同じチームのメンバーであること」だとは、さすがに想像の埒外らちがいだった。

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書籍化できるように頑張っていくので応援よろしくお願いします。あとハート、星、高評価、コメント、作品&作者フォローも何卒。

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