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普段高校生ゲーム実況者として活動している俺だが、最近仲良くなりつつあるVTuberが3人とも幼馴染だった件について。  作者: 水鳥川倫理
第2章

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第29話、彼女たちが隠したマッチング。

そして、待ちに待った昼休み。

4時間目の終了チャイムが鳴ると同時に、教室の空気が一気に緩んだ。


「飯食おうぜー」

「購買行こう」


そんな声が飛び交う中、教室の前方のドアが、まるで爆破されたかのような勢いで開かれた。


バンッ!!


「碧ーーーっ!!」


教室中の視線を一身に集めて飛び込んできたのは、ピンク色の髪のリボンを揺らす台風の目――習志野七瀬ならしの ななせだった。

彼女は俺のクラスではない。隣のC組から、わざわざ特攻してきたのだ。


「うわっ!?」


俺が反応する間もなく、七瀬は机の間を縫うように駆け抜け、俺の席に到達した。

そして、強引に俺の右腕を掴み、ぐいぐいと引っ張った。


「一緒にお昼食べよー! 早く早く! お腹ペコペコで死んじゃう!」


その声は大きく、屈託がない。


「おい、離れろバカ! 腕が千切れる! それに教室中の視線が痛いんだよ!」


俺は必死に抵抗するが、七瀬の握力は意外に強い。


「えへへ、気にしない気にしない! 碧と一緒に食べるのが一番美味しいんだもん!」


七瀬は悪びれもせず、俺の腕にすり寄るようにしてイチャイチャし始めた。その距離感の近さに、クラス中がどよめく。


「また来たよ、習志野……」

「あいつらマジで付き合ってないのが不思議だよな」

「爆発しろ」


そんな怨嗟の声が聞こえてくる。


「七瀬だけずるい! 私も!」


続いて飛び込んできたのは、小柄な身体に大きなエネルギーを秘めた検見川浜美波けみがわはま みなみだった。

彼女は俺の左側に回り込むと、空いている左腕にガシッと飛びついてきた。


「み、美波まで!?」

「私もお腹空いた。碧、早く行こ」


無言の圧力と共に、小動物のような瞳で見上げてくる。その上目遣いは反則だ。

俺の両腕は完全に封鎖された。


「わたくしも碧とお昼をご一緒する権利があります! さあ碧、行きますわよ」


さらに、教室の入り口から優雅な足取りで現れたのは、長い黒髪をなびかせた幕張椎名まくはり しいなだった。

彼女は両腕を塞がれている俺の背後に回ると、ぐいっと背中を押した。


「ちょ、椎名! 押すな!」

「あら、早くしないと良い場所が取れませんわよ?」

「お前らなぁ……俺はサンドバッグじゃないんだぞ!」


俺は三人の美少女に拘束されたまま、教室を引きずり出された。

廊下ですれ違う生徒たちが、驚きと羨望の眼差しでこちらを見ている。

背後から聞こえる田中の「碧! お前絶対許さんぞ!」という叫び声を背に受けながら、俺たちはいつもの場所――屋上へと向かう階段を登った。


屋上の重たい鉄の扉を開けると、そこには抜けるような青空が広がっていた。

心地よい風が吹き抜け、火照った頬を冷やしてくれる。

俺たちはいつものベンチに陣取り、それぞれ弁当を広げた。


七瀬の弁当は、彩り豊かなキャラ弁だ。タコさんウィンナーが大量に入っている。 椎名の弁当は、料亭のような重箱スタイル。煮物の艶が美しい。 美波の弁当は、肉中心の茶色い弁当。シンプルだが食欲をそそる。 俺の弁当は、自分で作ったごく普通の唐揚げ弁当だ。


「いっただっきまーす!」


四人の声が重なる。

俺たちは互いのおかずを交換しながら(主に俺の唐揚げが奪われ、代わりに椎名の煮物や美波のハンバーグが乗せられる)、他愛もない話に花を咲かせた。


秋葉原で買ったデバイスの使い心地の話、次のテストの話、学校の噂話。

そんな中、俺はふと、先ほどの教室での出来事を思い出し、話題を切り出した。


「そういえばさ! 今朝、教室ですごい話題になってたんだけど……土曜日の椎崎さんの配信、見たか?」


その瞬間、三人の箸が一瞬だけ止まった気がした。

だが、それは本当に一瞬のことで、すぐに見逃してしまうほどの些細な変化だった。


「えっ? なになに?」


七瀬が目を輝かせて身を乗り出してくる。

……と思いきや、続く言葉は全く予想外のものだった。


「私、その時ちょうど友達と長電話してたから見てないんだよね! 全然気づかなかったー!」


七瀬はタコさんウィンナーを口に放り込みながら、あっけらかんと言った。

その表情には一点の曇りもない。演技にしてはあまりにも自然すぎる。


「私も生徒会の資料作りで忙殺されていましたから、見ていませんわ」


椎名が卵焼きを優雅に突きながら、すました顔で同意する。


「生徒会の仕事? そんな時期だったか?」

「ええ、まあ。裏方の仕事はいろいろとありますのよ」


椎名は涼しい顔で受け流す。嘘をついているようには見えない。


「私は……友達と別ゲーしてた」


美波がボソッと言う。


「別ゲー? お前がFPS以外のゲームやるなんて珍しいな」

「……たまには、やる」


美波は視線を少し逸らし、巨大なハンバーグにかぶりついた。


「……ふーん。そうなのか」


俺は拍子抜けした。

あんなにゲーム好きなこいつらが、あの祭りに気づいていないとは意外だった。

あれだけの騒ぎだ。通知だって行っているはずだし、タイムラインにも流れているはずだ。


だが、考えてみれば彼女たちも高校生だ。24時間ゲームをしているわけではない。友達との付き合いもあれば、生徒会の仕事もあるだろう。


「そういえば今朝教室に入ったら、男子たちがその話で持ちきりだったんだよ。『神志名鈴香』と『神楽坂遥』と『雲雀川美桜』がマッチしたって」


俺がそう言うと、七瀬が「へー!」と声を上げた。


「なんか今すごくその界隈の注目度が高いよねー! 有名な人とマッチするなんてすごい確率だよね!」

「そうですね。私たちもいつかそんな奇跡に巡り会いたいものですわ」

「……うん。すごい」


三人は口々に感心したような言葉を並べるが、どこか反応が薄い。まるで他人事のような口ぶりだ。


(……なんだこいつら、やけに淡白だな?)


俺は少し違和感を覚えた。

普段なら「えー! すごい! 見たかったー!」ともっと食いついてきそうなものだが。


だが、その違和感を追求する材料もなかった。

まさか目の前で弁当を食べている幼馴染たちが、その「神志名鈴香」「神楽坂遥」「雲雀川美桜」本人であり、必死に心臓の鼓動を抑えながら正体を隠しているとは、この時の俺は夢にも思わなかったのだ。


「ま、いつか俺たちも上手くなれば、そんなチャンスがあるかもな」


俺が笑って言うと、三人は顔を見合わせ、ふふっと意味深に笑った。


「そうね。きっとあるよ、碧」


七瀬の笑顔が、太陽の下で眩しく輝いていた。

予鈴が鳴り、楽しかった昼休みが終わる。

俺たちは名残惜しそうに弁当箱を片付け、それぞれの教室へと戻っていった。

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